愛憎ラップバトル



 俺はパパパン、パパパンと小気味よく手拍子を打つ。


 立ち上がる客たち。

 誰もが軽く肩を揺らしてリズムを刻んでいる。


 そして始まるヒップでポップなラップ。

 客は思い思いに体を揺らして「フー」と合いの手を入れる。


♪ yeah カモン

 お前マジ勝手。

 考えてるの家庭?

 今の段階暫定?

まって?

 未来の安定のための過程。

 この先の予定

 未だまだ未定?

 酩酊、してんの?

 しっかりして?おいぇ


♪ブー


 これに対して、ページもラップで返す。


♪ イェイェイェ チェケ

 へい

 俺の道は俺が決める当たり前

 いい加減進めよお前も

 気前、

 よく、

 してやってただろ手前(てめぇ)

 いい加減しまえ?

 構えっていう甘え?

 建前だよ今までの愛情の出前


 ページと女房が額をぶつけ合うようにして睨み合う。

 俺はとりあえず「チェケ」と言った。

 それからシアターを解く。


 とたんに、ページの女房が金切り声をあげた。


「よくわかった、出て行きな!」


 ページはそんな女房を睨みつけたまま前掛けを外す。

 それを勢いよく床に叩きつけてそれっきり。


「行こうぜ、ブラザー」


 ふいと顔を背けた後は、もう二度と、ページは振り返らなかった。

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