第31話 はじまりの地


ボークラハカーソクシテイクタイヨウニー♪ノリコンデキミト♪ホラ


限界までー♪体中溢れ出すー♪大地に水を♪全てにピースをー♪MICRO SUNNY !!


懐かしい歌で爽やかに起きる男!コウ!


このゲーム好きだったなぁ。何周もしたよ…



*



ケモ耳は…消えてる。召喚条件はなんだ?サンドスター三日分?アローヘッド確認しなきゃ


おはようを言おうと思ったら近くにあの子はいなかった。どこ行ったんだろう?あんまり離れると危険なんだけど…探してみるか



ザッザッザッ…



おっ、いたいた…ん?誰かと話してる?そこにフレンズがいるのかな?ちょっと話し込んでる…。終わるまで待とうかな







「はい、はい。わかりました。では…」


彼が起きる前に連絡が出来てよかった。この場を見られたら面倒ですからね。しかしここまで信じてくれるなら演技なんてしなくても良かったかもしれません…


「おーい。大丈夫ー?」


ッ!?お、驚いた…起きたのですね…聞かれていないでしょうか…


「は、はい。他にもフレンズさんがいましたので、つい話し込んでしまいました…」


こんな嘘で大丈夫でしょうか…? 流石に怪しまれるかも…


「そっか。みんなと色々話すといいかもね。でも君は怪我人だから、あまり遠くに行かないように。飛べるまでは安静にしててね?」


大丈夫でした。しかし怒られてしまいましたね。心配してくれるのは嬉しいのですが…すみません、怪我なんてしてないんです…ちょっと罪悪感出てきました…


…いやいやいや…このヒトは危険人物(仮)なのですから、これくらいは仕方ないのです


「はい…すみませんでした…」


「無事ならいいんだ。ラッキーさんがジャパリまん持ってきてくれたから、これを食べたら出発しよう」







「…あれ?コウさん、それなんですか?」


「それとは?」


彼女が俺の後ろを指差す所を見ると、もふもふしたものがゆらゆらゆれている。捕まえようと体を動かすとそれも同じように回り、立ち上がると宙に浮いた



………………まさか、嘘でしょ?



「ラッキーさああああぁぁぁぁん!!!!」


「検索中…検索中…検索中…。該当ナs」


「やっぱり該当なしか!くそがっ!」


なんだってんだよ!なんで今さらになって耳だの尻尾だの…!うわめっちゃ動く。なんか意識しなくても動きそうなんですけど。見た感じこれも犬科っぽいけど…


蓄えられたサンドスターが漏れだしてる?害はないけどなんか変な感じ──


「──ん?」


「…」ジー


…デジャヴ。だが相手は怪我人だし、まだ不安だろうから…


「…触っていいよ」


「…いいんですか?」


「ジャパリまん食べ終わるまでだったら」


「…では、失礼します」



モフリ…モフリ…モフモフ



うあー、これも感覚がある…。今まで触る側だったけど皆こんな感じだったのかな…?見てよ彼女の緩みきった顔。俺もこんな顔してたんならとてもじゃないが見せられないよ



モフモフモフモフモフモフモフモフモフモフ………ピタッ…



「…もうそろそろいいのかな?」


「…」スースー


「…あれ?」


寝ちゃってる?そんなに気持ちよかったのかこの尻尾。見事に枕にしてますよ。しかしこれじゃあ動けないな…


「アッタカーイ…」モゾモゾ


…まぁ、たまにはいいか、こんなことも



*



「大丈夫そう?」


「大丈夫です。…すみません、長い時間寝てしまいました…」


「疲れが思ってたより溜まってたんだね。無理せず言ってね?」


少し頬を染めて彼女は頷く。よし、出発しよう。エンジンをかけ、いざ出陣!とばすぜ!


ラッキーさんと地図を見て場所を確認しといた。ここから一番近いちほーはさばんなだ。ただ通過するだけだと思ったけど、せっかくだから色々見ておこうかな


さばんなといえば、あの冒険の始まった、あの子達が出会った場所。今はどんなフレンズがいるのかな?




*




さばんなちほーに到着!結構速くついたな。日差しが強い…ソーラービームタメなしで撃てそうだ。エクスカリバーもタメなしで撃てないかな?無理?そうですか…


ここが、あの物語の…伝説の始まった場所。それまでにもお話があったから、過去から繋いだバトンを受け取った場所でもあるんだよな…なんか感動してきた



まぁ俺は過去のお話知らなかったけどな!



「あの…伝説って?」


「ああ!それって、さばんなちほー?」


「…?(なにいってんだこの人)」


…ごめんね、意味不明だよね。頭に?マーク浮かべてるよ…ここらへんはつっこまないで


バイクのスピードを緩めながら進んでいく。途中横切るフレンズをラッキーさんが解説をしながら、風を感じつつさばんなを満喫する


サバンナシマウマ、トムソンガゼル、セグロジャッカルにインパラ等々…


聞いたことある子より知らない子の方が多いね。当たり前と言えばそうなんだけど


でもみんなバイクを見て驚いてたな…まぁ自分の縄張りに変なものが入ってきたらそりゃ驚くよね




*




「さて、ここでちょっとQKー!」


今俺がいるのは、あの二人が休んだ木陰。しかし大きな木だな、影が二人以上いても隠してくれる


そして、ここにはなぜかテーブルのような物がある。きっと、ヒトがいた時の物なのだろう。その場所にヒトのフレンズが来たんだなぁ…とか、それっぽいことを考えつつ…


「そういえば、なんて呼べばいい?」


肝心なことを聞くのを忘れていた。そろそろ『ねぇ』とか『あのさ』とかじゃ失礼だと思うしね。俺にネーミングセンスはないから彼女に決めてもらいましょう


「そうですね…今は『クロ』と読んでください」


「わかったよ、クロさん」


全身黒いもんね。闇の力纏ってそうで凄くカッコいいと思います




*




木陰にいるにしてもなかなかの暑さなので、水飲み場に移動しよう。あそこにも木陰はありそうだし、なにより水分補給は大切だ


くっついて乗る関係上、汗がヤバい。干からびる、なんてことはないだろうけど…


「あら、貴方…もしかして、コウ?」


おっと?懐かしい声で呼ばれた気がするぞ


「あっ!チーターさんにキングチーターさん!久しぶり…ってほどでもないか」


「まぁそうなんだけど…こんにちは。さばんなに来てたのね」


「図書館に行くついでみたいな感じだけどね。せっかくだからと思って」


そういえばさばんなに帰るって言ってたっけ。ロッジを出発して数日経ってるからね。彼女達のスピードならついてるか


「あら?それ動くようになったのね」


チーターさんがバイクを見る。動いているのを見てないから不思議がるのは当たり前か。軽く説明して…



*



「へぇ…スピードが出るのね…」



やっべ…キングチーターさんに火がついたっぽい。これはレースになる予感…



「せっかくだから勝負しない?」



フラグ回収はえーよホセ。フレンズ化したチーターに短距離でバイクが勝てるとは思えないんだけど…別にいいか


「あの水飲み場まででもいい?」


「かまわないわ。ではさっそく…」


クロさんを後ろに乗せてのレースは危険なので、キングチーターさんとの一騎討ち。チーターさんにはクロさんを背負ってもらうことになった。本人曰くトレーニングになるとか


ではスタート合図をお願いします



「いちについて…よーい…ドンッ!」



「ライディングデュエル!アクセラレーション!」←めっちゃ大きな声+バイクのエンジン音



「へっ!?な、なに!?」←驚いて体硬直



俺の叫びとバイクに惑わされたようだな!でも別に妨害しようとした訳ではないです!気合い入れただけです!他意はないです!よってこれはセーフ!



「待ちなさい!今の説明してもらうわよ!」



待つと言われて待つ俺ではない!このまま勝たせてもらうぜ!ヒャッハー!




*




「…で?さっきのはなに?」


「その…あれは気合い入れただけでして…」


ただいま正座中です…。なんかここ数日してる気がする。俺の足がそろそろ静電気を帯びるよ?さわったらまひしちゃうよ?いいの?


コーナーで差をつけたら勝てると思ったのに…。意外とでこぼこ道が多くてスピードが出せなかった。てかキングチーターさんショートカット的なもの使ってませんでした?ずるですよずる


「何がずるいって?」


「なんでもないです。俺のも外では(一部では)有名な掛け声なんです。それを言っただけなんです。妨害とか考えてませんでした」


「…そういうことにしといてあげるわ」


なんとか許しをもらえた。あぶないあぶない


これでもし勝ってたら大変なことになっていたかもしれない。変なこと言うけど負けてよかった


…クロさんとチーターさんが冷たい目で見ているのは気のせいだと思いたい



「コウって尻尾あったのね」ヒソヒソ

「今日初めて出たらしいです。丸まってて可愛いですね」ヒソヒソ

「確かに。でも反省してるイヌの子みたいだわ」ヒソヒソ



気のせいだった。なんか違う目で見られていた。耳出てなくてよかった。出てたら本当に反省犬だよこれ



*



水飲み場まで来たのはいいけど、問題がある


「ラッキーさん、ここの水はヒトがそのまま飲んでも平気なの?」


そう、水質問題である。フレンズたちは飲んでいたし大丈夫なのだろうけど…耐性がフレンズとは違う気がするから、俺が飲んでいいのかは心配だ


てかカバさんが水浴びしていた水って大丈夫なのか?フレンズだからセーフ?綺麗なお姉さんキャラだからセーフ?俺的にはアウトなんだけど…


「サンドスターノ影響デ水質ハ保タレテイルヨ。コウガ飲ンデモ問題ハナイヨ」


スキャンが完了したようだ。問題ない…か。少しだけ飲んでいこうかな。熱中症にでもなったら危険だからね


「そういえばフレンズが少ないわね」

「いつもは場所取りになるくらいなのにね」


なんか似たようなセリフ聞いたことあるような…もしかしてこの後の展開は…!



「だーれー?」ザバーン!



キター!さばんなちほーのおか…お姉さん的な存在、カバさん!ならここで…!



「うわぁ!た、たぅえ…!」



わざとらしくビビったふりをしてみる。さぁて、どんな反応がくるかな?



「失礼、水浴びをしてましたの」



予想通りのセリフが来た。やったぜ。



「カバ、他のフレンズは?」


「最近セルリアンが出てるでしょう?あまり出歩かないように注意してるのよ」


「倒しても倒しても出てくるからね」


ここも多いのか…ハンターだけじゃ足りないんじゃないの?さばんなで強い子って他にいたっけ?


「ところで…あなた達は?」


おっと、自己紹介をしなくては。何回やるんだこのくだり



*



「あなたもヒトなんですのね」


やっぱり驚いてる。これもあと何回やるんだろうか。まぁ驚いた顔がみんな違うから面白いけどね


「でも尻尾があるけれど?」

「かくかくしまうま」

「貴方も大変なのね」


よし伝わった


流石に自分が何なのか分かっているためか質問責めはなかった。解答用意していたのに少し残念である


「そうだ、セルリアンについて聞きたいんですけど」


「水場の近くにはいないのだけど…じゃんぐるちほーに行くゲートに、変なセルリアンがいると聞きましたわ」


「変なセルリアン?」


「ええ。二体いて、まるでとうせんぼうしてるかのようにその場から動かないの。幸い近寄らなければ襲ってこないらしいわ」


つまりゲートの門番ってことか。運よく寝てるタイミングとかないかな?うちの門番よく寝てたし。それに守ってても空飛んだら意味ないのでは?


「上を通ろうとするとセルリアンを放ってくるらしいの。おかげでトリの子にも被害が出ているわ」


あーそういう…。そこのセルリアンも知能があるのか…また面倒な…


ここから図書館への最短ルートは、じゃんぐるちほーに向かうためのゲートを通ること。遠回りは面倒だし、ほっとくのもあれだし、やるしかないね


「カバさん、俺が見てきますよ」


「あなた大丈夫?見た感じ戦えそうにないけど…。危なくなったら、すぐに逃げるんですのよ?戦うならちゃんと石を狙って。水も飲んでいきなさい。それから…」


「行ってきます」


カバさんの注意をほどほどに聞きつつゲートに向かう。チーター姉妹がついてきてくれたので安心だ


さて…どんな奴がいるのかな?

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