第32話 さばんな作戦会議


あらすじ:カバさんからの情報で、ゲートにいるセルリアンを確認しにきたよ





ゲートについたわけなんだけど…確かにいるわ、変なセルリアン。頭がセルリアンなんだけど、首から下はヒトの形をしている。被り物してるみたいだ。色が赤いな…通常の3倍の速さで動くの?


背中からは二体が対になるように、右と左に羽がはえてる。合体したら完全体になりそうだ


その隣には箱のようなセルリアン…あれ空気洗浄機か?なかなか固そうだな…。何でそんなものがそこに?


とりあえず、様子を見てみて──



「な、なんですかあなたたちは…!?」



──あれ?あそこにいるのフレンズじゃね?



『ここを通りたくば、力を見せよ!』ジリッ…


「えっ…やだっやめてください…!」


『ここを通りたくば、勇気を見せよ!』ジリッ



ガバァ!



「ひっ…きゃああぁぁぁ!」



まずいますいまずい!襲われている!でも襲い方がまんま不審人物!食べるというのが意味深に聞こえてしまう!



「なにしてんだこの変態がぁー!!!!!」



山彦スイッチオン!音質弄りバージョン!



【おはよーございます!!!】←背筋を引っ掻き回すような音



『ぐおおおぉぉ…!』

『ぐわああぁぁ…!』



よっしゃひるんだ!



「なに…これ!」

「うるさ…!」

「うっ…!?」



でも皆もひるんでる!俺しか動けん!俺も結構きついけど、今のうちに…!



「──野生解放!」ブゥン!



速攻で片付ける!スピードMAXで一気に切りつける!



「オラァ!」



ズバンッ!ゴトッ×2



よし、どっちも真っ二つ!これで…!



『なんと…!「力」と「勇気」…見事なり!だが終わりではない!』カクカク


『試練はまだ残っている!』プルプル



ひいぃー!?真っ二つにしたのに動くのかよ!?きもちわるっ!



もうとどめをさして撤退を──




『ここを通りたくば、知恵を見せよ!』バッ!




──なっ…三体目…!?一体どこから!?


まさか橋の外に隠れていたのか!?しかも爆音が効いていないのか動きが鈍ってない…!


なんだよ知恵を見せよって!この知恵の塊の音楽プレイヤーが目に入らぬかっ!



…えっ?俺の知恵じゃない?そうですか…



…って!そんなことはどうでもよくて!さっさと片付けなきゃ…



『グムムムム…!』ボコボコボコッ!×3



中型セルリアン!?こいつらもいたのか!まったく面倒な奴等が…!


初期に出会ったのと大きさは同じくらいだが形が違うな…。なんていったらいいんだろう、頭が透明なキューブで守られていて、そこからブロックが連なってできている足のようなものが一本、触腕が左右にはえていて、手の先が鋭くなっている


こいつも…なんか見たことあるような形だ。最近のセルリアンそんなんばっかだな…


キューブの中に石が見えるな。まずあれを壊さないといけない…!



『グガガ!』

『ゴアア!』

『カロロロ!』


「くっ…!?」



なかなか重い攻撃をしてくる…!この威力、攻撃に特化している可能性がある…!


なら腕は無視だ!石だけを狙う!



「これで…どうだっ!」



ピシッ…!



『クオオォ…』ピキピキ…パリンッ



かった!?全力で振りきったのに表面が少し割れただけ!?黒セルリアンと同じくらいかそれ以上の硬さだ…!


だが壊せない訳じゃない。連続攻撃で石を…!



『ギャギャギャギャギャ!』



グアッ!



「ひっ…!」



っ…まずい!フレンズに攻撃が…!



「この…やめろぉ!」



ズバッ!パキィン…!



腕は簡単に切れた。硬いのは頭だけか…!


一体に集中すると他がその子を襲うのか…。意外としっかりしてやがる…!



『クルルルルル…』キラキラキラ…ピシィ!



もうどっちも回復した…!?いったいどこからサンドスター・ロウを補給しているんだ!?それらしいものなんてないぞ…!?


それに特性ぼうおんなのか、どいつもこいつも山彦ばくおんが効かない…!あいつらは後にしてせめて最初の二体だけでも…!



『今こそ我らの力を見せる時!いくぞ!』

『不本意だが!』

『仕方ない!』



「今度は何を……!?」



なっ…三体目が、切られた二体を取り込んだ…!?



ギュルルルル…ドスンッ!




『融合完了!これが我らの真の姿!セル・エンジェルだ!』ピキーンッ!




…エンジェルじゃねぇ!ケンタウロスとペガサスが合体したみたいな見た目をしている!でも顔はセルリアンのまま!バランスわるっ!



『さぁ、トライフォースを持ちて挑んでこい!』



さっきからペラペラしゃべりやがって…!お前もなんかのアトラクションだったのか!?それになんだよトライフォースって!『知恵』『勇気』『力』ってそういうことか!?



『ゴガアアァ!!』



シュババッ!



「なっ…!?」



ドガガガガンッ!



「ガハッ…!」



ゲホッ…くそっ…隙間なく攻撃してきた…。ここまで精密な連携攻撃が出来るのか…。思ったよりもダメージが大きい…


仕方ない、一旦この子を連れて離れるか。周りにもセルリアンがいるかもしれないから、ここにいたら危険すぎる。一人なら別だが、守りながら三体同時はリスクが高い。戦ってる間にこの子が食われるかもしれない…


「ちょっと…ごめんね…」


「えっ…?うわわわわ!?」


抱き上げて入口に戻る。予想が当たっていればいいんだけど…



『またの挑戦、待っているぞ!』



やっぱり、あいつらはその場から動かない。何が目的でこんなことをしているのかわからないが、しっかり門番の役割している所がなんかムカつくな…



*



皆と合流し、情報を整理する。分かったことは以下のこと


・その場から動かず、追ってこない

・中型は再生が速く、力も強いが硬いのは頭だけ

・それぞれに石があるため、遊園地のようにはいかない


今あのセルリアンはゲートの中央に陣取り、何かをしようともせずその場にいるだけ。本当に門番やってんだな…


ペガサス型…あれが本体だったらどんなに楽だったか。油断もしていないし音も対策をしている。まるで、遊園地の一件が知らされていたかのように…


もう一度突っ込んでみるか?攻撃特化ならいけるんじゃないか?解放制限時間もまだ大丈夫そうだ


「またあのセルリアンに挑むの?」


「幸い回復する時間はもらえた。次は油断しない。速攻で片をつければ…」


「さっき出来なかったじゃないの。本当に大丈夫?」


そう言われるとなんとも言えない…。中型との複数戦は経験がない。それに、あのペガサス型の能力がまったく分からない。中型があの再生能力を持つ以上、同じかそれ以上に厄介な能力を持っている可能性はある


「あの…ちょっといいですか…?」


「どうしたのクロさん?」


「あれなんですけど…」


クロさんが指差したのは、ゲートにある空気洗浄機型のセルリアン。そういえばあれはなんだろう?


「あれがどうかしたの?」


「コウさんが戦っているときに、あれにセルリアンが入っていったんです。そしたら、サンドスターが出てきたように見えたんです」


…それはつまり、セルリアンを砕いてサンドスター・ロウに変換したってことか!?そんなことがあり得るのか…?


…いや、現にやっているんだろう。あの回復力の説明がこれでつく


「ありがとうクロさん、貴重な情報だよ」


まずはあれを壊さないといけないな。空気洗浄機というか、かき氷機というか…ホントなんでさばんなちほーにあるんだか…


あれを壊すのはいいんだけど、その後だ


橋の外に、材料となるセルリアンが待機しているということだ。形はいつもの小型だから倒すだけだったら危険はないだろう。だがペガサスと同じく融合するとしたら面倒だ。キングセルリアンにならないことを祈ろう



「あの…」


「…ん?」


「あなたたちは、いったい…?」



…ごめん、君のことすっかり忘れてた



*



彼女はアードウルフ。フレンズ化して間もないらしい。どうやら友達と待ち合わせをしてカフェにいく予定だったみたい


…アードウルフ?この子確か…気のせいか?


「目印としてゲートの近くにいたんですけど…あれがいて…」


「いきなり襲ってきた、と」


「はい…。あ、あの…ごめんなさい…」


「気を付けて。あれは危険なものなの」


どうやらあのような特殊なセルリアンに会ったことがないようだ。あんなのにしょっちゅう会う方が異常かもしれないが



…あれ?俺そんなのといっぱい会ってね?



「ここからどうしますか?」


「なんとかして誘導出来ないかしら?」


「あれはあそこから動かなそうだけど…」


せめて回復薬小型セルリアンをあそこから離したい。何かないか?何か…


誘導…?そうか!あれならいけるんじゃないか?こっちはこれでやってみるか…!


あいつらはどうしようか。ここからぶっぱしてもいいんだけど…その後は満足に戦えない。無理するとまた暴走する可能性がある。使うなら最後の切り札だ


もっと効率のいい技はないか…?石だけを狙うなら、もっと小さくて威力がそのままのものを使えればいいんだけど…何か投げつけるとか…?


「コウ?聞いてる?」


「えっ?ご、ごめん、聞いてなかった…」


「はぁ…。一旦アードウルフをカバの所に連れていきましょう?あそこなら安全だし」


「そうだね。君はそれでいい?」


「は、はい。ありがとう、ございます…」



*



「なるほど、それで戻ってきたのね」


カバさんに事情を説明して、アードウルフさんを保護してもらった。『ジャパリパークの掟は自分の力で生きること』なんて言っているけど、ちゃんと助けてくれるカバさんマジおk…お姉さん


「作戦は何かあるの?」


「それなんですけど、夜まで待とうかなと思いまして」


「夜まで?今から倒すんじゃないの?」


「いえ、夜の方が得策です」


作戦はこうだ。まず、夜になったら俺が中型とペガサスの相手をしている間に、懐中電灯を使って小型を誘導する。その隙に、キングチーターさんが空気洗浄機を倒す。明るいものを追いかける、という特性は小型にしか効かないだろうけど、今回はそれでいい


その後は…流れでお願いします


「まずは安全に回復封じをする。これでトライフォースはクリアだ」


「けれど、貴方一人で大丈夫?」(トライフォースってなに?)


「大丈夫。飛んで撹乱するし、あれを倒すのは俺の役目だからね」


といっても、この作戦は皆にもリスクがある。誘導した小型がどのくらいの数なのか、ペガサスの能力がなんなのか。不安要素はたくさん残っているけど…


「私がこれを持っていればいいんですね?」


「クロさん、大丈夫?」


「これくらいなら大丈夫ですよ。小さいのも倒せます」


「危なくなったらすぐに逃げるのよ?」


「私達もすぐに倒すわ。頑張りましょう」


皆を信じて、やりとげよう


むしろ心配なのは俺の方。最悪エクスカリバーで全てなぎはらってやればいいか…


「カバさんは他のフレンズさんに注意をして下さい。戦う子は無理をしない程度に。ゲートにはあまり近づかないように」


「ええ、よく言っておくわ」



*



門番はどうにかするとして、あとは夜まで待つんだけど…


正直、あいつらが本当に動かないのかが分からない。今まではそうだったらしいけど、俺の介入によって何かが変わった可能性もある


見張りをしておくか?だが他の場所に特殊なセルリアンがいるかどうかも確かめておきたい。新種が暴れているかもしれないし…もう少し応援がほしいけど…


「なんや、面倒なことになっとるな」

「そこのフレンズ、大丈夫か?」


ジャパリパークで関西弁?だ、だ、誰だろ~


振り返るとそこにいたのは4人のフレンズ。4人が一緒というか、ペアが二組って感じだな。どちらもどことなく似ている…また姉妹なのか?


「うちはヒョウ。こっちは双子の妹のクロヒョウ。よろしゅうな!」

「よろしくな~」

「私はマルタタイガー。彼女はゴールデンタビータイガーだ」

「ルターとルビーと呼んでください。よろしくお願いします」


大阪の雰囲気と宝塚の雰囲気を纏ってらっしゃる。特に後半二人、キラキラオーラヤバいね。こんな種類のトラもいたんだ


「俺はコウ、よろしく」


「よろしく。それで何か悩んでいたけど、いったいどうしたんだ?」


「それがね…」


先程のセルリアンについての説明を軽くすると、どうやら彼女達もあれには不満があったらしい


「みんなの邪魔をするなんて許せないよね。君の作戦に協力させてくれないか?」


「うちらもなかなかやるんやで?このしなやかボディー!惚れ惚れするやろ!?」


「お姉ちゃん、今それ関係ないやん?」


独特な子達だな…。けど、協力してくれるならありがたい。ヒョウにトラだ。絶対強いだろうし、この性格なら知り合いも多そうだ。他の子にも声をかけてもらおう


「なら、お願いしてもいいかな?」


「任しとき!うちらはなにをするんや?」


「ヒョウさんとクロヒョウさんは見廻りをお願い。もしかしたら特殊なセルリアンが他にいるかもしれない。いたらフレンズさん達と倒してほしいんだ」


「お安いご用や!やったるで!」


そう伝えると『んじゃ行ってくるで!』と言って走っていった。クロヒョウさんがフォロー役なんだね。行動が速いなぁ。でもこれで周りの様子は問題なし


「私達はなにをすればいいですか?」


「ルターさんとルビーさんはあいつらの見張りをして、夜になったら誘導したセルリアンを倒してください。数が多いと思うので気をつけてくださいね」


「大丈夫だ。この前もセルリアンで玉遊びをしたし」


「ルターさん、それくらいは普通ですから、今回は慎重にいきましょう?」


普通…普通ってなんだっけ?わかんないや!



*



二人にはゲートの前でチーターさん達と待機してもらっている。久しぶりにあったみたいで、話の花が咲いている


…ネコ科ばっかりじゃね?この作戦。別に俺の趣味じゃないよ?ネコは好きだけど


チームにゃんにゃん…伝説のチームにしよう


後は、俺自身の問題だけなんだけど…


「コウさん、大丈夫ですか?」


クロさんが心配した顔で話しかけてきた。どうやら思い詰めた顔をしていたらしい。不安にさせてしまった


「大丈夫…とは言い切れないかな。まあなんとかするさ」


トリシュ三発くらい使えればいいのになぁ…


「…あれ?クロさん、それは?」


クロさんの手にはキラキラした丸いものが握られている。太陽の光を反射させ、よりいっそう綺麗に映る


「これ、ジャパリコインって言うらしいですよ。綺麗ですよね。私、こういうもの好きなんです」


やっぱりジャパリコインか。本人曰く遊園地の近くで拾ったらしい。ヒトがよくいた所に落ちてるのかな?ツチノコさん連れていけば凄い良い顔見れそう。俺も記念にほしいな



──まてよ?コイン?



そうか…この手があった!バッグの中には…よし!十分な数がある!これで上手くやってみせる!


「クロさんごめん!ちょっと練習してくる!何かあったら避難してね!」


「えっ?れ、練習って?」


「夜までには戻るから!」ブオォン!


「あっ!ちょっ、ちょっと!」


なんとか形にしてやる!首を洗って待ってろよセルリアンども!首あるか分かんないけどな!

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