第2話 情報あつめ(?)
眩しい日差しが差し込み、目を覚ます
蒸し暑さが襲いかかる
起きたらそこは…昨日の夜に見た景色と同じだった
ちくしょー!夢じゃなかったー!落ち着け、こんなときこそ情報をまとめるんだ、俺!
1つ:ここは俺がいた世界ではない
2つ:異世界に飛んだ可能性がある
3つ:そしてここがジャパリパークの可能性がある
今 週 の み っ つ ノ ル マ 達 成
…嘘やろ?嘘だと誰かいってくれ…
グウゥ~…
…とりあえず、顔洗って食料確保だな…。バッグの中には…
しゃけおにぎりがあったよ!でかした!
…一人でなにしてんだろうな
*
今何時くらいなんだろ?お昼くらいかな?
さて、昨日急いで離れたからここがどこかぜんぜんわからん…
あの場から結構な距離を移動したみたいだから、まずは情報収集をしようか
だが、目立つのは得策ではないだろう。もし怪しまれたら、ここにはいられなくなってしまう…
…向こうに帰りたいと、俺は思っているのか?
ここにいたいと、思っているのか?
消えてしまいたいと、昨日思っていたのに?
…あー!やめやめ!とりあえず、向こうのことは一旦忘れよう!どうしたいかも情報が集まってからだ!その方が精神的に少し楽!そうと決まれば…
影から話し声を拾うしかあるまい!そうしよう!
…十分不審者だって?気にするな!
まずは周りを確認して…
──ウワアアアアァァァ!
…また悲鳴!?今度はどっからだ!?
─
『グモモモモ…』
「なっなんだよぉ!あっちいけよぉ!」
「ジ、ジョフは大人ですから、こんなことでは怯まないでち!」
「なら手伝ってほしいかも?」
「でも~この数は~ちょっと面倒だね~」
セルリアンと戦っている(?)のは、ミナミコアリクイ、ジョフロイネコ、オセロット、インドゾウの四人。小型のセルリアンが多く、たいした驚異ではないのだが…
「あのセルリアン?小さいセルリアン産んでる?」
「そうね~あれを倒さないときりがなさそうね~」
インドゾウの目線の先には、中型のセルリアンが川の側に立っていた。川に触手を突っ込み、水を吸い上げながら体を大きくしている
そしてある程度の大きさになったとき、中央の蓋が開き、小型のセルリアンが数体飛び出し、元の大きさに戻る
中型セルリアンの形は、まるでドラム式洗濯機のようだ
「石は見えた?」
「見えたけど~体内にあるよね~あれ」
「じゃあお腹の中に突っ込まなきゃいけないってこと!?」
「それすごくこわいでち…」
「それに?あのセルリアンがまだなにか仕掛けてくるかもしれないし?」
「おかしな動きは今のところないけど…ジャガーやキングコブラとか近くにいればよかったんだけどね~」
そう、ここはじゃんぐるちほー。けものの中でも強い子が多いのだ。だが、不幸にも突破力が特に強い子は今いない。インドゾウも強い部類にはいるのだが…
(…アリクイちゃん大丈夫かしら?せっかく一緒にお出かけできたのに、こんなことになるなんて)
ミナミコアリクイは戦いが得意ではない。故に守りながらの戦いになるため、インドゾウはなかなか攻めることができなかった
弱点である石は、蓋が開いたときにちらっと見えた程度。一か八かで突っ込むのは危険だ
そして、オセロットもジョフロイネコをチラ見して考える
(ジョフもガチガチだし?木を登って上からいく?体内にあるんじゃ意味ない?外側削ってもだめそう?)
そもそも水で体積を変える相手である。少し削ったところで直ぐに治ってしまうだろう
小さいセルリアンをもぐら叩きのように割りながら、二人は反撃のチャンスをうかがっていた
─
現在木の上に登って観察しています、どうも俺です
うわー、なんだあれ…青い絨毯かよ…。地面ほとんど見えてないじゃん…。あれ全部セルリアンか?石がキラキラ光ってますやんか?
あの子達多分長いこと戦ってるよな…フレンズのスタミナは凄いな
おっと、情報情報っと…
見た限り、あの中型が小型を産み出してるようだね。あれのせいできりがないし、なかなか攻められないと
しかし…洗濯機みたいな形してるな。センタクリアン…語呂悪いな、やめよう
あんなのもコピーすんの?川の水すごい勢いで吸い上げてるし。石は…外側にはなさそうだな
しかし…
あんなのがいるということは、洗濯機もあるんだな!?もしかしたら他にも家電製品があるかもしれない!ぜひ探して使いたい!
なら、そのためにまずやることは…
「野生解放!」
─
「あたしだって、やってやんよぅ!」
「アリクイちゃん、無理はしないようにね」
「ジョフだってやるでち!うりゃー!」
「おおー?やるじゃん?」
目の前の光景に慣れてきたのか、小さいセルリアンを叩いていく小さな二人。パカァーンパカァーンという音がリズムよく鳴っている。これに合わせて素敵な躍りができそうだ
「…インドゾウ?踊らないでね?」
「流石にそんな余裕ないわ~」
『こんなんじゃなかったら踊りたいけど』、と考え事をしながらセルリアンを叩くが、流石に疲れてきたのか息が少しあがってきている。少しずつサンドスターを奪われているのかもしれない
(トリの子がいたなら、私を運んで、上から落として潰せそうなんだけど…どうすれば)
「インドゾウ、なんだろ、あれ?」
「えっ?」
オセロットが空を見上げ、指をさす
そこに見えたのは──
(覚悟はよいか…愚か者めぇぇぇ!)
──チョップするようなポーズで落ちてくる、不審者がいた
そして、そのままセルリアンめがけて…
ズバァッ!パカァーンッ!
ここで禊が決まったァァァァァ!
WINNER IS 不審者!!
─
「うわぁ!?なんでち!?」
「ほえー?すっごい?」
「あら~?見事にまっぷたつね~」
「感心してないで周りの倒そうよぅ!」
その子の言うとおりだ。まずは掃除をしなくちゃな。これくらいの相手なら力を押さえても大丈夫だろう。解除して…よし
剣出せるかな…よっ!
ブウンッ!
おお、出せた出せた。いくぜ…
くらえ格ゲー三種の神器!
波動拳!←剣投げつけるだけ
昇龍拳!←ただ殴るだけ
竜巻旋風脚!←ただ蹴るだけ
…師匠はできたが俺にはまだできないからな。気合い入れてるだけだ!
「あれ?さっきと雰囲気変わった?」
「どっちでもいいわ~。さくっとやっちゃいましょ~」
「よし…威嚇のポーズゥ!」
「それ意味ないでち!もう!」
そこからは速かった。端からパカンパカンとどんどん砕けていった
ああ~セルリアンの割れる音~~!鼻歌歌いたくなってしまいますな~!
*
「あー疲れたよぉー」
「お疲れ様~、はいジャパリまん。みんなもね~」
「あなたもどうぞ?」
「…いや、俺は…」
どうしよう…離れるタイミングを逃した…時の任意効果だったか…(決闘者並感)
…なにバカなこと考えてんだ。しかもがっつり会話になりそうだし…
しかし、野生解放…でいいか、この際。これにはエネルギーを使うからなぁ…。補給するのに食事はすごく効率いいんだよな
それに…美味しそうだし、ジャパリまん
「…いかなきゃいけないところg」グウゥ~…
「…お腹は正直でち。ほらあげるでち」
「…いいの?」
「ジョフは大人ですから、お礼はちゃんとするでち」
「…そっか。ありがとう」
~ 少女食事中 ~
「で?君の名は?」
「なんで顔を隠しているでち?」
「その毛皮があればあたしも迫力あるように見えるかなぁ?」
「すごい食べっぷりね~。もう一個いる~?」
まってまって、いっぺんにやめて。聖徳太子じゃないのよ俺は。あ、ジャパリまんはもらいます。ありがとうございます
「えっと…1つめ、俺のことは、“ コウ ”って呼んでくれ」
「わかった?よろしく、コウ?」
「2つめ、顔を見られるのが恥ずかしいのと、日差しにあんまり強くないから」
本当は姿そのものをみられたくないだけなんだけど…面倒なことになりそうだし嘘をついておく
「なるほど、わかったでち」
納得してくれた。いい子だなぁ
「3つめ、着けてもあんまり変わんないと思うよ」
ハロウィンの仮装みたいになりそうだし
「そっかぁ…残念だなぁ…」
そもそもこういうのあるのかな?あとそのままの君でいて?可愛いから
さて…
「えっと…こっちも質問とかいいかな?」
「いいわよ~」
「ありがとう。まず、俺に会ったことはあんまり言わないでほしいんだ」
「どうして?」
「えっと…噂されると恥ずかしいし…」
「…? よくわかんないけど、それがいいならそうするよぉ」
「ありがとう。次に、ここはどこ?」
「どこって…ジャパリパークでち」
あー…やっぱりそーなのかー…
「もしかして、この前の噴火で生まれた?」
「噴火?」
「ほら、あの山だよぅ」
少し移動して、アリクイの指差す方を見る。すると…
「うわぁ~…すごいなぁ…」
どんなものか知ってはいたが、やはり生で見ると迫力が違う
すごくきれいだ。山頂のあれ、全部サンドスターなんだよな…頭の中で音楽が流れそう
てか最近噴火あったんだ、俺の知らないフレンズもいっぱいいそうだ
「で、君はなんのフレンズ?縄張りは?得意なことは?なんであんなに強いの?」
ちょっ…一気にきた。結構ぐいぐいくるなこの子。ちょっと顔近くないですか?
「オセロット。コウが困ってるでち」
「私たちの自己紹介がまだだしね~」
「そうだった?ごめんね?」
「ま、まあいいけどさ…」
さて、自己紹介をしてもらったが、この中で知らなかったのはジョフロイネコ。もし出来たら調べてみよう
「それと、なんのフレンズかはわかんないんだ。だからさっきの質問には答えられないかな(大嘘)」
「あら、そうなの?」
「なら、図書館にいくといいよぅ」
「行けば、教えてくれるかも?」
そこ疑問系なの?お兄さん不安だよ
「どっちに向かえばいい?」
「この道真っ直ぐ行けばじゃんぐるちほーは出られるから、そこからはまた違うフレンズが案内してくれるはずよ~」
「そっか。ありがとう」
「こっちこそありがとう?おかげで助かった?また来てね?」
「そうだね…また」
「あっ待って。これ」
「これ、ジャパリまん?4つも?」
「感謝の気持ち。これくらいしかないけど」
「十分すぎるよ。ホントにありがとね」
「今度は一緒にあそぶでち!」
─
「行っちゃったでち」
「最初見たときは不気味だったけど?話すと優しそうな感じ?」
「そうだったねぇ。きっといい動物なんだろうねぇ」
「うーん…」
「どうしたのインドゾウ?」
「あの子、落ちてきた時と一緒に戦っていた時とで雰囲気違うと言ってたじゃない?」
「そうだっけ?」
「言ったのオセロットでち…」
「それで、落ちてきた時にちらっと見えたのよ、羽みたいなものが」
「じゃあ、トリの子ってこと?」
「まぁ、見間違いかもしれないけどね~」
─
こうして、俺はみんなに別れを告げてじゃんぐるちほーを後にした。次の目標は図書館だ
…とでも思ったか!違うね!
予想だと、図書館にはあの二人がいるはずだ。そうなると十中八九あれを頼まれるだろう。もしかしたらその場に固定させられるかもしれん…それはダメだ!
もっと情報を集めなければ…。ヒトがいた痕跡がある重要な場所に行けば、なにか手がかりがあるかもしれない
ヒトの出入りがあった場所と言えば…
あそこに行ってみよう、遊園地に
────────────────────
※コウがじゃんぐるちほーで目覚めた同時刻
ヒグマ、キンシコウ、リカオンの三人は図書館を訪れていた
彼女達はここ、ジャパリパークのセルリアンハンターだ。今日はセルリアンのことについての情報収集をするため、島の長である博士、助手に会いに来た…のだが…
「博士ー、助手ー、いるかー?」
「…返事がないですね。寝ているのでしょうか?」
「珍しく留守にしているんですかね?」
「参ったな…」
その二人が見当たらない。中に入り、探してみるがやはりいなかった。仕方がないので、パトロールに戻ろうとすると…
「今日こそはやってやるのですよ、助手!」
「その意気です!博士!」
「…で、でもやっぱり少し怖いのです…」
「私も一緒にやりますから。流石にヒグマにいつまでも頼ってはいられません」
「…その通りですね」
図書館の裏から声が聞こえてきた。三人は声のした方へ向かう。そこには、虫眼鏡と紙を持った二人が調理場にいた。そして、なぜか影から見ている三人
(ハハーン?料理にでも挑戦しているのか?それもあの材料…カレーを作るのか。日々成長しているんだなぁ二人も。
てか自覚あるなら料理で呼び出すのはもう少し押さえてくれ…)
と、心の中で愚痴を言いつつ見守るヒグマ。その姿はまさしく成長を見守る母親そのもの…ヒグママである
「誰がヒグママだ」
「あれ?声に出てました?」
「ハッキリ聞こえたぞ、リカオン。この後のトレーニング量二倍にしてやろうか?」
「うげっ…オーダーきついですよ…」
「まあまあいいじゃないですか。それより声を掛けましょうよ」
「全く…おーい!博士ー!助手ー!」
「「!?」」ビクッ!
今まさに火をおこそうと集中していた二人は、いきなり声を掛けられたためスゴく驚いていた。博士にいたっては少し細くなったように見える
「い、いきなり大きな声を出すのはやめるのですよ!」
「手元が狂ったらどうするのですか!?」
「ごめんごめん。まぁ、火がつく前でよかったじゃないか」
「よくないのです!」
「心臓に悪いのですよ!」
どうやら怒らせてしまった様子。こうなると少し面倒なのをヒグマは知っている。ということで…
「カレー作るから許してくれ。なっ?」
「むっ…。仕方ないですね、許してやるのです」
「たくさん作るのですよ?」
「ハイハイ。二人とも手伝ってくれ」
「いいですよ。久しぶりに食べたいですし」
「オーダー、了解です」
長はチョロかったのだった
~ 少女料理中 ~
「それで、今日はどうしたのですか?」
自分のカレーをよそいながら、博士は私に話しかける
「そうそう、セルリアンについて聞きたいんだが」
「セルリアン…最近、大きい個体の目撃が相次いでいるそうですね」
「流石にあの時のようなやつは見てないけどな」
「あの時…黒セルリアンですね」
「ああ、だが油断は出来ないけどな」
あの時…かばんを助けるためにみんなで戦った超大型セルリアン。結果的にあいつらは助かったが、それでも一度食われたことに変わりはない
今度は、誰も食われないようにしないと…。もっと、強くならないと…!
「暗い顔をしないでほしいのです」
「えっ…?」
「あの時はみんな無事で、かばんも助かった。それでよかったじゃないですか。それに…」
「お前はいつもみんなのために頑張っているのですよ。みんな感謝しているのです。もちろん我々も」
「…!」
…まるで考えていることがわかったみたいだな…。でも…やっぱり、なんだかんだ長なんだな
「…ありがt」
「それにそんな顔されたらカレーが不味くなるのです」
「そっちが本音だな!?感動を返せ!」
~ 少女食事中 ~
「さて、セルリアンの何について聞きたいのですか?」
「そうだった、それが目的で来たんだった」
「ヒグマさんったら…。ゴホンッ、…大きい個体以外に、変わった形のものを見かけた、というのをよく聞くんです」
「変わった形とは?」
「なんでも、動物の姿のもの、角が生えたもの、遊園地にあった乗り物に似たもの、色が景色に溶け込んでいたもの、などを見かけたそうです」
「他のハンターのおかげで、まだ大事には至ってないそうです。進化しているとなると危険ですが…あり得るのでしょうか?」
「ふむ…セルリアンは輝きを奪う、とも言われています。不思議ではないですが…遊園地にセルリアンが出入りしていた可能性はありますね」
「そうなると、あの周辺のハンターに伝えておきましょう」
「確かサーベルタイガーがいましたね」
「そうだな…今度警戒を強くするよう言っておく」
「頼みましたよ」
「それと、大事なことなんだが…」
「なんですか?」
「──フレンズ型のセルリアンは、パークにいたことがあるのか?」
「…確かに、過去にはフレンズ型のセルリアンはいたそうなのですが」
「こんなことを聞くということは、目撃者がいる、と?」
「セルリアンかどうかはわからんが、フレンズとも言えるのかもわかんないそうで」
「どういうことですか?」
「フードを被ってて、マフラーもしていたそうなんですよ」
「見間違いではないのですか?それか毛皮が取れることを知ったフレンズが渡したとか」
「いや、それはないですね。近くにいたキリンさん達に聞きましたがそんな事は知らなかったと言ってましたし」
「…だとすると、フレンズを模したセルリアンの可能性はありますね。いろいろ詰め込んでそうですが」
「…なんにせよ、警戒するに越したことはないですね」
~ 少女お片付け中 ~
食事も終わり、最近のパトロールの報告もすんだヒグマ一行。日が沈んできたため、博士の『泊まっていくのです』という言葉に甘えることにした
「明日はどこから調査しますか?」
「そうだな…まずは遊園地に向かおう」
「…また朝からハードですね」
「嫌か?」
「そんな事ないですよーハハハ」
「…留守番しとくか?」
「それは嫌です。二人について行きます」
「ならいい。今日はもう寝てしまおう」
「そうですね。おやすみなさい」
「おやすみなさーい」
「ああ、お休み」
二人の寝顔を見て、ヒグマは今日聞いた情報を頭の中で整理する
(フレンズ型のセルリアン…もし、本当にいたら、私は躊躇なく倒せるのだろうか…。いや、倒さないといけない。皆を…この二人を、守るために)
そう思いながら、ヒグマも床につくのだった
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