幻想の梟少年④
「我等は『ダークビースト団』!今日から貴様らは我等に支配されるのだ!」
「ダークビースト団…ですって!?」
大変なことが起きました!ライブが始まろうとした所で、謎の四人組がやって来たです!
パークには悪の集団…『ブラックガオガオ軍団』がいるのは知ってます。仮面フレンズと幾度となく戦ってきた悪い奴等です
でも今回は、『ダークビースト団』なる別の組織です!『ベアード』と名乗る奴がジェーンさんを人質に取りました。なんという卑劣な…!
「誰がお前達の言いなりになるものか!そうだろう皆!」
\ソウダソウダ!/\イイナリニナルモンカ!/\カエレカエレ!/\ペェッ!/
僕やキュウビさんは勿論、他のフレンズもコウテイさんに賛成です!誰もお前達の言うことなんか聞きません!
「へっ!そういうこった!ジェーンを放してどっか行け!」
「…そうかそうか。生意気な奴だ!引っ捕らえろ!」
「了解!」
『ライガー』と名乗る奴がイワビーさんに飛びかかりました!危ない!
ガキィンッ!
「…ほう?」
そこに、一人のフレンズが現れて、剣のような武器でライガーの攻撃を止めました!麦わら帽子をかぶっててよく分かりませんが、凄く『勇敢な人』です!←サーベルタイガー
「今のうちに、君達は早く逃げるんだ!」
「だがジェーンが…!」
「私なら大丈夫です!皆は先に逃げて下さい!」
「…っ、すまない、ジェーン…!」
「大丈夫、私が必ず連れ戻すよ」
「悔しいけど、頼んだわよ!」
コウテイさんが皆を連れてステージから離れました。麦わらさんとライガーが睨み合っています。ビリビリとした空気がこっちにまで伝わってきます…
「あ~らら…面倒なことしてくれちゃって~。覚悟は出来ているんだろうねぇ!?」ブンッ!
「ぐっ…!?」カァンッ!
麦わらさんとライガーがぶつかり合い、激しい攻防を繰り広げています!ステージを縦横無尽に駆けています!
…ですが、最初は善戦していた麦わらさんでしたが、敵のスピードがどんどん上がっていきます。徐々に押されていき、そして…
「これで…終わりだ!」ドンッ!
「うわあああぁぁ!?」ドゴーンッ!←出番終了
派手に吹っ飛ばされて、ステージから消えてしまいました…!
「邪魔者はいなくなった!これで貴様らは我等の手下だ!これからは我等の言うことを素直に聞くんだな!」
『そんな…』ザワザワ…
何てことなのでしょうか…。麦わらさんも強かったのに、敵はそれ以上だなんて…。他の三人も強そうですし…。どうしようもできないのでしょうか…
「くぅ…助けてヒーロー…!」
「…ヒーロー?そんなものはいやしない。試しに全員で呼んでみるがいい。どうせ無駄だろうがな!」
そ、そうです!あのヒーローなら、きっと来てくれるはずです!お兄さんが知っていたということは、この世界にもいるはずです!
「皆お願いします!私と一緒に呼んでください!せーのっ!」
『助けてヒーロー!』
「…声が届いてないみたいです!もう一度!」
『助けてヒーロー!!』
「もう一度お願いします!せーのっ!」
『助けてヒーロー!!!』
皆でヒーローを呼びました。僕も出来る限りの大きな声を出しました。この声が届くと信じて…!
ブオォンブオォンッ!
「な、なんだこの音は!?」
この音…!やっぱりこの世界にもいました!声が届いていたのです!来てくれました!
「そこまでだ!ダークビースト団!」ギャギャギャッ!
「何…貴様、何者だ!?」
「パークとフレンズを守るため、勇気と力をドッキング!愛と正義の使者!『仮面フレンズ!スカーレェッヅ(レット)』参上ゥ!」
─
「…スカーレット?」
バイクから降り、高らかな声で答えたヒーロー。その登場を待ち望んでいたヒロユキは首を傾げた
ガチ勢のヒロユキでも知らない仮面フレンズ。それもそのはず、このヒーローはこの世界にしかいないからだ
ここが自分の世界よりも過去なのは、遊園地を回っていた時に確認済みである。そこから、てっきり初代、あるいは二代目が出てくると思っていた。予想が外れた彼はがっかり…
「凄い!仮面フレンズはまだ他にいたのですね!」
するはずもなく、とても興奮していた
思わず体が前のめりになり倒れそうになるが、キュウビキツネが優しく抱き締めて止める。しかしさっきまでのドキドキは何処かへいったのか、そんなことは全然気にしていなかった
「仮面フレンズだとぉ~?誰だが知らないが、邪魔をするなら容赦しない!やってしまえ!」
「「うおおおおお!!」」
ヒグマの指示で、ライオンとヘラジカがコウに突っ込んでいく。野生解放により輝いている爪と槍は容赦なく彼を襲う
それを全ていなすコウ。二人を同時に相手に出来ているのは、彼も
「ご退場願おうか…ハァッ!」
「ぎゃあああ!?」ガッシャーン!
「ぐわあああ!?」ドジャアーン!
一瞬の隙をつき、二人をステージ裏に投げ飛ばし、手をパッパッと軽く叩き敵を指差す
「次はどっちだ?」
「…私が相手だ」
キングコブラが一歩前に出て、コウと睨み合う。彼女が手で眼を覆ったその時
『蛇王の猛毒眼光!』ビュンッ!
眼からビームが発射された
「あぶなぁ!?」
咄嗟に避けたものの、顔面スレスレを通っていった為思わず素が出てしまったコウ。観客やヒロユキにはバレていないが仮面の下は汗ダラダラである
「避けたか…ならもう一発…!」
「させん!正義の鉄拳、フレンズパンチ!」バシッ!
「ぐああ!?」ヒューン!
速攻でキングコブラに近づき攻撃を繰り出す。実際はパンチではなく張り手であるが、威力は十分で彼女はステージ裏に消えていった
「ちっ!使えん奴等だ!仕方ない、私が直々に相手をしてやろう!貴様はもういらん!」
「きゃあ!?」
ヒグマが
「いくぞ!オラオラオラァ!」
「ふっ…!ほっ…!」
何度も容赦なく振り下ろされるハンマーをステップで避けていく。大味なアクションに観客からは歓声が上がる。悪の集団への恐怖はどこかへいったようだ
(待って待ってさっきからガチすぎない!?本当にここまでやらなくてもいいじゃんか!一発K.Oを守ってくれてるのはありがたいんだけどさ!?)
実はさっきからずっと内心穏やかではないコウ。事前に本気でやると言われていたので予想していなかった訳ではないが、それでも予想以上に四人の攻撃は激しかった
ボコボコになるステージを見て、これ以上は壊せないと判断し…
「くらえ…必殺!スーパーフレンズパンチ!」
「なっ…!?うわあああぁぁ!?」
ドンガラガッシャーン!
割と本気で殴りかかり、ヒグマをぶっ飛ばした。前の三人よりも凄く派手な音がしたが多分問題ないだろう
「お嬢さん、怪我はない?」
「は、はい!お陰で助かりました!皆さーん!ヒーローが、悪者を全員やっつけてくれましたー!」
ジェーンのアナウンスで、再び平和が戻ったことが分かり、観客から拍手が巻き起こる。『皆でお礼を言いましょう!』と彼女が言ったと同時に──
ボフンッ!!モクモクモク…
──突如、観客席の最前列から煙が上がった
─
「凄いです!もう全員倒しちゃいました!やっぱり仮面フレンズは強いですね!」
「そうね、まさにヒーローって感じだわ」
知らないヒーロー、激しいアクション、眼からビーム…。男の子が好きそうなものてんこ盛りのショーに、ヒロユキのテンションはMAXである
「でもね…これで終わりじゃないのよ」
「えっ?それってどういうことですか?」
キュウビキツネが言った意味が分からなかったヒロユキは、彼女の顔を覗きこんだ。見えた顔はとても悪そうだった
「こういうことよ!」
彼女が手を上げ、勢いよく振り下ろすと、突如煙が上がった。視界が奪われた周りはざわつき、ヒロユキも困惑している
「…えっ!?きゃああああ!?」
「仮面フレンズよ!これで終わりだと思ったら大間違いだ!」
「なん…だと…!?」
いかにも漫画に出てきそうな大ボスの台詞を吐き、ステージに降り立ったそれにコウは問いかける。声が若干震えているのは咄嗟のアドリブだからである
煙が晴れると、それは答えた
「余は『オロチガラス』。ダークビースト団を操るものだ…!」
そこには、ヤマタノオロチにヤタガラスの翼を付けたような姿に化けたキュウビキツネがいた
「た、助けてくださ~い…!」
そして、腕の中には、再び捕まったジェーンがいた
「キュウビさん!なんでこんなことを!」
「キュウビ?ああ、先程までのは仮の姿だ。今頃本物はどこかで寝てるだろうよ」
「なっ…騙してたですね!」
「騙される方が悪いのだよ」
思わず観客席からヒロユキが正体を叫んでしまうが、誤魔化しつつ、さりげなく自分へのヘイトを無くしている。上手いがなんてズルいのだろうか
(何やってんだミk…この愚姉はー!?!?!?)
しかし関係者にはバレバレである。大声で叫びたくなるが、仮面を押さえて耐えるコウ。何とか演技を続けるジェーン。ステージ裏にいる全員も唖然としていた
アドリブを入れてもいいと言ったがここまでやっていいとは誰も言っていない。だが一応観客は楽しんでいる様子なので、ストップはかからず続行された
「待っていろ!今助けr」
「おっと、動いたらどうなるか分かっているんだろうな?」キランッ!
「ひっ!?」
「くっ…なんという卑劣な!」
ジェーンの首元に、ヘビの頭がついた尻尾を突きつけるキュウビキツネ。悪役としては大正解だが色々とやりすぎである
割とガチで切れそうになっているコウ。しかしここで正体を明かしたら、今日来てくれたフレンズやヒロユキの夢を壊してしまうので我慢していた
「くくく…それでいい。くらいな!」
「なっ…ぐああああああ!?」
「ああっ!仮面フレンズ!」
空中から弾幕が雨のように降り注ぎ、攻撃を受けた彼は膝をついてしまった
*
「そんな…」
目の前の光景に言葉が出ないヒロユキ。大好きなヒーローが、為す術なくやられるのを間近で見るのは辛いだろう
「…何やってるんでしょうか、本当に…」
そこにオイナリサマが帰って来た。珍しくはっちゃけている友人の姿に頭を押さえている
「オイナリサマ!このままだと仮面フレンズがやられちゃうです!」
「確かに、このままでは(色々と)まずいですね…」
必死に訴えるヒロユキを見て、どうにか自然に解決できないか考えるオイナリサマ
何かを思い付いたのか、ポンッ!と手を叩き、彼と向き合う
「ヒロユキ、貴方がヒーローを助けるのです」
「ぼ、僕がですか…?僕よりもオイナリサマの方が…」
「…私、先程セルリアンと死闘を繰り広げたので、力がまだ回復しきっていないのです(大嘘)。周りも混乱して動けなさそうですし…。今頼れるのは貴方だけです!」
「でも…」
彼が迷い、恐がるのも無理もない。敵は強大な力を持っているのは明白であり、ヒーローでさえやられてしまいそうなのだから。自分が何かできるとは思えなかった
「大丈夫、私が貴方を守りますから。それにヒーローを助けたとなれば、コウは凄く褒めてくれるでしょうし、お礼に美味しいものを作ってくれるでしょう。貴方自身がヒーローになったと聞けば、家族や友達はきっと喜びますよ?」
「やります!」←ちょろアマ
あっさり承諾したヒロユキ。嘘をついたオイナリサマは若干の罪悪感を覚えたが顔には出さなかった
「では作戦を立てましょう。まずは貴方の得意なことを教えて下さい」
「えっとですね…」ゴニョゴニョ
「…成る程。ではこのようにしましょう」ゴニョゴニョ
オイナリサマの作戦を聞き、頷くヒロユキ。彼女が懐から取り出した二つの仮面の内一つを手に取る
ステージに目を向けると、よろよろと立ち上がるヒーローが映る。まだ諦めていない姿を見て、彼は決心し、空を飛んだ
*
「まだ…終わっていない…!」
「ほう…まだ立ち上がるか。だが…これでトドメだ!」
再度展開した弾幕を放とうと、右腕を振り下ろそうとした時
「──スターショット!」
パァンッ!
「なっ…!?」
何かに撃たれた彼女の右腕。突然のことに驚き、展開された弾幕の動きが止まる。その隙を突き、ジェーンは拘束から脱出した
「隙あり!」
パシィン!
「うっ…!?」
ジェーンが脱出したと同時に、もう一人がお札のようなものをキュウビキツネの背中につけた
上空から奇襲を仕掛け、コウの隣に降りてきたのは、狐のお面を着けたオイナリサマと、ワシミミズクの羽を広げる、ヒーローの仮面を着けたヒロユキ。彼の体からは、野生解放によりサンドスターの輝きが溢れている
「お前達は何者だ!?」
「僕は!…ええっと…?」
「神聖なる神の使い…『キュアミミズクブラウ』!そして『キュアフォックスホワイト』!」
「仮面フレンズじゃないのですか!?」
咄嗟に考えたヒーロー名。この場だけのものなので何でもよかったのだが、形になっている辺り彼女らしい。姿はとてもそれっぽいとは言えないが
更なる乱入にコウは呆然としていた。彼の後ろに隠れたジェーンも何が起こったのかまだ分かっていない様子だった
「鬱陶しい!先ずはお前達を倒す!」
標的を二人に変えたキュウビキツネが、攻撃を仕掛けようと動こうとするが…
「なにっ…これは…!?」
「私が力を込めている限り、貴女は満足に動くことは出来ません。悔しいでしょうねぇ(笑)」
「てめぇ・・・!」
張り付けたお札によって、体の自由が効かなくなり、ぎこちない動きになるキュウビキツネ。それを確認したオイナリサマが珍しく挑発していた
「さぁ二人とも!今がチャンスです!」
「…ハッ!行くぞ少年!」
「はいっ!」
我に返ったコウとヒロユキは空を飛び、急降下でキュウビキツネへ突撃する。練習も何もしていないのに、二人の息はピッタリだった
「これで終わりだ!くらえ必殺!」
「スーパー!」
「イナズマー!」
「「フレンズキィーック!」」
ドオオォンッ!!!
「カハッ…!」
コウとヒロユキの渾身のダブルキックがキュウビキツネに炸裂した。彼女はその場に倒れこみ、起き上がることはなかった
即ち、二人のヒーローが、勝利を手にしたのだ
「けっ、決着です!皆さん!今度こそ勝ちました!悪者はいなくなりました!ありがとうヒーロー!」
『ありがとうヒーロー!』
拍手と歓声が起こる。観客に一礼したコウは、ヒロユキと向き合う
「ありがとう少年。君のお陰で、あいつに勝つことができた」
「そんな…。オイナ…キュアフォックスホワイトがいてくれたからです。僕一人じゃ何も…」
「何を言っているんだ。君が勇気を出してくれたから、ジェーンを無事に助けることが出来たんだ。君は私のヒーローだ」
「僕が…仮面フレンズの、ヒーロー…」
「また会おう少年よ。君の成長、楽しみにしているぞ?」
ヒロユキの頭を撫でた後、マントを靡かせ、颯爽と去っていくコウ。その後ろ姿を、ヒロユキは静かに眺めていた
「…さて、私達も行きましょうか」
オイナリサマがヒロユキを手を引き、裏から出てきたキングコブラがキュウビキツネを抱え、全員で一度ステージを離れる
仮面で見えはしなかったが、ヒロユキの表情は、とても嬉しそうで、幸せそうだった
この日彼は、ヒーローとしての一歩を踏み出したのだった
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます