そしてエドゥは悩み始める


 マーリアは悪びれることさえなく、しれっと言い放つ。


「だって、あなたたち、なんか信用できないんだもの」


 この言葉に真っ先に同意したのはエドゥ。


「あ~、わかるわかる、お兄ちゃんって、いつも余計なことをしてマーリアを怒らせていたもん、信用ないよね」


 この言葉に、キッシーが者すごくあきれきった顔をした。


「いや、拙者が思うに、お主も信用できない一味でござるよ?」


「ええっ、何で! 僕、べつにマーリアからの信用を無くすようなこと、何にもしてないのに?」


「そんなことを言ったら、拙者などもっと何もしてござらぬよ。しかし、拙者のことも信用できぬというのでござろう?」


 話を向けられたマーリアは、小生意気に鼻先をあげて、腕を組んだ。


「そうね、あなたは、見た目がなんだか胡散臭い」


「ひどい言われようでござる」


 キッシーは背負っていたベースを前に回し、その弦をベヨオオオオンと弾く。


「ま、拙者やヴィシャスどのは新参者ゆえ、信用しろというほうが無理でござるかな」


「そうね」


「しかし、子供時代を共に過ごした友人すら信頼できぬとは、ちと厳しすぎではござらぬか?」


「子供時代を共に過ごしたからこそ信頼できないの! 私たちは友人っていうよりは兄弟みたいなものだから、私はこの三人がどれだけいたずらっ子で、反抗的だったかを知っているわけなのよ。特にお兄ちゃんなんか……」


 マーリアがハッと口をふさぐ。

 だが、吐いてしまった言葉は呑み込めない。


 マストゥが少し驚いたように目を見張った。


「へえ、その呼び方、久しぶりだ」


 マーリアは飛び跳ねるようにして地団太を踏んだ。


「違うから! 本当の兄弟じゃないし!」


「それでも昔はさ、『お兄ちゃん、お兄ちゃん』って俺のあとをついて回っていたじゃないか」


「子供じゃないし! マーリア、もう、子供じゃないし!」


 子供らしからぬ胸元はバインバインと揺れる。

 だが顔を真っ赤にして手足を振り回す所業は全くの駄々っ子で。


「ともかく、私もついていくから! 絶対についていくんだから!」


 マストゥは少し肩をすくめ、ヴィシャスを見た。


「ま、こいつは言い出したらきかない性格でさ、悪いけど、少しだけこいつのわがままに付き合ってやってくれないか?」


「私はかまわないが……」


 このやり取りが気に入らなかったか、マーリアが胸を揺らして地団太を踏む。


「そうやってお兄ちゃんぶるのやめて! あと、あんたたちひっつきすぎ!」


 サムライベーシストことキッシーは、何かを悟ったようだ。

 ベヨイイイインとベースをつま弾いて、簡単な節回しをつけてつぶやく。


「複雑なりきは乙女心~」


「そこ、変な歌うたわないで!」


「はいはい、でござるよ」


 こうして、マーリアが一行に加わることになったわけなのだが……。

 エドゥだけは、浮かない顔をしていた。

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