招かれざれる客って感じ
一番年上は、子どもというには大きすぎるだろうかという年頃、これは気の強そうな顔をした娘ドワーフである。
そのスカートの裾にぶら下がるようにしているのは、まだ年端もいかない幼い男の子ドワーフで、見た目から言って、どうやらこれが末っ子だろう。
おさげのドワーフが、ぴょこんと飛び上がってマーリアの手を引いた。
「ねえねえ、お父さんが帰ってくるまで、ウチで待ってるといいよ!」
老婆もそれに同意する。
「そうだね、ここで待たせてもらうといいよ」
マーリアは、自分たちが歓迎さるのだと信じて疑わなかった。
なにしろ、目の前の小さなドワーフの少女は人懐っこい笑顔で自分を見上げているのだし、ここまで案内してくれた老婆はすでに帰ろうと踵を返している。
この状況が覆されるとは、誰も思わないだろう。
しかし、響き渡ったのは長女ドワーフの凛とした声。
「入らないで!」
マーリアも、そして彼女の後ろにいたマストゥたちも、全員が凍り付いたように足を止めた。
長女ドワーフはさらに手のひらを突き出して拒絶を示す。
「この家に入らないで!」
おさげドワーフは、これに不服の声をあげた。
「お姉ちゃん、何でそんな意地悪言うの!」
「意地悪じゃないわ。お父様が留守なのに、素性の知れない旅人を家にあげるなんて、危ないでしょ」
「危なくないよ、いい人だよ!」
「そうかしら、どう見ても怪しいんだけど……特にそこの、おっぱいの大きなおばさんとか」
これは、マーリアにとっては初めての敗北であった。
別に「おばさん」と呼ばれたことがショックなのではない。
子供というのは年上の女性を容赦なくおばさん呼ばわりするものだし、子供と接し慣れているマーリアがこの程度のことで揺らぐはずがないのだ。
彼女がショックを受けたのは、『子供』からの拒絶――。
マーリアには、たとえ初めて顔を合わせた子供でも、秒で懐かれてしまうという特技がある。
おそらくは優しい顔立ちと、そして豊かな胸が母性を感じさせるから――孤児院へ連れてこられた子供と、ものの数分で打ち解けてしまう。
だから、おさげ髪のドワーフ娘のように友好的であるのが『子供』だと、そう思い込んでいた節がある。
マーリアは少しべそをかいて、マストゥに耳打ちした。
「ねえ、マストゥ、何とかしてよ」
「なんとかって……」
マストゥは生まれながらのガキ大将、自分を慕ってついてくる弟分の面倒を見るのは慣れているが、やはりこうした反抗的な子供の扱いには慣れていない。
つまり、役立たずなのである。
こうした場面で意外な能力を見せたのは、エドゥだった。
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