第36話 ジャパリカフェ


「もう…むり…」ゼィ…ゼィ…


「お疲れ様です。はい、ジャパリまん」


「お水もちょうだい…」


あれから結局三人と何回も勝負した。結果一回も勝てなかった。尻尾を自在に扱いすぎじゃない?なんて強力な武器なんだろうか


三人とも俺の強さに不信感持ってるな…。普段の俺はこんなもんですよ?能力底上げもまだ上手く出来ないし。がっかりした顔しないでほしいなぁ


「ホントにゲートのセルリアンをコウが倒したの?」


「そのはずなんですが…どうやったんですか?」


「…おもいっきり物ぶん投げて石壊した」


『絶対嘘だ』って言いたげな顔してるな。ある意味間違ってはないんだよ?


「こいつにも事情があるんだ。あまり聞かないでやれ」


困っているとキングコブラさんがフォローしてくれた。納得してなさそうだけど、とりあえずこれでこの話はおしまいになった。王の説得力は凄いと思いました、まる



*



せっかくなのでカフェに行こうということになった。これくらいの寄り道は気にしたら負けである


フォッサさんには、『今さばんなにはネコ科の強者が集っているからいっぱい勝負出来るよ』と伝えたら凄い勢いで走っていった。いつからあんな感じになったか聞くとわりと最近らしい。警備の依頼の時に色々聞いたそうだ。また長が原因か


カフェにはジャガーさん、カワウソさん、キングコブラさんもついてくるみたい。大人数だけど楽しくなりそうだ


道中話をしていれば、あっという間にロープウェイ乗り場。早速乗るんだけど、ここで問題が一つ


「バイクどうするんだ?」


「他の子が乗ることはないだろうけど…セルリアンにでも壊されたら嫌だな…」


またコピーされたらそれこそ面倒になる。カモフラージュが出来る色でもないし、セルリアンに効くかもわからないし…


とか思っていたら、見張りをしてくれるという子が来てくれた


「オカピだぞ~♪」

「クジャクです!」

「タスマニアデビルだぞ~!」


…なんか見たことある登場シーンだ。いつもキングコブラさんやジャガーさんにお世話になっているから、そのお礼だそうだ。王の人脈…もとい、フレンズ脈は凄い。もう凄いっていう感想しかない


お礼をいい、お土産を持ってくることを約束してバイクを任せる


では…いざ、カフェにイクゾー!







「ふわああぁ!いらっしゃぁい!よぉこそぉ↑ジャパリカフェへ~!どうぞd」


「ごめんアルパカ、水とジャパリまんを先にちょうだい。紅茶は後でもらうから」


「…どうしたの~?」


店に駆け込んできた4人を不思議そうな顔をして眺める店主アルパカ。キングコブラが背負っているのは、フードを被ったフレンズ(?)だった。表情は見えないが、ぐったりしている様子はすぐにわかった


「あんれ~その子大丈夫~?」


「多分大丈夫。疲れてるだけだから」


「うぅ…足が…あしがぁ…」


「こいつ本当はバカなんじゃないか?(もう少しの辛抱だから頑張れ)」


建前と本音が逆に出てしまうくらいキングコブラは呆れていた。それに対してコウは悲しいことになにも言えなかった


簡単に言うと途中で疲れたのに男の意地で交代しなかった結果がこれである。頂上についた途端に動けなくなってしまったのだ


「ごめんなさい…ホントごめんなさい…」


「…帰り同じことしたら怒るからな」


「はい…無理はしません…」


出されたジャパリまんを頬張りながら、帰りに挽回するチャンスをくれた王を尊敬するコウであった







「改めて…ようこそ、ジャパリカフェへ」


挨拶をしてくれたのは、店主ではなく常連のトキさんとショウジョウトキさん。お店が忙しい時はカフェの手伝いをしているそうだ。今はアルパカさんが他のお客さんの対応をしているから、俺達に紅茶を持ってきてくれた


それにしても紅茶か…。あいつに付き合わされてよく飲んでたっけ。嫌でも思い出してしまうな…


「もしかして…紅茶嫌いだった…?」


トキさんがシュン…ってなってる。アルパカさんにも聞こえたみたいで悲しそうな表情を浮かべている。どうやら顔に出てたみたいだ。ごめんなさい違うんです、だからそんな顔しないで?


「いえ、好きですよ?頂きます」


テラス席から眺める景色と、出された紅茶の香りを楽しみつつ、一口…


「…美味しい…!凄く美味しいです!」


お世辞でもなんでもなく、こんなに上手に入れられるのかってくらい美味しい!俺が入れるよりよっぽど上手だ!悔しいけど教えてほしいくらいだ!


皆も同じ感想らしく、ジャパリまんを食べながら飲んでいる。俺もジャパリまんを食べて、飲んで、おいしさが加速する!


「本当!?よかった~!おかわりあるからねぇ~!」


「じゃあ、早速頂きます!」


飲むとホッとする味だ。アルパカさんの話し方と合わせておばあちゃん家にいるみたいな感覚になる。新たな実家が生まれてしまった



*



「そうだ、貴方ヒトのオスなのよね?」


トキさんが何かを期待するような目で聞いてきた。これは予測できる、歌のことだな。だが俺はそこまで歌に詳しくない。力になれるかはわからんぞ?


「デュエット、というものをしてみたいの」


デュエット…デュエット?一緒に歌うってこと?したことないの?ぺぱぷとは…あれはコラボか。ショウジョウトキさんとはしないの?


「『デュエット』ハ男女二重唱ヲ指スコトガ一般的ダヨ。因ミニ同性ノ二重唱ノコトハ『デュオ』トシテ区別サレルコトガ多イヨ」


男女で意味が違うのか。また一つ勉強になった。パークに男がいないのがここで響いてくるなんて…


正直、人前で歌うのは苦手だ。それに初対面の子の前とかマジできつい。ここは丁重にお断りを…


「ごめんトキさん、俺歌上手くないから…」


「そうなの?ヒトだからあの子みたいに上手だと思っていたのだけど…」


「ヒトも得意なこと色々あるからね」


得意なことは違うから、というワードの便利さがヤバい。これ言うだけで大抵の子は引き下がってくれるんじゃないか?困ったら積極的に使っていこう。これで今回も大丈夫…



「上手じゃなくても歌うことはできるんでしょ?なら出来るんじゃないかしら?」

「どうせなら3人でやってみたいんですけど!」



あれ?大丈夫じゃなかった。確かに一緒に歌うだけだったら下手でもいいのか。もしかして自分で自分の首しめた?


「歌うのもたのしーよね!」

「楽しみだな、コウの歌」

「のどにいい紅茶出したから、きっと上手に歌えるよ~」

「期待してます、コウさん」


周りから援護が…!また多数決か!いやまだだ!キングコブラさんの意見はきっと10人分ある!ここで味方についてくれれば…!



「私も聴きたいな、コウの歌声」←いい笑顔



1vs16でフレンズの勝ち!



…ちくしょう



*



「では、さっそく…」


『わたしはーーートーーーキーーー!

なかまをさがしてーーるーーー!

どこにいるーーのーーー、わたしのーーなかーまーーー!

あーあーなかーま…』


「「「「おおー!」」」」


パチパチパチ…と拍手が起こる。まずはトキさんがジャブを放つ。紅茶を飲んだおかげかいい歌声だ


続くショウジョウトキさんも同じような感じで歌った。こちらも結果は上々、皆感激してる


…ちょっと待って?デュエットってこうじゃないよ?なんで一緒に歌わないの?これ俺もやるはめになるのか?いやだいやだいやd



「次はコウね。どうぞ」←期待の眼差し



…あーもうヤケだ!やってやんよ!



『愛に♪気づいてください♪僕が♪抱き締めてあ・げ・る♪

窓に♪映る切なさは♪生まれ変わるメロディー♪』



どうだこのやろう。やってやったぞ!



「なかなか独特な歌声なのね。いいと思うわ」

「私の方が上手ですね!」ドヤァ…

「あはは!おもしろーい!」

「いいのか悪いのか…わからん…」


マジかよこの評価。カラオケの点数そこまで低くなかったんだけどな…おもしろいってなんだ?歌詞か?声か?


「なかなか上手だと私は思いました」

「私はいいと思うぞ。歌詞は別として」

「私もいいな~って思ったよ~」


半数OKだからまぁいいか…。あー緊張した…。でもこれで終わりでいいよね?



「じゃあ合わせてみましょう?」



終わりにしてくれなかった



*



只今紅茶をがぶ飲みし終わりました。どんだけ歌うのよ…のど潰れちゃう…


トキさんとショウジョウトキさんが合わせると、予想以上に綺麗な歌だった。紅茶凄い。ぺぱぷ超えがありえるぞこれ


まぁそれはそれとして


「ホント…壮大な景色だ…」


ここから見える景色、面白いだろー!といわんばかりの眺めだ。あの時見た時よりも、サンドスターの山がずっと近くにある。沈む夕日に照らされたそれに、心が奪われたかのように釘付けになる


「今日は鳥が多いねー!」


「噴火したらフレンズ化するかもしれないね」


「でも少し前に噴火したんでしょ?そんな頻繁にするものなの?」


「なくはないだろうが…そんなことは今までなかったな」


そう言われるとなんか起こりそうなんだよなぁ…。フラグが折れることを期待しよう…


「そういえば、あの子は今日は来ないね~」


「一緒じゃなかったわね。どうしたの?」


「別にいつも一緒ってわけじゃないんですけど!」


あの子?と聞くと、噴火の時カフェで新しいフレンズが生まれたらしい。その際にショウジョウトキさんを初めて見てすぐになついたそうだ。刷り込み?ってやつか。フレンズにも適用されるのか


「でも心配なんでしょう?」


「それは…そうなんですけど…」


「フヘヘ、ショウジョウトキが優しいのは知ってるからねぇ~」


アルパカさんの何気ないお褒めの言葉に、自慢の赤い羽根と同じくらい赤くなってる。そんなに照れることないのに


「どんな子なの?」


「それがね…」



「た、助けてー…」



っ、今の声…崖の方から!?いったい誰の…


「クロトキ!?どうしたの!?」


ショウジョウトキさんが猛スピードで飛んでいった…。クロトキ…その子が言ってたフレンズか。もしセルリアンに襲われているとしたら彼女も危険だ…!


皆も同じことを考えてたみたいだ。ここは戦闘出来るように剣を…!



「重くて…落ちるぅー…」バサバサッ…ドサッ


「へぁ!?」ズザー!



ショウジョウトキさんがずっこけた!?一体何が…



…なんだあのでっかいモノ



*



飛んできたクロトキさんが持っていたのは、大量の何かを包んだ風呂敷。見る限り凄く重そう。これ持って飛ぶとかサンドスター切れ不可避じゃないか?


そんなクロトキさんはショウジョウトキさんに説教されてる。『心配した』とか『無茶しないで』とか聞こえる。なんか自分に言われているみたいで気まずいので止めよう


「まぁまぁその辺にしといてあげなよ。 なに持ってきたの?」


「そういえば、この中身はなにかな~?」


風呂敷を取ると、そこにあったのは色とりどりの果物。見るからに新鮮で、とても甘そうな物だった


「普段お世話になってるから、そのお礼と思って、一日中集めてたの…」


「ふわぁ~!ありがとね~!うれしいなぁ」


「…そういうことなら、先に言ってほしいんですけど!でも心配したんですけど!」


「無事でよかったわ」


ショウジョウトキさんが説教をやめた。そんなこと聞いちゃったら怒れないよね。にしてもこの量を一人で…もしかしてパーク中飛び回ったんじゃないのか?


こんだけあるんだ、そのまま食べても美味しいだろうけど…カフェには電気設備があるから…


「コウ、もしかして…」


「ええ、キングコブラさん。ちょっと試してみたいことがあります。明日にしますけど」


「そうか…フフッ楽しみだ」


そう、紅茶に合うのはジャパリまんだけではない。カフェと名乗っているんだ、それくらいはあるはずだ



*



アルパカさんに泊まりたいと伝えると、『上の階に使ってない部屋があるからいいよ~』と快諾してくれたので、今日はもう寝てしまおう


トキさん達もたまに泊まっていくそうだ。もうカフェの店員になればいいんじゃないか?制服着ればきっと似合うよ?


さて!当たり前のようにみんなと同部屋だけど…まぁ寝れるだろう。明日が楽しみだ

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