最終話 未来へ


3月3日

今日はひな祭り。博士と助手に朝から呼ばれ、ちらし寿司を作ることに。勿論美味しく作って食べました。

アライさんが図書館の奥から雛人形を見つけ、かばんさん、サーバルさん、フェネックさんと綺麗に飾っていた。昔はフレンズが雛壇の人形役をしたイベントもあったから、次やる時はそれを提案してもいいかもしれない



「…、色んな子が代わりばんこにやってたなぁ。今年は誰が一番にやることになるのやら」



パラッ…



3月14日

今日はホワイトデー。先月のバレンタインと誕生日のお返しに、ホワイトチョコレートを使ったお菓子と、赤い薔薇を送った。彼女は凄く喜んでくれたけど、結局無難なものになってしまった。来年こそはもっと素敵なものを贈れるようにしたい


無理に豪華にしなくても構わないからな


「そうだそうだ、態々書いてくれてたんだった。はマカロンとバームクーヘンにしたんだっけか。今年は何にしようかな」



パラッ…



4月22日

桜が綺麗に咲いている場所を見つけた為、急遽お花見をすることになった。ツチノコさんとヤマタノオロチさんがお酒を飲むととても面倒なことになるので、ヤタガラスさんとヨル姉さんが見張っていた。

意識をそっちに集中しすぎた結果、スナネコさんとリル姉さんが悪酔いした。止めるのに全力を出すとは思わなかった



「…ホント、俺はお酒飲んでなくて良かった」



そこからまた、パラパラとページをめくっては眺める。海に行ったこと、紅葉狩りをしたこと、雪まつりを開催してみたこと、初日の出を皆で見たこと…何気ない日常からイベントまで色々書いてある


「…懐かしいなぁ」


そう、どれもこれも懐かしい。時が経つのは本当に早い。俺達の生活も、パークも、少しずつ変わっていく


「どうしたんだ?そんな前の日記なんて見返して」


それでも、変わらないものはある


「ちょっと見返してたら止まんなくなっちゃってさ。そういう時ない?」


「確かにあるな。あぁそうだ、準備は終わったぞ」


「ありがとう。なら行こうか」



*



「よっ…と、到着。足元に気をつけてね」


「ありがとう」


ついたのはお馴染みサンドスターの火山。ここの火口には綺麗なフィルターがある。それを創造しているのは、この山に置かれた、四神と呼ばれる者達の石板


その隣には、小さなやしろがある


「うん?もうお供え物が置いてあるね」


「誰か来たのだろう。私達のはそれの上に置いておくか?」


「そうだね」


一口サイズのジャパリまんを2つ置き、手を合わせて心の中で語りかける。いつもありがとうございます、これからもよろしくお願いします…ってね


四ヶ所全部を回ったら、中央にあるそれらよりも少し大きめの社にもお供えをする。こっちには大きなジャパリまんそのままだ。で、同じようにお祈りをする


これで、ここの用事は完了だ



「…今日も、民は頑張っているのだな」



ふとキングコブラが呟く。隣に立って、彼女の視線を追う。瞳に映ったのは、ここからでも分かるあの大きな観覧車



そう、パークはもう変わってきている



この場所もそうだ。登山道は整備され、多少登りやすくなった。この社も最近新しく作った、あの人達に感謝を伝えるためにね



そして、一番大きな変わったこと



が、戻ってきたということ



結局あの事件の影響で、復興への期間は延長されてしまった。戻ってきて本格的な作業が入ったのは今年から、あれからもう三年のことだ


それでも、早い方だと母さんは言っていた。父さんは俺達のおかげだと言ってくれた。ミライさんは人一倍やる気を出していた


そして今日も、フレンズとヒトが協力して、頑張って作業をしてくれている


ただ戻ってきたとは言っても、全てを自由にできるわけじゃない。その例がこの場所だ。ここに来れるのは、俺達のような一部のフレンズと、父さん達のような一部のヒト。まだまだ一般公開には早いというのがオイナリサマと園長の意見だ



「…本当に、早いなぁ」



時が経てば、必ず変化は訪れる。時にそれは残酷な現実として、俺達の前に立ち塞がる



「不安か?」



それでもやっぱり、変わらないものがある



彼女が顔を覗いてくる。その表情には、不安とか、恐怖とか、そういった負の感情は全くない



「いいや、楽しみだよ。ここからどうなるのかさ」



そして、俺の心にも、そんな感情は全くない



「そうか、ならいい。さて、そろそろ出発しよう…っとと」


「おっと、大丈夫?」


「問題ない。少し躓いただけだ」


「気をつけてよ?もう一人の身体じゃないんだから」


「フフッ、そうだな」


左手の薬指にはめたお揃いの指輪を煌めかせて彼女は微笑む。太陽に照らされたその姿はとても綺麗で、時が経っても、何度見ても、思わず見惚れてしまうんだ



「さぁ、行こう」


「ああ、行こう」



彼女を抱き抱え、俺は空を飛ぶ。この青空を、自由に、何者にも縛られずに



不安はない。だって、君が隣にいるから



怖くない。だって、二人なら乗り越えられるから



だから行こう。何処までも。何時までも



俺達の未来に向かって!





















幻想の けもの お し ま い

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