第35話 じゃんぐるの王


「んん…朝か…って、あれ…?」


「スー…スー…」


あれから寝てしまったようだ。起きたらカバさんの寝顔が目の前にあった。意外とかわいい寝顔と、大きく開いた胸元のコンボがヤバい。朝から見ていいものじゃないぞこれ


起こすと色々まずそうなので、眠気を取るために近くにいたセルリアンを狩る。近くにはあの二人もいるからちょうどいい



*



一日の始まりはケモ要素の確認から始まる。今日はどちらもついていない。やったぜ


さて、皆起きたな。水場まで戻ってきたら他の子も起きてた。夜いなかったのが不思議だったのかクロさんが変な目で見てきた。別にいかがわしいことはしていませんよ?


朝ごはんを食べていたらヒョウさんとクロヒョウさんが報告に来てくれた。どうやらいつもの奴らしかいなかったらしい。本人曰く『暴れ足りんわー!』とのことなので、チーターさん達との姉妹バトルをするようだ。ルターさんとルビーさんはそれに付き合うみたい


「じゃあ、俺達もそろそろ行こうか」


「そうですね。そういえば、アードウルフさん達もじゃんぐるちほーに行くのでは?」


カフェに行くロープウェイはじゃんぐるちほーにある。いっそのこと一緒に行くのも有りかもしれないね


「それなんだけど、もう少しさばんなにいようかなって思ってね」


「色んなものをまた一緒に見よう、と話したんです」


二人の表情は明るかった。もう大丈夫、といわんばかりだ


「そっか。ただ気を付けてね、まだ油断は出来ないから」


「大丈夫。一緒ならどこだって行けるわ。それにやる時はやるのよ、この子」


おうおう言うねぇ、お熱いことで。アードウルフさん顔真っ赤ですぜ。これもう告白したようなものじゃないか?


「貴方も無理しちゃダメよ?」


「わかってますよ。それじゃあ…」


「あ、あの…コウさん」


「ん?なに?」


「本当に、ありがとうございました。また会えますよね?」


「もちろん。またね」


「はい…!」


三人に別れを告げ、クロさんとゲートに向かう。次はじゃんぐるちほー。もしかしたら、あの子達に会うかもしれないね



*



で、じゃんぐるちほーに来たわけなんだけど…



「ちょっとそこの貴方、勝負しない?」



いきなりからまれた。とても長い尻尾と声が特徴的なこの子は…


「あっごめん。わたしはフォッサ。今修行中でいろんなフレンズに声をかけているの」


そうそう、フォッサさん。大きいしっぽだろぉ~と自慢の尻尾をゆらゆら揺らしている。ホントに大きくて長いからつい目線が移ってしまう。それ邪魔にならない?


「しません。なんで俺に声をかけたの?」


「インドゾウが言ってたのよ。不思議な子に会ったって。聞いた姿と貴方が似ていたから声をかけたんだけど」


オーマイゴッド!噂しないでと言ったのに!てかバトル好きなキャラだったの貴女!?想像してなかったこんなの!


「フォッサハ、マダガスカル諸島最大ノ肉食獣デ生態系ノトップニ立ッテイルヨ。ソコカラ百獣ノ王トモ呼バレタリモシテイルヨ」


おっと解説が入った。この子も王なのか。なおさらなんで俺に勝負吹っ掛けているんだろう?


「わたしは百獣の王なんかじゃない!」


うおっビックリした!どうした急に!?


「所詮は井の中の蛙…。このままお飾りの王に甘んじているわけにはいかない。だからこそ、わたしは他の王に…強者たちに挑むの」


なるほど、確かにマダガスカルの中だけの王じゃ納得出来ないだろう。他にも強い子はたくさんいる。俺が出会った子達にもパークの上位っぽい子はいたし


あれ?てことは…


「なら、キングコブラさんにでも挑めばいいんじゃないの?」


「…挑みすぎて、断られたの」


oh…なんも言えない…。あのキングコブラさんがお願いきいてくれないとか相当なのでは?じゃんぐるで他に強い子は…


「そのインドゾウさんは?」

「ミナミコアリクイと出掛けたわ」


「ええっと…ジャガーさんいたよね?」

「カワウソと遊んでるわ」


「…他の子は?」

「やらないって断られた…」


どうやら皆に声をかけたが、戦うのが好きなフレンズがそこまで多い訳ではないらしい。のんびりしてそうだしね


他の案は…


「セルリアンはどうなの?」


「じゃんぐるにいたのは大体倒したの。黒い奴もみんなでね。最近小型も少なくて。安全なのはすごくいいんだけどね」


もう他のちほー行きなよ。へいげんをオススメするよ。あそこには王が二人いるからきっと相手してくれるよ。片方は保証しないけど


…ちょっと待って


「ゲートにいた門番セルリアンは戦わなかったの?」


「あれが黒セルリアンを放ってきたのよ。危ないからみんなで近づかないようにしたの」


黒セルリアン放てたのかよあれ。やっぱ部下が強いだけのダメ上司じゃねえか。でもじゃんぐるの小型も一緒に処理できるよう集めていたのは褒めてやろう


「そういえば、ゲートを通ってきたの?てことはもしかして、あのセルリアンを倒したの!?」


「そうだよ。みんなでたおs」

「そうなんです!コウさんが一人で倒したんです!凄かったんですよ!」


…え?クロさん何言っちゃってんの?それはちょっと語弊があるよ。そんなふうに言ったら…



「やっぱり貴方強いのね!勝負しましょう!一回だけでいいから!」



うわー目が輝いてる!すっごい跳ねてるよ!あぁ^~フォッサがぴょんぴょんするんじゃぁ^~


とか思ってる場合じゃない!


「とにかく、勝負はしません!」


「なんでよ!?」


「争いごとは好きじゃないんだ!」


「おーねーがーいー!いいじゃない減るもんじゃないんだし!」


俺の体力が減るわ!解放なんて使ってらんないよ!そんな声だしてもダメなものはダメ!あっちょっとバッグ引っ張らないで!肩ごともってかれるから!


「…なにをやっているんだ、フォッサ」


あっ…この声…!


「あっ。…久しぶりだな、コウ」



*



「よかった。無事に戻ってこれたんですね」


「お陰様でな。お前も無事でよかった」


久しぶりにあったのはキングコブラさん。あれからすぐに戻ってこれたらしい。なんでもスピードが速すぎて大変だったとか


「また無茶したんじゃないだろうな?」


「……してないですよ?」


「その沈黙はなんだ…。まったく、だから聞いたんだ、一人で大丈夫か、と…」ブツブツ


確かに遊園地とさばんなの件については、一緒にいた方が解決は速かったかもしれないけど…そんなのは結果論。何が起こるかわかんないからね


でもなんかプリプリしてない?子供がいじけてるみたいな感じがする。俺なんかした?心当たりがまったくないんだけど


「そっか~貴方がコウなのね。キングコブラがよく話してたのよ。凄い奴だったって」


「えっ?そうなんですか?」


「普段キリッとしてるのに、ロッジであったことを聞くとホント嬉しそうに…」


「フォッサ…それ以上言うと…!」


鋭い目で睨んだらフォッサさんが慌てて話をやめた。本人目の前にして語るのは流石に恥ずかしいのだろう。でも嬉しいな。料理と文字がそんなによかったなんて。今度また何か作ってあげよう


「この後はどうするんだ?」


「それなんですけど、バイクが通れる道を知りませんか?」


「アンイン橋なら通れるんじゃないか?」


えっ?あのジャンプして渡る橋?バイク持って渡れってこと?解放すれば出来そうだけどそんなことに力使いたくないよ?


「心配しているようだが大丈夫だ。とりあえずついてこい」


自信満々なキングコブラさんの後ろをついていく。フォッサさんもついてきた。まだ諦めていない顔してるけど勝負しないからね?



*



「ここが、アンイン橋だ」


俺達の目の前にあるのは、外の世界にあるような立派な吊り橋だった。横に二人並んでも通れ、フレンズが数人乗っても問題なさそうだ。実験で比較的重いフレンズが複数人乗ったが平気だったらしい←女の子やぞ


「アンイン橋じゃなくて『ネオ・ニューアンイン橋』じゃなかった?」


「それは却下されてただろう…」


なんでもプレーリーさんとビーバーさんと一緒に、あの子達が作った橋が壊れたため新しく作ったそうだ。その時に『ネオ』と『ニュー』どちらかをつけようとなったが、どっちもつけると言ったら周りに却下されたとのこと。もう新アンイン橋、略して新橋でいいじゃん


「あれ?これは…かざみどり?」


「ああそれね。博士たちが置いていってくれたの。風の向きと強さが分かるようにって」


なるほど、これで橋を渡るタイミングも分かりやすい。今はそこまで回っていないから、普通に渡っても問題なさそうだ


というわけで早速渡ってみると…凄いなこれ、まさに職人技だ。ちょっとやそっとじゃ壊れなさそうだ。揺れる時もあるけど、そこまで気にならない


「凄いですね…魔法みたい…」


「本当にね。魔法みたいだよ」


「確かに凄いわよね。手伝ったんだけど、殆ど二人で作っていたわ」


「あの速さは尊敬する。私には出来ないからな」



*



さて、向かいに渡ったわけなんだけど…


「なにこれおもしろーい!触っていい!?」


今度は二人組に捕まった。全てを楽しいに変換する程度の能力を持つ子と、それを見守る近所のお姉さんポジションの子。通称じゃんぐるコンビの…


「カワウソ、困ってるぞ。少し離れなよ」


「あっ!ごめんね!」


「別にいいよ。ゆっくり見ていってね」


コツメカワウソさんとジャガーさん。遊んでいたらいつの間にかここに戻ってきたようだ。朝早くからずっと遊んでたの?恐ろしい体力…


あっ、フォッサさんがジャガーさんの腕をつかんで勝負を挑んで…断られた。残念!


「ねぇねぇ、これはなに!?」


「これはバイク。乗り物だよ」


「バスみたいに動くの!?乗ってみたい!」


思った通りの反応だな。好奇心の塊のような彼女にはたまらないだろう。という事で…


バイク乗車体験会実施!そこの二人もどうぞ乗ってください!


「わたしはいいよ。カワウソを思う存分楽しませてくれない?」


「興味あるんでしょ~?我慢しなくていいんだよ~?」


「…じゃあ、少しだけ」


意外と折れるの速かったな。照れてる顔がかわいいね。いい顔いただきっ!


「照れてるジャガーかわいいね!」


カワウソさん意外と直球ストレートな物言いなのね。ジャガーさん顔真っ赤ですやんか




*




「もう一回!もう一回!」


「えぇ…?飽きないの…?」


「こんな楽しいの飽きないよ!」


数時間は乗ってる気がするんだけど…いったいどうやったら彼女は満足するのだろうか。クロさん寝てるし、結局ジャガーさんはフォッサさんと勝負してる。キングコブラさんが審判やってるよ


「ごめんカワウソさん。俺が疲れちゃった」


「そっかー。また今度乗せてね!」


バイクから降りると、カワウソさんはジャガーさんの元に駆け寄っていった。本当に姉妹みたいで微笑ましいが、勝負の最中なので見学しようか


「これはどう!?」

「なんの…!セイッ!」

「うわっ…!?」


ビターン!


「そこまで!」


決着がついたようだ。フォッサさんの負け。流石はジャガーさん、一本背負いで決めるなんて凄いな


「ジャガーハ中南米デ頂点捕食者ノ地位ニイテ、地表ダケジャナク樹上、水中マデ、大小問ワズアラユル動物ヲ食餌トスルヨ。名前ニハ『一突キデ殺ス者』トイウ意味ガアルヨ」


こっわ…。ブラックジャガーさんが一撃にこだわっていたのはここからか。頂点…ある意味この子も王なんじゃないか?じゃんぐるに王多くね?


「くそー…いいとこまでいったと思ったんだけどねー…」


「今日は危なかったけど、まだまだ負けないよ。私も最近鍛えてるんだ」


「…カワウソのために?」


「…そうだよ」


…?なんかあったのか?ジャガーさんが一瞬見せた眼は、何かを決意した眼だった。それを聞くのは…やめておこう。あまりいい事じゃ無さそうだし


「じゃあ次はコウとフォッサだな」


…はい?


「コウも強いのか。見ものだな」モグモグ


「おもしろそー!がんばってー!」モグモグ


「応援してます、コウさん」モグモグ


ちょっと!?どっから出したそのジャパリまん!クロさんいつの間にか起きてるし!キングコブラさんも何勝手に決めてるの!?


「その次はジャガーと、最後は私とだ」


対戦相手増えてるー!?


この状況…逃げることも断ることも不可能…!フォッサさんは…


「さぁやりましょ!楽しみにしてたんだから!」


…まぁ、そんな反応するよね


仕方がない…。いいだろう、!がっかりしないでよ!



「わかった…いくよ!」



「きなさい!」



うおおおおぉぉーー!!!



俺達の戦いは、これからだ!



応援ありがとうございました!この作者の次回作には期待しないでください!







いや終わんないからな!?打ちきりじゃないからな!?

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