第3話 初めての神戦
あの3体のゴブリンを倒した後、父、ヴァーダが〔索敵〕により動物を見つけ、弓で3匹の飛んでいる鳥を射貫き、持ち帰った。
流石、猟師。横でスゲーと俺、アマロは見ていた。
狩りが終わり帰って来た。
「お帰りなさい」
家に入ると母、フェンリが温かく迎えてくれる。
「「ただいま」」
「アマロ、どうだった?」
狩りに出かけた俺を心配しての事だ。この世界では6歳で恩恵スキルを手に入れ、『初心者です』しか入っていない50枚のデッキとこれまで培ってきた技能、スキルカードを手に入れると誰もが経験する事だ。
「フェンリ。うちのアマロはヤバイかもしれん」
「え?」
そのヴァーダの言葉に、驚きで目を見開く。全然、足が竦んで狩りが出来なかったのだろうか、初めての狩りの日はそういった子供は少なからずいる。
「すまない。良い意味でヤバイ」
「良い意味?」
ヴァーダが訂正するがよくわからずキョトンとしている。
「アマロはな、いつの間にか隠れて魔法を取得してやがったんだ」
「魔法を!?」
フェンリは驚いて俺を見ると、俺は苦笑いしながら頭を掻いた。
「最初はラビットで問題なく行って、次にゴブリンがそこのエイフィが難なくと切り伏せた。まぁ、狩りを小さい頃から教わって来た子供なら、『初心者です』がいれば、出来る子供は結構いるからまぁ騒ぐほどじゃないんだが、その後に、ゴブリン3体と戦闘として、流石にエイフィの方がステータスが高くても3体は厳しかったらしく、残り1体となったところで石礫を食らってな。その時に、アマロがスキルカードを投げてアイスランスでゴブリンを倒したんだよ。しかも、3枚もスキルカード使いやがった」
「まぁ!?アマロ、本当なの!?」
フェンリも信じられないと俺にも事実を確認してくる。
「まぁ・・・あの時は必死で・・・」
必死だったのは間違いない。危うくエイフィが殺されると思ったのだから。
「はぁ・・・まぁ良いわ。今後はスキルカードを使って魔法を使用しない事!スキルカードの魔法は危険で上級冒険者ですら滅多に使わないんだから。まだ6歳のあなたに何かあったら私達は・・・いいわね!」
「・・・うん」
後半、涙声になりつつも気丈に振る舞うフェンリに頷く事しか出来なかった。
「アマロ、お前が優秀なのは俺達をあんまり心配させないでくれ。良いな」
フェンリそっと寄り添うヴァーダ。何か悪者にされたみたいで、気が重い。そんなにもスキルカードを使う事が悪い事なのだろうか。他の者がスキルカードの扱い方を間違っているだけじゃないのか。それ以外に思えないのに・・・。
そのフェンリとヴァーダの二人の態度にエイフィが人知れず期限を悪くしていた。
「さぁ!ご飯にしましょ!」
パンと手を叩き、暗い雰囲気を変える様に明るく言うフェンリ。
「そうだな!今日の飯は何だ~?」
ヴァーダもそれに便乗して明るく振る舞う。
「今日は、ハンバーグよ!」
「ほ~。今日はいつもとソースが違うな!」
「そうなの、新しいのにチャレンジしてみたの!さっ!アマロも食べましょ!」
転生したとはいえ、この二人の実の父親だ。二人も心配してくれての事だろう。なのに、二人に心配かけては駄目だ。
「・・・うん!」
そう、明るく言って席に着いた。
★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
翌日。
「さぁ、アマロ!今日は模擬戦だ!」
闘技場の様な、野球場の様なドームの中にいる。大きさは直径200メートル程だろうか。
だが、実際は、家の中にいるのである。
「「マナデュエル!」」
お互いに手を向い合せに翳し、そう言う事でこの世界の仕組みなのか、この不思議空間が出来上がる。
この空間をマナフィールドと呼ばれ、この空間のマナ濃度はかなり濃く、様々な現象・事象が起こしやすい。このマナ濃度の濃さのお蔭で、ユニットが死んだり、スキルカードを使用しても消費されないという事が起こるのだそうだ。
しかし、このマナフィールドでは一定のルール条件の戦いしか出来ない。
ユニットカード、スキルカード、武器カード、防具カード・アクセサリカード・アイテムカードを用いたカードゲーム、『マナカード』である。
何故、カードゲームの様な使用になっているのか誰も知らない。過去、人類がこの世界に誕生した時からあるとされており、今は、神の娯楽の1つの見世物ではないかと推測されている。
その為、マナカードによる戦いは、神の為の戦い、神戦とされれている。
俺とヴァーダはお互い、フィールドの端にいる。100メートルぐらい離れているだろうか。
「アマロ、昨日言った通り、ゴブリンとラビットはメインデッキに入れて来ただろうな?」
「うん!」
にも関わらず、普通に会話が届いているのは不思議空間、神の空間という事で納得されてしまっている。
メインデッキ、ユニットカードからなる50枚の事だ。
デッキは、アイテムボックスの一種でデッキボックスが存在し、そこでデッキ構築、操作して保管する事が出来る。
目の前に台座が出現し、メインデッキを置く。
「スキルデッキはお前の扱いやすい所に置いておくと良い」
スキルデッキ、正確にはスキルとアイテム等が入っている為、スキルアイテムデッキと言うのだが、このスキルアイテムデッキは己の技能、所持しているアイテムからなるデッキで自身の技量をカード、デッキ化した物という事で、省略というか片方を削ってスキルデッキと言っている。
このスキルデッキも50枚からなり、メインデッキとスキルデッキ合わせて100枚を使用するTCGの中では非常に枚数の多いものとなっている。
更にこのスキルデッキは常に全てのカードを確認し、自由に使える事が出来る。もう一つの手札だ。
デッキ作成時の注意点としては、リアルタイムバトル、実戦により死んだユニットカードや消費されたスキルカード等があればそれらが消滅してしまい、デッキからも消えそのデッキが使用できなくなる点だ。
幸いとでも言えばよいのか、デッキに入っているユニットが消えた場合、自動で『初心者です』になる為、枚数は変わらない。スキルデッキは、消えたスキルの代わりに『石』がフィールドにいる場合のみカード化され枚数調整されている。
フィールドから出ても『石』があると勘違いしないように注意しないといけない。
因みに、デッキ構築する際、カードに実体化して作成する事も可能だ。
「一通りルールを覚えて来ただろうが、初めての神戦だ。説明しながらするぞ。まず、デッキから手札をお互いに5枚引く。因みに、デッキはセットをした時、自動でシャッフルされる。5枚引いた時、その手札が気に入らなければ、その気に入らないカードを好きな枚数選んでデッキの下に送る事でその枚数と同じだけデッキから引くことが出来る。
今のアマロのデッキだと、『ラビット』か『ゴブリン』以外をデッキの下に戻して引き直すと良い」
説明を受けながら手札を確認すると。
(うん、だよね~)
見事に手札5枚全て『初心者です』だった。まぁ当然だね。何せ、『初心者です』以外のカードは『ラビット』1枚、『ゴブリン』4枚しかないのだから。
手札を全てデッキの下に移す。
「ハハッ。まぁそうなるよな」
ヴァーダも当然そのデッキの内容は知っている為、笑う。
「よし、引き直したな。俺のターンからだ」
マナフィールが展開した時に、ランダムで決められる。
そして、引き直した手札にゴブリンが1枚入る。
(よしよし)
「まず、ターン開始時、デッキから5枚をマナゾーンに置く。このマナゾーンに置かれたマナカードがない状態で攻撃を食らうと勝負がつく。だが、このマナカードはコストとしても用いられる、いかにマナを残しながら強いユニットを出すのかで勝負が決まる。そして、次にメインフェイズだ。
メインフェイズに行えることはまず、
・マナゾーンにあるカードから好きな枚数手札に加える事が出来る。
・スキルデッキからマナスキルとして好きな枚数マナゾーンに裏向きで置く事が出来る。
このスキルデッキからマナゾーンに置かれたカードマナスキルと呼び、このマナスキルでもコストとして支払う事が出来るようになるのだが、注意が必要だ。
デッキからマゾーンに置かれたマナカードは、コストで使用するとデッキの下に移動するが、このマナスキルを使った時は、消失してこの神戦の間は二度と戻って来ない」
(つまり、マナスキルはコストの代償として手数が減るという事か・・・)
「しかし、そんな事は気にしなくても良い。マナカードで必要とされるのはユニットの強さだ!」
「え?」
「強いユニットを如何に多く出すのかが勝負の鍵となる。つまり、こういう事だ!俺は、スキルデッキから25枚マナゾーンに置く。そして手札から、コスト4『タイガーウルフ』、コスト5『ウルフコング』、コスト5『アースコング』2体、そして、俺の持つ最強のユニット!コスト6『リザードマン』!を召喚する!」
『タイガーウルフ』
大きな牙を二本持つ狼。
コスト 4
維持コスト 3
攻撃力 4
体力 4
自動効果:ユニットと戦闘する場合、攻撃力+1
『ウルフコング』
ゴリラが狼の様な体格なり、敏捷とゴリラの様な剛腕を兼ね備えている。
コスト 5
維持コスト 2
攻撃力 6
体力 4
『アースコング』
地面の様な色のゴリラで、皮膚が固い
コスト 5
維持コスト 2
攻撃力 4
体力 6
『リザードマン』
トカゲの二足歩行で翼を持ち、空を飛んでいる。片手に剣を持ち、知能もある。
コスト 6
維持コスト 3
攻撃力 5
体力 5
効果:〔飛行〕(〔対空〕を持たないユニットから反撃を受けず、〔飛行〕・〔対空〕を持たない場合、攻撃対象にならない)
「どうだ!凄いだろう!」
ヴァーダの前方に、それぞれが実体化する。
「ワハハハ。これが、村一番の父さんのユニット達だ!」
そう、猟師なだけ会って、動物の他に魔物を狩る機会も多い為、強力な魔物を他の者より倒す機会が多い。必然的に父がマナカードで村一番の実力者となったなのだ。
「父さん・・・初めてのする相手に本気でやるとか大人気ない・・・」
「う・・・ゴ、ゴホン。これらのユニットを出すにはマナが必要だ。その為に、スキルデッキからマナに置いたという事だな。そして、ユニットは召喚した際、直ぐには行動できない。召喚されて意識がはっきりとしていないからだ。召喚酔いという奴だ」
わざとらしい咳をして説明を続ける。
「この際、ユニットはカードを表向きで召喚するのと裏向きで召喚するの2つの方法がある。
表向きで召喚する方法だが、これは相手に能力が見えてしまうが、相手のターンに防御する事が出来るという利点がある。
裏向きで召喚する方法だが、これはユニットを召喚酔いしないようにゆっくりと召喚する為の物だ。そのユニットの能力等は裏向きの状態だと相手は何も分からないが、何らかの対象になると、強制的に召喚され、カードは表向きとなる。その際にマナをコスト分支払わなければそのユニットはそのまま消失してしまう。
利点としては、相手に何のユニットの存在を伏せる事が出来るという事だな。
・・・まぁ、裏向きで召喚するやつ何て、只の攻撃するしか脳のない奴が行う行為さ」
(・・・んな馬鹿な!?裏向きで召喚するのが基本だろ!?そこにお互いの駆け引きが発生するんじゃないのか!?それに、先攻なのに表向きでフル展開とか愚策も良いとこだろ?相手の〔疾走〕持ちを警戒するなら兎も角、俺のデッキ内容知っているのにこれはないだろ!?・・・あ、きっとそれが父さんなりのハンデ何だ。きっと・・・そう思いたい)
〔疾走〕・・・召喚酔いをせずに、表向きで召喚できる。即座に攻撃できる。
「先攻は攻撃が出来ないからな、これでターンエンドだ!」
ドヤァ。
(父さんのドヤ顔がアホ顔に見えてしょうがない・・・)
「じゃぁ、俺のターン行くよ!」
「おう!後攻は最初だけマナゾーンに置く枚数は7枚だ」
まずは、デッキから7枚マナゾーンに置く。
「父さん・・・勝ったら俺の言う事を聞いてくれる?」
自身たっぷりにそう尋ねる。
「・・・ほう?初めてで村一番の実力者であるこの俺に勝つと言うか!?しかも、この俺の最強ユニット、リザードマンが既に場にいると言うのにか?」
これは傑作だと言わんばかりだ。
「そうだよ」
ニヤっと自身の顔を崩さない。
「・・・良いだろう!父さんに出来る事なら何でもしてやろう!」
「言質は取ったよ!」
「難しい言葉を知ってるな!約束は守ってやるよ!」
ヴァーダは負けるなどこれっぽっちも思っていないのだろう。しかし、ヴァーダからは気楽な雰囲気が少し消えた。まだ手加減はするつもりなのだろうが、負けるつもりは欠片も無いと言った感じだ。
「行くよ!マナゾーンからコスト3を支払い、スキルデッキからパートナー『エイフィ』を召喚!」
「な!?スキルデッキからだと!?」
ヴァーダはメインデッキに入っていると思っていたのだろう。
「そうか!パートナーはそういう効果か!?」
そう、パートナーを持つユニットはスキルデッキに入れる事が出来るのだ。
漆黒の姿をした少女、エイフィが俺の横に立つ。やる気は十分の様だ。
「勝つぞ!エイフィ!」
「うん!」
俺のやる気も十分だ。この神戦に勝って父さんに俺の言う事を聞いて貰う。
「更に!スキルデッキからマナゾーンに1枚置き、表側表示でコスト1『初心者です』を2体召喚!内1体をマナスキルで支払う。そして、3体を裏側表示で召喚してターンエンド」
俺の前に『初心者です』が2体現れる。
「ハハハ。アマロは脳筋思考か?言ったと思うが、表向きで召喚しておかないと俺の攻撃を防げないぞ!俺のターン!デッキからマナゾーンに5枚置く。
表側表示で召喚されているユニットは実体化を維持する為に維持コストを支払う必要がある。俺はスキルデッキからこのユニット達の維持コスト分、合計12枚をマナゾーンに置いて支払う」
(これで父さんのスキルデッキの残り枚数は、13枚)
「メインフェイズの間に1ターンに一度、マナから好きな枚数手札に加える事が出来る。俺は、マナゾーンから2枚を手札に加える。・・・チィ。更に、再びスキルデッキから4
枚置いて、コスト2『ラビット』、コスト2『ゴブリン』を召喚する!」
『ラビット』
兎
コスト 2
維持コスト 0
攻撃力 2
体力 2
『ゴブリン』
コスト 2
維持コスト 0
攻撃力 2
体力 1
起動効果: コスト:レスト
「お前も持っているから知っていると思うが、ゴブリンの持っている起動効果は召喚酔いの状態だと使えない。そして、コストとして、レスト。ユニットカードを横向きにする事で行動済みにする事で発動できる。行動済みになっているユニットは、攻撃にも防御にも回す事が出来ないから注意しろよ。しかし、ゴブリンか。実戦だとゴブリンの方が強いが、『マナカード』で使うとなるとラビットの方がステータス上なんだよなぁ。ついてねぇ」
やれやれと肩を落とす。
(いやいや、能力持っている時点でそれぞれの利点があるだろ。効果ダメージでは反撃はくらわない。一方的に1ダメージを与えれるんだ。十分だろ。それにしてもスキルデッキが残り9枚って・・・大丈夫か?これで村一番の実力者ってどういう事だよ・・・まぁいっか。俺の目的の為に言う事を聞かすぞ!)
「さぁ、バトルフェイズだ!『タイガーウルフ』と『アースコング』をレストして『初心者です』2体にそれぞれ攻撃!」
『タイガーウルフ』と『アースコング』が『初心者です』に迫る。
「バトルフェイズでも好きなタイミングでスキルデッキからマナゾーンに置く事もでき、スキルも扱う事が出来るが、悠長に考えている暇はないぞ! 」
そう、ターン制ではあるもののバトルフェイズはリアルタイムバトルと同義だ。即座に判断して行動しないとそのまま直ぐに何も出来ないままやられてしまう。
「俺は、スキルデッキからマナゾーンに5枚置く」
『初心者です』2体に迫り、そのまま戦闘となる。
「バトルだ!ユニットはお互いに攻撃力分のダメージを与える。そのダメージが体力以上のダメージならそのユニットは倒され、墓地へ行く。つまり、『タイガーウルフ』と『アースコング』の攻撃力と体力は『初心者です』の攻撃力と体力よりも高い。よって、一方的に『初心者です』を倒す事が出来る!」
『タイガーウルフ』に『初心者です』が噛み付かれると共に、串の槍でチクリと横顔に刺す。『アースコング』は『初心者です』を叩き潰す様に拳を振り下ろし粉砕する。しかし、その拳には串が刺さっていた。
「受けたダメージはターン終了時にマナの力により回復される!」
つまり、倒すならダメージを受けているこのターンが終わるまでに倒せという事だ。
「アロマ!続いて行くぞ!『アースコング』で『エイフィ』を攻撃!」
『アースコング』が勢いよく『エイフィ』に向かって走ってくる。
「魔法スキル!コスト2『シールド』発動!この効果はユニットが受けるダメージを3減少する事が出来る!」
『エイフィ』の前に透明なシールドが現れるが『アースコング』の攻撃力は4。シールドが割られるが、『エイフィ』がかすり傷を負いつつ、『アースコング』を切りつける。『ダメージを受けた『アースコング』が叫び声を上げる。
「ごめん!エイフィ!怪我をさせた!」
「問題ない」
『アースコング』の残り体力は3、『エイフィ』の体力は2となった。
「な!?そんな魔法迄使える様になっていたのか!?しかし、それならばスキルカードを2枚マナゾーンに置き、魔法スキル、コスト2『プチファイア』を発動する!対象のユニットに2ダメージを与える」
「もう一度シールドを発動!」
『プチファイア』が当たり、透明なシールドに今にも壊れそうなヒビが入る。
「・・・本当に俺の子供は優秀だな。いや・・・天才か?」
『エイフィ』を倒す事が出来ずに心底驚いている様だ。
「だが、それならアマロを直接倒すのみ!『ウルフコング』でアマロに攻撃!アマロ、お前のマナカードは残り3、『ウルフコング』の攻撃力は6だ。攻撃力と同じだけお前のマナゾーンにあるカードを剝ぎ取る事が出来る!」
(マナゾーンには、マナカードが3枚、マナスキルが1枚・・・マナスキルは消失してしまい、ゲームから除外されてしまう。)
「マナスキルを1使い、武器カード『木の棒』を装備する!」
武器カード『木の棒』
プレイヤーが装備する事で攻撃力が1得る事が出来る。
「いつの間にそんな棒を拾っていたんだ!ははは!」
武器何て、そこら辺に落ちている木の棒以外に手に入れれるわけがないじゃないか。剣なんて6歳の俺に渡してくれるわけもないだろうし。
(それに、笑っていられるのも今の内だ!)
『ウルフコング』の攻撃される際、マナカード枚数分、3枚が透明な壁となり、防いでくれる。パリンパリンと『ウルフコング』の拳で3枚のマナカードが割られるが、拳はそれて、地面に当たる。
割られたマナカードは手札に移る。・・・うん。3枚とも『初心者です』だった。
「ユニットがそんなに大事か!?・・・知っていると思うが、マナカードを一度0枚にしない限り、お前を倒す事は出来ない。つまり、『リザードマン』で攻撃!『エイフィ』を盾にするしかお前が生き延びる術はないぞ!」
「俺は、『エイフィ』を防御に回し、スキルデッキから10枚マナゾーンに置く!そして、魔法スキル、コスト3『ハイ・シールド』を発動!このカードはダメージを4減少させることが出来る!」
「何だと!?」
「『リザードマン』の攻撃力は5、『プチファイア』の攻撃で残った『シールド』の残り減少値1と『ハイ・シールド』で相殺となる!」
『リザードマン』の剣がひび割れた『シールド』と『ハイ・シールド』を貫くが、エイフィまでには届かない。
「だが、『リザードマン』は〔飛行〕持っている!『エイフィ』の反撃は受けない!」
「更に!」
「何!?」
ヴァーダは、まだ何かあるのかと驚愕している。
「魔法スキル、コスト2『飛翔』を発動!ユニット1体にこのターン〔対空〕を付与する!」
〔対空〕・・・飛行を持つユニットにも攻撃・反撃が可能となる。
エイフィが風に後押しされるように空中に飛び上がり、『リザードマン』を切り裂く。
「がぁ!?」
『リザードマン』が苦痛の声を上げる。
「そして、魔法スキル、コスト2『プチファイア』で『リザードマン』に2ダメージ!」
「ギャー!?」
『リザードマン』が叫びを上げて倒れ、粒子となって消えた。
「ば、馬鹿な。俺の最強のユニットがこうも簡単に・・・。クッ。倒されたユニットは墓地に送られる。俺はこれでターンエ・・・だ」
悔しそうに、ターンエンド宣言をしようとするが、そうはさせない。
「父さん!まだ、ターンエンドは早いよ!」
「まだ何かあるのか!?」
ヴァーダがさっきからずっと驚きっぱなしだ。
「スキルデッキから3枚マナゾーンに置き、それを使用して、魔法スキル、コスト3『ファイア』。ユニットに3ダメージを与える!」
「お前はどれだけの魔法を覚えているんだ!?」
(赤ん坊の頃から密かに練習していたからね)
フェンリが俺を背中にせよって、他の人に魔法を教えていた為に知識はそこで取得して、夜に親が就寝してから密かに練習した。俺が4歳の頃には家に置いて仕事を行くようになり、その間に本でいっぱい勉強&修行をしたのだ。異世界何だ、自分の命は自分で守らないとね。生き延びる為の魔法を優先に沢山練習した。
そして、恩恵を貰ってカード化できた一昨日と昨日で魔力が尽きるまで、夜に魔法をカード化していたのだ。
「対象は、エイフィの攻撃を受けていた『アースコング』!」
『アースコング』はエイフィの反撃を受け残り体力は3。父さんが何らかのスキルカードで防がない限りは倒せる。
・・・『アースコング』はそのまま叫び声を上げて消えた。
「これで、俺のする事はこのターンはもうないよ」
「・・・ターンエンドだ。ターン終了時に、ユニットの受けたダメージは回復する」
エイフィが受けて傷も治り、安心する。
「それじゃぁ行くよ!俺のターン!」
デッキからマナゾーンに5枚置く。
そう、このゲームは基本的に最低1ターンの間に実質2回プレイヤーに攻撃をしなければ勝利する事は出来ない。
デッキが無くなっても敗北とはならないが、守りの為のマナカードも増えない。
(父さんのマナは8枚・・・守る事が出来るのは、『ラビット』と『ゴブリン』の2体。・・・行けるか?)
「裏側表示のモンスターをマナカードでコストを払い召喚!コスト2『ゴブリン』」
「おお!?引いていたのか」
「裏側表示から召喚された為、召喚酔いはしない。だから、『ゴブリン』をレストして起動効果『石礫』を発動。父さんの『ゴブリン』に1ダメージ。体力1の『ゴブリン』にはそのまま消えて貰うよ」
「まさか、ゴブリンの効果を使う為だけに裏側表示で出していたのか?」
「・・・え?うんそうだけど」
呆れた様に言うヴァーダにきょとんとして返す。
(父さんが後から出すモンスターは分からなかったけど、どの道、『ファイア』とかで削って『石礫』を使えば余分なマナとユニットを消費せずに倒せるのだから十分なはずだよな?)
「そんな『ゴブリン』なんていう弱いユニットは表で召喚して守りに使うのが普通だぞ」
(えー、父さんの方が脳筋だよな)
「まぁ良い、お前のターンだ」
「う、うん。裏側のユニット2体『初心者です』を表側にしてマナカードで支払って召喚!スキルデッキから10枚置き、表側表示で『初心者です』をマナスキルを使って3体召喚」
「バトルフェイズ!」
「来い!」
「召喚酔いしていない『初心者です』2体で父さんに攻撃!」
「『初心者です』1体の攻撃から『ラビット』で防ぐ!」
パリンと1枚のマナが割れる。残りマナは9枚。しかし、『ラビット』に『初心者です』1体が蹴り飛ばされると同時に足に串を指して消える。
(愚策過ぎると思うんだけど。エイフェの攻撃から守る気はないのか?いや、スキルで倒せるって事か)
(残りの俺のスキルデッキは16枚、マナカード1枚、マナスキル4枚。父さんのマナは7枚)
「スキルデッキからマナゾーンに10枚置く。『エイフィ』で父さんに攻撃!」
「甘いぞ!そのお前の最強のユニット『エイフィ』を倒してやる!魔法スキル、スキルデッキからマナゾーンに4枚置き、それを使用してコスト4『躍動』を発動!対象1体をスタンド、行動可能状態にする!立ち上がれ!『アースコング』!そして、『エイフィ』を返り討ちにしろ!」
「魔法スキル、コスト6『疾風』発動!」
「それは!中級魔法!?」
「この効果は、ユニットの攻撃が防御された時、その防御に選ばれたユニットには防御されない。つまり!父さんの『躍動』でスタンドさせたのは無駄になったという事だよ!」
「何―!?」
エイフィが疾風の如く、『アースコング』をすり抜け、ヴァーダに剣を振りかざす。
「魔法スキル、コスト3『ストリング』発動!1体ターン終了時まで攻撃力を+2する。よって、『エイフィ』の攻撃力は5だ!」
パリーン!一刀のもと、5枚のマナが割れる。
「フフ。フハハハ!凄い・・・凄いぞ!アマロ。まさか、こんなにも魔法の才能に恵まれていたなんてなぁ。間違いなくお前は天才だ!だがな、やっぱりお前はまだ初心者だよ。さぁ、お前の行動できるユニットはもういない。ターンエンドするといい。次の俺のターン、『ラビット』『タイガーウルフ』『アースコング』『ウルフコング』の4体の攻撃を防げるのか?仮に防げてもその次のお前のターンではこれといった事は出来ないだろう?」
嬉し笑いし、勝利を確信するヴァーダ。
「父さん・・・。俺は、まだマナゾーンに7枚もあるんだよ?それに、父さんのターンはもうないよ!」
「何だと!?」
「魔法スキル、コスト4『躍動』を発動!勿論対象は『エイフィ』だ!」
「お前も使えたのか!?」
「行っけー!!エイフィー!」
「任せて」
ヴァーダに向かって走る。
「させるかー!スキルデッキからマナゾーンに3枚置いて使用し、魔法スキル、コスト3『ファイア』を発動!『エイフィ』に3ダメージだ!『エイフィ』の体力は3!残念だったな!」
「残念なのは父さんだよ!魔法スキル、コスト2『シールド』発動!」
「アマロ!『シールド』好き過ぎだろ!?」
『ファイア』と『シールド』が相殺され、『エイフィ』がヴァーダの残りのマナ2枚を全て割る。
「ア、アマロ。まさか、この俺をここまでやるとは本当に驚いた。だけどな。さっきも言っただろう?お前が出来る事はもうないし、『シールド』でマナカードまで使用した。ますます、お前の勝つ手段がなくなったんだよ」
そんなヴァーダの言葉を無視して、ヴァーダに歩み寄って行く。
「?どうしたアマロ近付いて来たりなんかして」
どうやら理解していない様だ。まじかよ・・・。
「父さん、父さんのスキルデッキはもう0枚だよね?」
「ん?ああ。それでも、父さん大人気ないユニットがいれば、アマロの『初心者です』ばかりのデッキを圧倒する事が出来るぞ」
父さんの勝ちだと言いたい様だ。
「スキルデッキ0枚。マナゾーンにあるカードも0枚。つまり、もう何も出来ないわけだ」
「ああ、そうだな。でも父さんのユニットの方が圧倒的に・・・何をそんなに笑っているんだ?」
気分は、にっこにっこにー。心の中で某高校生アイドルグループのポーズを取る。
「父さん、何か忘れてないかな?」
「は?何を・・・ってしまっ!?」
コツン。
手に持っていた武器『木の棒』にようやく気付いたが、それと同時にヴァーダの頭を軽く叩く。『木の棒』は攻撃力が1ある。マナカードのない状態でプレイヤーがダメージを受けた。つまりそれは、ヴァーダの敗北、そして、俺の勝利という事だ。
フィールドが光の粒子となり、消えて行く。
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