第44話 森の王は勝負がしたい!


「全身が虹色に光ってたみたいなの、その子」


「虹色…」


俺が戦った奴は紫。後から来たのが白。そしてフォッサさんが聞いたのは虹色…


まさか、三体もいるとは…。いや、もしかしたらまだいるかもしれない。そうだとしたらパークの危機じゃないか?皆に知らせるべきか…?


「…大丈夫?難しい顔してるけど」


「えっ?ああ、ごめん。それで、なんで探してるの?」


「私がへいげんに来る前、変な黒セルリアンが出たんだって。でもその虹色が一人で倒しちゃったらしくて。だから手合わせしたいなってへいげんの子達と探していたの」


セルリアンを倒した…?てことは、それもフレンズなのか?あれと仲間なのはほぼ確定として、強さもおそらく同じくらいだろう


だけど目的が読めない…。あれは俺と戦ったと思えば治療して帰っただけ。そいつもフレンズを助けたそうだが…味方…なのか?


「オレっち達も見てないッスね」


「最近泳ぐ練習を始めたので外にいましたが、それらしいものは見てないであります」


ああ、会った時むせてたのはそれか


「…図書館の方はどうだったんだ?」


「ハシビロコウとオオアルマジロが行ったんだけどいなかったって。だからこっちに戻ってきているかなって思ったんだけど」


「私達も来てから見ていない。なんならここに来るまでにも見てないぞ」


「そっか~ありがと。別の場所探してみるわ。あっ、それとコウ」


名指しで呼ばれた。なんだろ?


「キングコブラのことよろしくね~。はりきってるだろうから」


「なっ…!フォッサ、お前…!」


じゃあね~と言ってフォッサさんはスタこら去っていった。呼ばれたキングコブラさんは顔が少し赤くなってる


よろしくねってなんだ?守ってあげてってことか?はりきっているなら俺が守られそうなんだけど


「本当にあいつは…!」


「まぁまぁ。それ以上の情報はないので、とりあえず出発しましょうか」


「…そうだな」


改めてビーバーさんとプレーリーさんに別れを告げてこはんを離れる。そいつについてはへいげんに行けば何か分かるかもしれない。分かった所で何が出来るのかっていう話だが




*




「やぁやぁ私はヘラジカだぁ!いざしょうb」

「急いでるんで却下!では!」ブォン!

「ちょっと待てーい!」ズザザザッ


ちょっとバイク押さえないで下さいよ。危ないから道のど真ん中で仁王立ちしないで下さいよ。こっちの目的は図書館、真っ直ぐ行けばもうすぐ着くんですよ。邪魔しないで下さいよ


へいげんに入り、速攻で抜けようとアクセル全開にしたのが逆に仇となった。まさか岩が設置してあるとは。止まった瞬間、聞き慣れない音に反応してヘラジカ陣営が集まってきて囲まれた。そして案の定俺に勝負を挑んできたわけだ


「お前だな?ぺぱぷを助けた謎のフレンズは。なんでも剣を出し、空を飛び、セルリアンを一撃で倒した…と。見た目も聞いた通り…ではないな。尻尾と耳があるが、そんなことは些細なこと!さぁ勝負だ!」


勝負だ!じゃないよ。なんで俺の意思を聞かずに話を進めるんだ。おいそこの部下達よ、この人を止めてくれないか?


「ヘラジカ様凄く嬉しそうですわ」

「この時をずっと待っていたしね~」

「良かったでござるよ。これでひと安心でござる」

「さぁやっちゃうですよー!」

「…お願い」ジー


おい誰も止めないのかよ!?そして既に戦うことが決まっているかのような言い方ァ!全力で拒否してやる!


「絶対にやりません!そこどいて下さい!」


バイクを傾け進もうとするが、周りから押さえつけられてしまう。本当に危ないからそれやめて!怪我はさせたくないんだよ!


「お願い!一回だけでいいからヘラジカ様と勝負してくれない!?」

「君のことを聞いてからずっとワクワクしてたんだよ~!」

「この通りでござる!このままだとなりふり構わず誰にでも勝負を挑みそうなのでござるよ!」


しらんがなそんなこと!そういうことはあっちの陣営にでも頼んでくれ!てか君達も一回へいげん離れればいいじゃん!じゃんぐるにいけじゃんぐるに!


「どうするんだ?私としてはどちらでもいいが…」


「えっ?そうなんですか?なら、キングコブラさんが勝負するのはどうでしょう?」


代わりにしてくれるならもうそれでもいいからここを抜けたい。勝負できればなんでもいいんでしょ?だったら俺じゃなくても…



「二人とも勝負してくれるのか!?よし!全力でこい!」



だから俺はやらねぇっつってんだろうが!話聞いてた!?何がこい!だよ!いかねぇよ!


そうだ、こういう時は…


「ラッキーさん助けて。フレンズさんに襲われてます」←棒読み


お客様権限発動!これでラッキーさんが対処してくれるはず…!


「アワワワワワ…」


「ちょっとー!?なんでそうなるのー!?」


肝心な所で固まらないでよ!昨日までの有能ラッキーさんは一体何処へ!?


「何やってんの~?」


「おお!ライオン!丁度いい、お前も勝負しろ!」


「ん~後でね~。あれ?そっちの子は誰?」


もう片方の陣営も来てしまわれた。こんなん脱出不可能じゃんか!


「私はキングコブラ。こっちはコウ。ヒトだ」


「えっ!?ヒト!?」


皆が一斉にこっちを見る。あのハシビロコウさんでさえ凄く驚いた顔をしているのが分かるくらいだから、それほど衝撃的なのだろう。なにせ皆が知っているヒトとは全然違う見た目をしているのだから


「ヒトは絶滅していなかったんですのね」

「なら、かばんは一人じゃないんだね。良かった良かった」

「でも姿はフレンズそっくりだぜ?」


わいわい話しては、やいのやいのと質問してくる。4つの耳から音が流れてぐわんぐわんする…。ホントいらんデメリットつけよって…


「…おいお前。ちょっと話がある。ついてこい」


えっ?ライオンさんがリーダーボイスになった。何もしてないぞ?いきなりで王二人以外驚いてるし


「ライオン、そいつと勝負するのは私だぞ」


「話をするだけだ。お前達は二人の勝負を見ていてくれ。なぁに、そこまで時間はかからない」


「「「わ、分かりました…!」」」


「…コウ、大丈夫か?」


「…大丈夫だと思います。ちょっと行ってきますね」



*



「いや~悪いね~。こんな時に来るなんて、タイミングが悪かったねぇ~」


大将モードを解いて俺と向かい合う。その姿はまるでデカイ猫だ。…猫だったわ


皆と離れた場所まで連れてきて何を話そうと言うんだろう?部下の子達も置いてきたし、二人だけで話したいことなのか?


「ヘラジカね、あんな感じになったの最近なんだ。まぁ前から勝負好きなんだけどさ」


「にしても話聞かなさすぎじゃないですか?何かありました?」


おそらくはフォッサさんが言っていた虹色が関係しているとは思うんだけど。ただ戦いたいだけじゃないようにも見えたんだよね


「この前へいげんに黒セルリアンが出たんだけど、虹色のフレンズ?が倒したんだよね。平和になったのはいいんだけど、問題はその後だったんだ」


「その後?」


「そう。ヘラジカがそれに挑んでさ、負けたんだよ。野生解放も使ったのに。ビックリしたよ、あんなに強い子がいるなんて」


森の王でさえ太刀打ち出来なかったのか。伝説のけもの…その力は伝承通りってわけだ


「自分でセルリアンを倒せなかったこと、あれに負けたことで焦ってるんだと思うんだ。皆を守るために強くならなきゃってさ」


…その気持ちは分からなくもない。俺も似たようなことがあったから


「でも最近勝負勝負言っててさぁ~、私もリーダーだし?分かるんだけど、楽しく遊びたいんだよね。だからお願い、ヘラジカの頭を冷やして欲しいんだ」


「えっ?俺がですか?」


「だって君本気出したら凄く強そうなんだよねぇ~。私の野生の勘がいってるんだ、君にはあれとも戦える力があるんじゃないかって。それにヒトなんでしょ?いい案ないかな~って」


バリーさんといいこの子といい鋭すぎるんだけど。でも戦えても勝てなかったし、ヒトだけど作戦なんて思い付かないんだけど…


「お願い!終わったらへいげん特製ジャパリまんあげるから!今なら2つあるよ!」

「会場はどこですか?」


「…こっちだよ~(釣れるの速いね~)」



*



会場はヘラジカさん達がいつも特訓している場所…ではなく、そこから少し歩いたところ。ヘラジカさん達がいつもいる場所よりも広く、バスケットボールのコートくらいの大きさで、ちゃんと枠が分かるよう線が引いてある


キングコブラさんとヘラジカさんは勝負をしていたらしく、今決着がついたみたい。ヘラジカさんがパワー勝ちしたようだ


「大丈夫ですか?」


「ああ…。だが、私もまだまだだな…」


「だが強かった!またやろう!そして来たなコウ!勝負する気になったんだな!いざ尋常に…」


だから出会い頭に挑むのやめろ。ルールすら聞いてないんだぞこっちは。まさか少年漫画のように『どちらかが倒れるまで』じゃないよな?


「その前に、ルール説明に入りますわ!」


ちゃんとあって安心したよ俺は


【へいげんマスタールール3】

1:三回勝負←マッチ戦ってやつか

2:場外に足が出たら負け←相撲みたいだな

3:気絶したら即負け。続行なし←!?


ちょっと待て、気絶させるとかいう特殊勝利あるのかよ。積極的に狙う子はいなさそうだけど、無理しないようにってことか?そしてさりげなく一回じゃない。もうここは気にしないでおくか


「なお追加ルールとして、『試合開始から、ヘラジカ様が3分過ぎてもコウを場外に出せなかった場合、コウの勝ち』になりますわ」


「えっ?いいの?そんなのつけちゃって」


「無理にお願いしちゃったから、私がつけ加えてみたんだけど…」


ハシビロコウさんが考えてくれたのか。俺のことを考慮してくれたのだ、そのルールに甘えてしまおう。時計は…砂時計があるのね。確かに3分計れてる


「だけどこれ俺が逃げ回ったら勝つよね?」


「逃げ切れると思うならしてみるといい!私は絶対に逃がさんけどな!」


…まぁ、本人が納得してるならいいけどさ。このルール、落とし穴があるけどね


「よし、理解したな!では早速…」


「…ヘラジカさん。そんなんじゃ相手も乗り気にならないですよ。挑み方をもう少し考えてみましょうよ」


ジャパリまん貰えるから受けたけどさ、他の子にそれやるのはあまり感心しないなと思うわけですよ。手当たり次第はよくないぞ?


「分かった。じゃあお前が勝ったら一つ言うことを聞いてやろう。なんでも言え!」




──ん?




「それは俺が言ったことをやる、ということでいいんですか?」


「そういう認識でいいぞ。私は負けんからな!ハッハッハ!」


「では念のため確認します。?」


「だからそう言っただろう。私は早く戦いたくてウズウズしてるんだ!」


へぇ…なんでもね…。言質とったからね?皆も聞いていたしねぇ…。いいこと思い付いちゃった~♪


「…コウ、変なこと考えてないか?」


「いやぁ、ちょっと本気で頑張ろうと思っただけですよ?」←ゲス顔


「顔がそう言ってないぞ…?」


そんなことないですよ?でもそこまで言われたからには、気乗りはしないけど勝負しないと失礼ですよね?あくまで気乗りはしないけど。本当に気乗りはしないけど


でもさ…話を聞かない悪い子にはお仕置きが必要だよね?だから頑張るよ俺。人の知恵を見せてやろう!


「では…試合開始!ですぅー!」

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