第78話 旅館探検隊
やぁ、俺の名前はコウ。今日の
なんやかんやあって、俺はキングコブラさんとジェーンさんに誘われ、旅館を探索、解説することになった。ここに来た理由にそれも入っていたから丁度いい。お昼のジャパリまんを食べてさぁ出発だ!
「さて、何処から行こうか?」
「そうだな…任せていいか?」
「お願いしますガイドさん!」
いきなりハードルが高いんだけど…。仕方ない、やってやるぞ
「…よし決めた。ついてきて」
という訳で、来たのは脱衣場…ではなく、近くにある鍵のついた扉。合う鍵が分からないので片っ端から差し込んで回していく
「どうしてここに来たんですか?」
「脱衣場に全然道具がないから…かな」
「「道具?」」
そう、脱衣場なのにあるのは服を入れるカゴくらいで、本来ありそうな物がないのだ。中をぐるっと見たけど、それっぽいものがないので外を探した。すると、近くに鍵のついたこの扉を見つけたのだ
「ここ、多分物置。ここに色々あると思うんだよね」
「いつの間に鍵を手にいれたんだ?」
「朝キュウビキツネさんから借りた」
というのは半分嘘。本当は、起きたら直ぐに彼女に出会って、半ば押し付けるように鍵の束を渡してきた。これを予測していたとしたら…恐ろしいね
「っと…開いたね」
電気をつけて中を見ると、思ったより綺麗に整頓されている。もしかしたらギンギツネさん達はここも掃除しているのかもしれない。しかし、いつもしているとなるとここは人手不足じゃないか?誰か他にいるのだろうか
「ここに書いてあるのは文字ですよね?これは何でしょうか?」
早速ジェーンさんが気になるものを見つけたみたいだ。それはヒト一人分乗れる器具。腰辺りまでに伸びた棒(?)の先端には数字の書いた物がついており、乗ることで針が動き数字を指す
「これは『体重計』だね。俺達の重さを量る物だよ」
「重さ…ですか」
「乗ってみる?」
「それ、女の子に言うことですか?」
「ごめんなさい」
そこはやっぱり気にするのね、反省。最近はジャパリまんだけじゃなく料理も食べているから栄養が偏っているかもしれない。でも君達はライブに練習と動いているから心配ないと思うんだけどなぁ
「ふむ…数字が重さを指すのか。量ってみたが、これが重いのかは分からんな」
キングコブラさんが試しに乗ったようだ。見てないし『何キロでした?』とか絶対に聞かないし聞いてはいけないぞ!相手が気にしなさそうでもだ!
「キングコブラさん凄いですね。この文字の意味が分かるんですか?」
「ああ、これは『数字』というもので、物の数を表すんだ。ここに書いてある『ひらがな』と『カタカナ』も分かるぞ。コウに教えてもらったからな。懐かしいものだ」
「…へぇ~…そうなんですか~…」
…なんか、とある部分をかなり強調したような…。きっと気のせいだな。ジェーンさんの眼が一瞬光を失ったのもきっと気のせいだ
だが懐かしいのも事実。あれから大分時間経ったなぁ…
「こっちも数字が書いてあるな。上に動かせる棒(?)があるが」
「こっちは『身長』を測るやつだね。こんな風に」
背中をピッタリ付けて、棒(?)を頭に合わせ、数字を確認する。前に測ったのはいつだったか…。でもその時よりかは少しばかり伸びていた。この体になっても伸びるもんなんだな
…そういえば、フレンズって成長するのか?ジェーンさんが体重気にしてるからありえそうではあるけど
「コウはヒトだと高い方なのか?」
「ん~…
「私達よりも高いしな。ちょうど頭一個分か?」
と言って、キングコブラさんは隣に並び、肩に頭を当ててきた
…はい?
「ふむ…乗せるにはギリギリってところか」
「ちょっ、ちょっと?何してるんですか?」
「確認しただけだが…。口調戻ってるぞ。そうなるくらい嫌だったか?」
「嫌…じゃないけど…。いきなりはビックリするから…」
「そうか、すまなかった」
彼女が離れて後ろを向く。あんなことがあったのにこんなことをするとは思わなかった。それに比べるだけなら並ぶだけでもいいはずじゃあ…
…あれか?もう吹っ切れた、というアピールかな?なら納得!それなら俺も普段通りに接するぞ!
(…いきなりじゃなければいいのか)ボソッ
「コウさん!これは何ですか!?」
「はい!?あっ、えっと…」
ジェーンさんが違う道具を指差した。ちょっと口調が強いのはきっと二人で話続けていたからだろう。ごめんね、ほったらかしにしちゃって
「これはドライヤーだね。髪を乾かしたりする物だよ」
「時間が経てば乾きますよね?今も乾いていますし」
「素早く乾かすことでニオイやベタつきを押さえる…らしい。俺もあんまり使わないから細かいことは分かんないけどね」
それにサンドスターがどうにかしているのか、そこらへんの指摘を受けたことはないからいいかなって。気になるならやってもいいんじゃない?
「そうなのか。…なら、今度それを使って私の髪を乾かしてみてくれないか?」
「へっ?なんで俺が?」
「自分でやるよりもお前の方が上手そうだからな。どんなものなのか体験しておきたい。頼めるか?」
「…まぁ、いいけど」
「わ、私もいいですか!?」
「…いいよ。一人だけっていうのもなんだし」
「ありがとうございます!」
勢いが凄かったのでつい了承したけど、これ難易度高いよなぁ…。他人、ましてや女の子の髪なんて乾かしたこと…あったわ。けど相手お嬢様だったから遠慮なく出来ただけで、この二人は…なんか違う気がする。なんでだろ?
…単に意識しすぎだな。ただ髪を乾かすだけなんだ。決してやましい気持ちなんてないのだから
他にあった物で、二人が興味を持ったのは足つぼマッサージ器具。健康そのものなのか二人が痛がる様子はなかった。俺は痛い所あったけど。サンドスターで治さないとな。よってジャパリまんを要求する
それ以外は備品くらいで、目新しい物は特になし。単にここに置いてないだけかもしれないけど
見つけた道具は、折角だからギンギツネさんに言ってみよう。脱衣場で使えるようにしてくれるかもしれないしね
そういえば、近くに自動販売機もあったけど動いていなかった。中に飲み物は入っていないから、動いていても関係なかっただろうけど。因みに入れるお金はジャパリコイン。ツチノコさんに言えば貸してくれるかな?
ジェーンさんは一回来たことあったようで、マナーや浴室の道具の使い方は一通り分かっているみたい。キングコブラさんにも教えていたので浴室の道具に関しては解説いらず。少し寂しい
「一通り見たね。どうだった?」
「凄く楽しかったです!」
「やはり面白いな。引き続き頼む」
満足出来たみたいだね。なら早速次に行きましょう
*
「次はここだね」
「ここは…あの時の場所か」
「コウさん、ここって…!」
「そう、旅館のお土産屋さんだね」
一昨日、キングコブラさんとすれ違い…っていうか勘違いを起こした場所。そんなことはどうでもよくて、ここも色々な物が置いてある。遊園地のお土産屋さんを思い出すなぁ…
「コウさんコウさん、これ、ここにもありましたよ」
「どれどれ…って、それは…」
ジェーンさんが手にもっているのは、大きな黄色の耳がついた、頭につけるアクセサリー的な物
「ジェーンはそれを知っているのか?」
「カチューシャって言うんですよ。前にコウさんと遊園地デートをした時にお土産屋さんを見つけて、そこで付けたんです。結構昔に感じちゃいますね」
「…ほう~…なるほどなるほど…」
…なんか、一部分をとてつもなく強調しなかった?いやいや気のせいだろう。キングコブラさんの目付きが鋭くなったのもきっと気のせいだ
「私はs」
「サーバルキャットのサーバル!…だっけ?懐かしいね」
「先に言わないで下さい!なんか恥ずかしいじゃないですか!」
それは自分から言うのは恥ずかしくないということでよろしいか? てか言おうとしていたのか。それは失礼しました
「あの時はビックリしたなぁ。いきなりだったし、俺にもカチューシャ付けてって言ってきたもんね」
「だって見たかったんですもん。似合ってましたよ?今は本物があるので要らなくなりましたね」
確かオオカミの耳付カチューシャを付けたんだよな。次の日にはまさか本物が出てくるとは思わなかったよ。このカチューシャがトリガーになったとは思わないけど
「そうだ!今度はこれ付けてください!」
ジェーンさんはもう一つ持ってきたライオンさんのような丸耳の物を俺に渡してきた。雪山に合わせてか白い物だ
…ちょっと待って、確かにキメラ…キマイラは神話ではライオンが混ざってはいるけど、そんなピンポイントで持ってこなくてもいいじゃないか
「コウさんネコさんの耳はないですから、付けとくとちょうどいいんじゃないですか?」
「ちょうどいいって何が!?なんか嫌だよ!」
「なら一回だけ!一回だけでいいですから!お願いします!」
うっ…そんなにお願いされたら断りづらいじゃんか…。仕方ない、百獣の王よ、力を貸してくれ!
「気楽にやりゃ~いいよ~」←招き猫ポーズ
うわめっちゃ恥ずかしい。なんで俺はポーズまでとっているんだ。これには不思議な魔力があるに違いない。だって二人とも固まっているもの
「感想をどうぞー?」
「もうずっと付けててもいいんじゃないですか?」←真剣な顔
「お断りだよっ!」
更にカオスにしないでくれ!今ですら多いのにこれ以上増えた姿なんて想像できないし!もういいでしょ!?もうこれ取るからね!?
こんな所キュウビキツネさんに見られなくて良かった…。何言われるか分かったもんじゃない
「…よかったな、楽しそうで」ジー…
なんかキングコブラさんの視線がより強くなってる気がする。一体俺が何をしたというんだ?なんか怖い…
…少しからかえば中和されるんじゃね?よし!
「そうかそうかそういうことか。キングコブラさんも付けたいんだね、カチューシャ」
「なぁっ!?わ、私は別に…!」
「一人だけ仲間外れにされたような気分だったんだね?拗ねてないで言ってくれればよかったのに。色々あるよ?これなんかいいんじゃない?ユキウサギ耳だって」
「違うぞ!?それに拗ねてないし付けるとは言っていない!待てなんで構えて近づいてくるんだ!?」
「いやいや絶対似合うって。ほら遠慮せずに早くフードをとって頭につけて心ピョンピョn」
「待てって言ってるだろ!」ドゴォッ!
「やぶのうさぎっ!?」ズザーッ!
「…これはコウさんが悪いですね。キングコブラさん大丈夫ですか?」
「し、心臓に悪い…」
ジェーンさんにまで怒られた。確かにやり過ぎたかもしれない…。客観的に見たらさっきの行為は不審者そのもの…。これは紳士としていけない行為…。尻尾攻撃も仕方ないこと…
「あの…ごめんなさい」
「…デザート作ったら許す」
「…プリン作ってあるので、それでどうですか?」
「…許す。…すまない、大丈夫か?」
「大丈夫です。気にしないで下さい」
アウトに近いセーフ…かな?取り敢えずこの場は収まった。美味しいからねプリン。特別に二つあげるね
結局キングコブラさんはカチューシャを付けなかった。無理に付ける物ではないからね。見てみたかった、というのが本音ではあるけど
*
他にはトランプとか、ヌイグルミとか、キーホルダーとか、遊園地とそう変わらなかった。二人が興味を持ったものは違ったから解説には困らなかったけどね
お土産屋を出て、次の場所を見取り図で確認する。次はどこに行こうか?
「コウ、少し時間を貰ってもよいか?」
とか話していたら、やって来たのはヤタガラスさんとヤマタノオロチさん。外に行っていたからか髪が少し濡れている
「お楽しみの所悪いのぅ二人とも。確認しておきたいことがあるんじゃ」
「えっと…」
ちらっと二人を見ると、少し寂しそうな表情をしたけど、無言で頷いてくれた。いってらっしゃい、ということだろう
「分かりました。何処で話しますか?」
「そのほうの部屋でよいか?」
「いいですよ。ごめんねキングコブラさん、ジェーンさん」
「気にするな。デザートは忘れるなよ?」
「続きはまた今度にしましょうね!」
「うん、ありがとう。じゃあまた後で」
二人と別れ、神獣二人と俺の部屋に向かう。確認したいこと…か。一体、どんなことなのだろうか?
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