第3話「こんな時の為に・・・」

 

 召喚陣の上で膝をついた黒装束の男はこう言う




「拙者、下忍ともう」


「相良さんまだその設定やってたんですか?」


「せめて最後待て言わせて・・・」




 言葉を遮った男は輝く青い鎧を着て宝剣ともいえる大剣を担いだ10人の女性が見れば10人はイケメンと言うであろうイケメン勇者であった。


「佐賀根くんか他のみんなは?」


「いない、と言うか今回は僕の魔力を使って相良さんを呼ばせてもらった」




 厄介ごとのフラグがビンビンである。




「拒否権は・・・無いよな」


「ああ、あと3日ほどでこの王都も落ちる」


「詰んでる・・・なぜそうなる前に『広域破壊娘ジェノザウラー』や『殲滅者デストロイヤー』あと『無敵の盾イージス』呼ばなかったんだ?」


「こつこつみんな呼んで巻き返してたんだが先月まとめて別のとこに召喚された・・・」


「あちゃー呼んだ方も可哀想だが・・・そうだ『召喚眼鏡』を呼べば「もう試したがなぜか召喚できない」そっすか・・・現状尻に火がついてて俺呼んだって訳か・・・」




 魔王の首一個じゃどうしようもないかと策を考える・・・




「情報が足りない、敵の兵力は?」


「獣王軍二千が城門前に陣取ってて」


「それくらいならお前だけで「その後ろに竜王軍3万、そして本隊である魔王軍20万だ」・・・おぅじーざす」


「こっちの「ほぼ負傷兵で義勇兵が弓を撃っている」ガチ詰みじゃねーか・・・」


「だから『忍者キミ』を呼ばせてもらった、無双しようにも物資も足りないからな」


「こっちの『倉庫』当てにしてるのかよ・・・勇者も儲かるだろうに・・・まぁこういうときの備蓄だ、薬、食料、武器、他に何が要る?」


「備蓄しようとすると毎回簒奪を疑われてできないんだよ、疲労回復と魔力回復をありったけここに出してくれ、呼べるだけ援軍みんなを呼ぶ」




 ガチャガチャとポーションの瓶が詰まった箱が積み上げられていく、佐賀根は迷うことなく何本か飲み干し、魔法陣に手を加え始めた。




「どこから・・・ぉ?城と町の地図も用意してあるか準備良いな、んじゃ医療所っぽいとこから回ってくる」




 そう言うと忍者は姿を消した。



 ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆



「医療所はここか?」


「治療所だ」


「ハイハイ、で必要なものは」


「全部だ、ポーションも包帯も消毒も人手も足りない」


「じゃあ人手以外出しとくから使ってくれ」


「使ってくれってお前どこから・・・


 おい動けるやつは手伝え、ポーションが来たぞ!」




 その後教会や衛兵詰所、城門近くで治療している者たちにポーションなどを配っていく。


 ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


 城にある軍の駐屯地に着くとそこには積み上げられた死体があった。


「これじゃ疫病やグールの素だな・・・」


「遺体を燃やすよりも油が有れば敵に投げつけ、火の魔法が使えるなら敵に向かって撃つわい」


 道端で倒れている爺、意外とアグレッシブである・・・魔力回復を渡すとすぐさま飲み、「ん」と手を出す・・・もっと寄越せってか・・・持てるだけ渡すと爺は城門の方に走っていった、どうやら有言実行らしい。




 どうするかしばらく悩み・・・




『土遁』




 そう唱えると死体の山が地面に飲み込まれていく。地面が落ち着くのを待ち、武器や防具、弓矢を置いていく、宝物庫などにも寄ってみたが・・・ぉぉぅ




 ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆




「どうだ?」


「山下君と志摩さんは呼べた、山下君は前線に志摩さんは教会に向かってもらった」


「また微妙なやつを・・・まだいける?」


「もうギブ」


「上級ポーション何本か置いとくから『聖騎士山下』と『がっかり聖女志摩』連れて獣王の方頼むわ」


「相良さんは?」


「後ろから削っていく」


「本隊に襲撃が有ったら竜王軍が来るでしょうし、獣王も引いてそっち行くかもしれませんから気を付けてくださいね」


「まぁそっちの邪魔にならんようにするよ」と忍者は消える。




「・・・普通は死なない様にする、とか必ず戻るなんでしょうけど」




 ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆




「『隠密』『ミラージュコロイド』『光学迷彩』『認識障害』『気配遮断』『魔力遮断』『ステルス』っとこんなもんかな」




 魔王軍の背後から近寄り中央の魔王のいる・・・デカい玉座を付けた車のような物に近づき・・・




「『土遁』『土遁』『土遁』『土遁』『土遁』『土遁』『土遁』『土遁』『土遁』『土遁』おまけの

『土遁』」




 魔王軍のあちこちから悲鳴が上がり兵が飲み込まれていく。




「大規模な土魔法か、人間どもめ悪あがきを!うぉあ」




 玉座を・・・もう車でいいか、車も飲み込まれ始めた、勢いが止まった慣性のついた状態で立ち上がったわけだからそりゃ転ぶな、鼻血出てるし・・・




「あんたが魔王さんかい?」


「き・・・きしゃま勇者か?」(((((((噛んだ・・・))))))


「フッ、勇者ではない!忍者だ!」


「ふ、ふざけるな!死ねぇ!」


「アグレッシブな魔王だな、よっと、すこし・・・話を・・・」


「貴様はブン話をブンするために!!ブンブン流血させるのかあああああブンブンブン


「止まら、ないと、話もおっと、出来ないだろうが『影縛り』!」


「闇魔法が魔王に効くががががが」((((((効いたんだ))))))


「だから話を聞けってああ・・・もうめんど「魔王様ぁぁぁぁぁぁ今お助けします!」」




 全長100mはありそうな竜王が降ってきた・・・魔王の車の上にである・・・大参事だ、しかも竜王軍もやってきている。


 あれじゃ助けじゃなく止めトドメだな・・・




 魔王は・・・うん土遁に見事埋まってるね。




 竜王にも『影縫い』流石にデカくて片足しか縫えなかったが十分。


「『風神、雷神』からーの『土遁』『土遁』『土遁』『土遁』『土遁』『土遁』『土遁』『土遁』『土遁』『土遁』おまけで『風神、雷神』」




 空に飛んでた竜王軍も風神の風で上手く飛べない中、雷神の雷の嵐で落ちていく、そして竜王共々土遁に飲まれていく。




「こっちは終わったな、獣王軍残ってるな・・・佐賀根くんたちに任せるか、大盤振る舞いしすぎて『倉庫』の中身・・・・あ




 輜重隊まで全部地面の下だ・・・勿体無いことをした」




 その様子を見た町の方から勝鬨が上がり、次に喜び合う人々の声が聞こえる。


 ぉ、獣王軍も逃げ出した。












「で、佐賀根くんこれからどうするの?」


「うわ・・・もう次の召喚ですか?すいませんが国の立て直しにお金が足りなさそうなので置いてってください、鋳造しなおします」


「まぁしょうがない慣れた。金は国庫?みたいなとこ見て驚いてくれ」


「パンパンの刑っすか」


「まぁ正統派勇者くんはがんばってくれたまへ」




 足元の召喚陣が輝き忍者を包み込む。








◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆








 召喚陣の上で膝をついた黒装束の男はこう言う




「拙者、下忍と・・・って駄女神じゃないか、また何かやらかしたんですか?」


『駄・・・』




 とぅーびぃーこんてにゅー




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