第11話 決着

体育祭前半戦の結果は芳しくなかった。一位玄武、125pt。二位青龍112pt、三位朱雀98pt、四位白虎93pt。ビリではなかったものの前半だけで一位に30pt近く差をつけられた。しかも最下位の白虎とも僅差だ。

中間発表を聞いて肩を落とす自軍に、大したことじゃないと言った。午後の種目は団体競技ばかりだ。もともとおれたちの狙いはそっちだろう?おれたちの戦いはこれからだ。

それを聞いて大西先輩が笑った。打ち切られそうだなおいと言って笑った。

「昼飯食ったら部室集合な」

リレー終わりに大西先輩が言った。みんなでマーチングバンド見ようぜ、部室からの方が見やすいからと。うちの学校のマーチングバンドは人気が高い。体育祭では午後の競技の前に毎年、文化祭でも曲目を少し変えて演奏する。キャパシティの大きい第一体育館で日に二度演奏されるにもかかわらず行列ができるほどだ。

中西先輩が同意してそれは決定事項になった。

「小西?どこ行くんだ?」

「部室。応援合戦までには戻る」

「遅れんなよ副将」

「おー」

向井と手塚に答えて第二視聴覚室の扉を開ける。三年の三人と佐倉がそこにいた。

「平田は?」

「保健室だってー。レナととまっちゃんは実行委員」

佐倉が答える。保健室。渕崎のところか。

そうこうしているうちにうちの学校のイベント名物、吹奏楽部によるマーチングバンドが始まった。

何曲かのメドレー。曲名は知らないが聞いたことがあるものが多い。あ、これは知ってるな。威風堂々だ。

「やっぱりかっこいいねー。あの衣装も見栄えがする」

「楓先生すげえ張り切ってるな」

「さっきの部対抗リレー、超悔しがってたよ。文化部では毎年一位なのに都々逸部に負けたって」

「半分野球部だからな」

平田と同じことを言った。負けるわけにはいかないだろと。

また曲が切り替わる。これも知ってる。

「ミッションインポッシブル!」

佐倉が曲名を口にして、演奏と共に口ずさむ。ダン、ダンダンダン。耳に残るリズム。陣形が演奏に合わせて目まぐるしく変わり、リズム隊がそれを盛り上げる。しばらくそれに見惚れていたおれたちの沈黙を破ったのは大西先輩ののんびりとした声だった。

「ミッションインポッシブルといえば中西だよな」

「え?夜のミッション遂行中みたいなことですか」

「オヤジかお前は」

大西先輩がおれの発言を笑う。

「じゃあなんですか。まさかなんでもできるとかそういう……?」

「いや、インポだから」

「誰がインポだ」

「中西先輩がインポ……?!」

「ええええ中西インポなの?!てゆーかなんで大西がそれを知ってるの?!やっぱり深い仲なん……!!」

「うるせえよインポインポ言うな」

中西先輩が女子二人をたしなめる。しかし止まる気配はない。

「なるほど……なんでもできる生徒会長の弱味はこんなところに……」

「しまった、敵だったらそれをネタに手を抜けとゆするところなのに今回は味方だ!むしろうちのボスだ!!」

「むしろ小西の口をふさぐべきですね?」

佐倉がこちらを向く。

「そんな手で勝ってもな」

つーかインポとかマジかよ。嘘だろ。半信半疑で中西先輩の顔を見ればいつも通り余裕ありげに笑っていて、なんだやっぱり嘘だなと確信した。大西先輩の真意はともかく。

「二葉ーーーー!!」

と、ミッションインポッシブルの音楽をかき消す怒声と共に第二視聴覚室の扉が開いた。全員でそちらを見る。

「あら栗原先生どうしたんですか。レナならいませんよ」

笹谷は変な服を着てるせいでいつも栗原に怒られている。

「今日は笹谷じゃない、二葉!なんだこの本は!!」

栗原の手にあったのは、さっき借り物競走で二葉さんが差し出した「薄い本」だった。

「あっ、先生それ読んだんですか?どうでした?」

「どうでしたじゃない!!こんな破廉恥な本を学校に持って来るとはなんだ!」

「やっぱり読んだんですね?!きゃーー!!」

「きゃーじゃない!これは没収するからな!!」

「はい、どうぞ!!くまなく読んでぜひ感想を!!」

「アホかーーーー!!!」

顔を真っ赤にして怒鳴る。栗原があんな怒るなんて中身どんななんだ。破廉恥ってことはエロいのか。

「だいたいお前らはなんだ、飯は各教室で食えと言ってるだろう。わざわざ部員で集まって、今日は体育祭だぞ!敵と一緒に飯食ってどうする!」

「だってここからだとマーチングバンド見やすいんですもん」

「他の場所でも見れるだろうが!中西、お前までなんだ!勝つ気はあるんだろうな?!」

「そりゃー、もう。優勝しますよ玄武は」

「じゃあもう下りろ、集合時間になるぞ!」

「そうですね、ちょうど曲も終わったし」

ミッションインポッシブルが終わって、校舎から拍手の音が聞こえる。最後の曲に入るところでタイムオーバー。応援合戦に出るおれたちは集合時間だ。

「じゃ、先に行くから」

あとよろしく、と佐倉に伝える。中西先輩と二人、第二視聴覚室を後にした。

「練習したんですか?」

並んで歩きながら聞いた。ストラックアウトのこと。制球の正確さはブランクを感じなかった。

「したよ。お前が全力でって言うから」

まったくお前らは、と言った。

お前ら。たぶん、おれと卜部のこと。

「……卜部はどうしたかったんでしょうね」

「お節介なんだよあいつは。お前と同じ」

言われて、ちょっとムッとした。この人は大事なことを言わない。おれたち後輩は真意を知りたくて、余計なことを言いたくなる。お節介のひとつもしたくなる。

「それは先輩がいけないんだと思います」

「うるせえよ」

口を出すな、と言ってるように聞こえた。事実、たぶんそうだった。

仕方ないから口をつぐむ。上手く言葉に出来ないことばかりだ。もっと気のきいた言葉を返せればいいのに、と思った。


午後の第一種目、応援合戦。各軍の応援団員、総勢四~五十名による息の合った群舞が名物の見せ場だ。得点にはならないものの各軍毎年気合いを入れて趣向を凝らす。持ち時間は五分ずつ。衣装は自由だが、大将と副将は伝統として引き継がれている各軍色の丈の長い学ランを着る。

「似合うじゃん」

「小萩さんも」

朱雀の赤い長ランは青空に映える。

応援合戦は中間発表の得点の下位から始まる。まずは白虎。続いて朱雀、青龍、玄武。

一番手の白虎軍が静かに入場し、生徒達の控える観客席を正面にずらりと並んだ。太めの黒いパンツに白い法被を羽織り、男子は腹、女子は胸から下をさらしで覆っている。一番前の中央に立った応援団員の三年が、ドン、と鳴らされた太鼓の音を合図に声を上げた。

「白虎軍の勝利を願ってーー!!」

ドン、もう一度太鼓が鳴る。

一糸乱れず並んだ白虎軍の群れ。太鼓の音と共にそれがザッと割れて、真ん中の花道を白い長ランの瀬尾さんと卜部が歩いてくる。

「きゃー!卜部さーーん!」

黄色い声が飛ぶ。しかし卜部の視線は揺るがない。瀬尾さんと共に目の前を見据えている。

「行くよ小西」

だが彼らの群舞をゆっくり見ることはできない。 次はおれたちの番だ。金木犀の香る校庭の端、入場門前でスタンバイ。

残念なことに瀬尾さんと卜部はおれたちの待機位置からは見えなかった。正面から見ることはできない。だが後ろから見ても白虎軍の統制はかなりきっちりと取れていた。両手を胸の前で合掌し、一斉に腕を上げ、右、左、行進して両手を水平に開く、その繰り返し。ひとつひとつの動作は決して派手ではない。しかし太鼓の音に合わせて頻繁に陣形を変える一糸乱れぬ動き。

「こういうのなんて言うんだっけ」

「マスゲーム?」

「そうそう、マスゲーム。よく視線合わせないで動けるね」

すごい練習したんでしょうね、とまわりで話す声に頷く。

白虎のその動作が一際大きい太鼓の音とともに止まった。千手観音のように銘々の方向に手を伸ばす最後のポーズ。そして。

「闇も焔も畏るる勿れ。毒を喰らひて、征け、白虎!!」

瀬尾さんの声がした。自分の耳が信じられなくて思わずそちらを見る。横断幕の都々逸!

「ありがとうございました!」

卜部の声がして全員が頭を下げ、本部のある後方に向って駆け足で退場していく。パチパチパチパチ、鳴り響く拍手の音。

退場してきた白の一団が席に戻る途中、入場門前ですれ違う。その中に松崎と当麻の姿も見えて、あいつらがやったのか、と思った。

「やるじゃん」

卜部に一声かけて前を向く。うん、と笑う卜部。

次はおれたちの番だ。向井や矢野を含む応援団員たちが入場門と退場門の二手に分かれて控え、待機した。彼らを残しておれと小萩さんだけが観客席の前に出る。

第一声は副将の仕事。胸にめいっぱい息を吸い込んで、空に向かって吠えた。

「勝利の女神の翼はひとーーーつ!!」

「我ら!朱雀と共にあり!!」

小萩さんの言葉を合図に、わあああああと声をあげて入退場門から応援団員が集まってくる。全力疾走。背中から声が迫る。中央前方にいるおれたちの後ろに並ぶと三味線の音に合わせて列を作った。女子が中央の三列、男子はその両端に並んで足を揃える。

「朱雀、舞わせていただきます!」

小萩さんの声で一斉に扇を開いた。次いで三味線の音が響く。

朱雀はよさこいソーランをベースとした群舞、鳴子の代わりに扇を使っている。黒いパンツとTシャツに地下足袋、上から丈の長い朱色の羽織という衣装。舞う姿が映えるよう振袖を真似て袖が長く作られたそれは応援団衣装班渾身の作だ。せっかく朱雀軍だもん。女子が綺麗に見えるようにね。そう言ってた。

楓先生とそれに巻き込まれた吹奏楽部員が三味線で吉田兄弟の曲を掻き鳴らす。

右、左、まわって腰落として左手上げる、扇を閉じて前を指して、跳ぶ。応援団員たちも袖をふりまわして踊り、扇をかざし、掛け声を叫ぶ。おれにその姿は見えない。後ろから声が聞こえるだけ。見えるのは隣で翻る赤い鉢巻きと赤い学ランの裾。長い髪。観客席。

去年は見る側だったな。まさか副将やって一番前で踊るとは思わなかった。自分から副将やりたいなんて言うとは思わなかった。

「こはぎさーーーんっ!」

「ちはるーーーぅ!!」

ひゅー、見栄を切るたび聞こえる口笛と声援。

たったの五分。右、左、まわって腰落として左手上げる、伸びて跳んで、身体引いて左、回って右、全力で全身を躍動させ、

「ハッ!!」

扇をかざして一斉にポーズを決めた。

わーーー、観客席から拍手が起こる。三味の音で直立に戻り、小萩さんが前を向く。

「直れ。礼!」

ありがとうございました、と後ろから声。背負って共に頭を下げる。

「撤収!!」

小萩さんとおれの合図で踵を返し、入退場門に向けて走った。

「終わったぁぁあーー」

「できてた?ちゃんとできてた??」

「できてた!できてた!!」

退場するなり安堵の声が響く。みんな肩で息をしている。

「青の演舞始まるぞ!席に戻れ!」

声をかけ、すれ違う広丸さんに目礼をする。南野はこちらを見ない。自軍を連れて席に戻った。

「お疲れ」

大西先輩がゆるりと笑っておれたちを迎える。

「どうでした?」

「よかった。ミスした奴いなかったんじゃね」

「ほんと?!やった」

小萩さんが笑みを浮かべる。安堵するおれ。

「お帰りなさい。かっこよかったよ」

長瀬の労いに向井が得意気に片目をつぶり、ありがとうと笑った。

「さーて、青はどう出るかな」

向井とともに席に落ち着いて青龍たちが入場してくるのを見守る。

体格のいい団員達に担がれて入場してくる広丸さん。でかい軍旗を振り回す南野。昇れ青龍遥かの空へ、頂き臨みて撃ち落とせ。スローガンの文字が翻る。

「あの旗いいな。布が軽いし柄もよくしなって見栄えがする」

「素材なんだろうね……竹?」

「竹はあんなに柔らかくないと思う。金属・・・じゃないよな。なんか柔らかめのプラスチックっぽい。あとで聞いてみよう」

衣装は学ラン。がっちり着こんで青い襷をかけている。

「あれ?平田がいないな」

「ほんとですね。征矢も」

応援団なんだー、と言っていた二人を思い出す。つーか男しかいない。女子どこ行った。

目をすがめて入場門に視線をやるとジャージ姿の集団が見えた。あそこか。女子はあとから出てくるんだな。

「ソイヤ!!」

両足を交差して腰を落とし、拳を地面につけて構えた。太鼓の音。頭上に拳を突き上げて重心移動、正拳突き、ものすごい硬派だ。女子がいないのはこのせいか。

「ソイヤッソイヤッソイヤッソイヤ!!」

大きな掛け声とキレのある振りを繰り返す一団を後方に、五人ほどの団員が一緒にバク宙を決めた。

派手だ。体操部全力かよ。

「ソイヤ!!」

両手を頭上で組んで空を見上げ、全員の動きが止まった。

「終わり?短い……」

と見せかけて、突然グラウンドに音楽が鳴り響いた。青龍の応援団女子たちが走って入場してくる。観客席にいる男子の動きが止まった。視線が一点集中する。おれは思わず大西先輩と顔を見合わせた。

「平田がミニスカ……」

「はじめて見た……」

なんと女子はミニスカのチアガール姿だった。平田も征矢も、魚谷の姿も見える。流れている国民的アイドルの曲をノリノリで踊りはじめた。もちろん男子も。広丸さんも南野も。

ジャンプをする振り付けのところで女子は控えめに、男子は全員全力の助走付きで跳び、観客席の笑いを誘う。

「ぶっ」

小萩さんが笑いをこらえきれず肩を震わせる。

「全力かよ」

「馬鹿だなあいつら」

恋するー、フォーチュンクッキー、思わず観客席も一緒になって口ずさむ。揺れるスカートをガン見するおれたち。そして音楽が終わり、決めポーズ。おおおー、と拍手が起こるがその直後、応援団員たちは挨拶もせず脱兎のごとく退場していった。大将一人を残して。

取り残された広丸さんが後ろを二度見して信じられねえ的な表情を作り、爆笑する観客席。

だが当然それも演出なのだろう。広丸さんはもう一度こちらに向き直ると、

「ありがとう、ございましたー!!」

一礼して自軍を全速力で追いかけて行った。

「ひろりんずるい。あれは卑怯」

「まさか笑いを取ってくるとは思いませんでしたね」

派手好きめ。心の中で悪態をつく。

青龍の笑いの余韻が残る中、黒の軍団が入場してきた。女子も含めて全員黒の学ラン、鉢巻きに白い手袋をした正統派応援団の装い。足を肩幅に開いて腰の位置で後ろ手を組み、整列。中西先輩が中央に立つと観客席が静まり返った。空気が変わる。

「玄武軍、参ります!」

大将の第一声。ザッ、一斉に腰を落として両脇に拳を構える。

「さんっさん、ななびょーーーし!!」

若井の声で全員がぐっと胸と腰を反らせて空を仰ぎ、笛の音にあわせて中西先輩の腕がはためいた。正統派の三々七拍子。そして前列が続き、それを二度繰り返し、太鼓の音が加わる。今度は全員の白い手袋が一斉に動く。そして空手の型を取り入れた演舞が続く。

「しーかくひとつも与えてやるなっ、猛れよげーんぶ、迎え撃てっ!!」

簡単な節に乗せて全員が声を合わせて唄う。正拳突き右、左、手刀受け右、左、横蹴りを利用して回って正拳突き、足刀蹴り、後ろ蹴り!

「かっこいーい……」

どこからともなく聞こえる声。誰を指しているかなど聞くまでもない。男でもそう思うんだ、女子の視線を引くのは当然だ。

最後に上段回し蹴りを決めて、ドン。太鼓の音とともに玄武軍は止まった。

「以上、西高体育祭応援合戦でした。ありがとうございました!!」

ギャラリーに向かって声高らかに宣言した生徒会長の声で、玄武軍応援団は一斉に背を向けて走り去った。

「かっこよくて腹立つわねー」

「インポのくせにな」

小萩さんの声に大西先輩がぼそっと呟く。

「え?今なんて言った?」

「あ、気にしないでください」

両手を胸の前でひらひらと振り、笑ってごまかした。部の女子ならともかく小萩さん相手にインポという単語を話題にするような勇気はおれにはない。

小萩さんは怪訝そうな顔をしたがすぐに向き直って別の奴らと話しだした。ホッとして大西先輩を見る。

「しかしなんで中西先輩がインポなんてことになったんです?」

「ああ。中学んときにな、あいつすげえ可愛い子に告白されてよ。ムカつくからインポってことにしようぜって」

「そんなことだろうと思った」

で、意味はあったんですか。なかったな。確かめようがないし。

「否定も肯定もしねえしな。まあ、あいつ彼女いたし」

「そりゃ腹立ちますね」

「だろ」

ニヤリと笑った大西先輩は、全然、ちっとも悔しそうではなかった。


応援合戦に続いて行われた一、二年男子による綱引きで、おれたちは惨敗した。

勝ったのは白虎。次いで玄武。自分たちの下にいた白虎に抜かれ、玄武は一位を守り続ける。朱雀は現時点で間違いなく最下位だった。

「さっきから朱雀の男子いいところないよね……」

「うんほら……副将がヘタレだから……」

戻ってきたおれたちを生温かい目が迎える。

「まったくうちの男子はー!」

「すいません」

苦笑いする小萩さんに頭を下げた。不甲斐ないのは事実だ。

「いいよ。でもこのお通夜みたいな雰囲気はダメ。なんとかして」

「……わかりました」

息を吐いた。おれだってふがいない一人だけど、どの面下げてって感じだけど。

「注目!」

自軍に向けて声を投げる。

「いよいよ次からが勝負だ。練習の成果を見せてやれ!」

おー、はーい、弱々しい声が返ってくる。

「でもさー小西。やっぱこの敗けはショックっていうか」

向井までもが弱音を吐く。

「落ち込んでる場合か?ずっと言ってただろ、おれたちの狙いは棒倒しと騎馬戦だ。この二種目は総力戦、ポイントも高い。ここに全力を注ぐ」

「つまり……おれたちの戦いはこれからだ?」

「そう、それだ」

「またかよ!やっぱその煽りはダメだろ!」

「打ち切られるーー!!」

向井とおれのやり取りにツッコミが起こって、いつものゆるい雰囲気に戻った。よし。

「いいか、まだ先はある!おれたちの戦いはこれからだ!!」

「おおーーーー!!!」

そうだ。現実は打ち切られたりしない。必ずその先がある。棒倒し、騎馬戦、リレー、控えている競技はまだある。

次の種目である棒倒しは全学年女子による総力戦だ。四軍のトーナメント勝ち上がり、一戦は三本勝負。先に二勝した方が勝ち。

その対戦表を見て向井が眉根を寄せた。

「一回戦は朱雀対玄武、青龍対白虎か。玄武戦……嫌だね。でもここでうちが止めないと玄武の独走体勢になりそう」

「二重の意味で負けられないな」

「大丈夫、勝つよ」

小萩さんが立ち上がり、先陣を切って入場門に向かった。向井が感心したようにため息をつく。うちの大将はすげえな。

「小萩さんの、あの自分を追い込むところってすごいと思うわ。なー鰐口、小萩さんっていつもあんな感じなの?」

「そうだよ?かっこいいでしょ」

事も無げにさらりと答えて、鰐口も小萩さんの背中を追う。

「バスケ部でいつもやってるのかもな。イメージトレーニング」

「野球部もそうだった?」

「うん、まあ。鼓舞するのは主将の役目でもあるし」

「へー」

野球部主将、中西憲広。今となっては遠い肩書。

「勝てるかな……」

おれたちの会話を知ってか知らずか、放送席から戻って来た長瀬がぽつりと呟いた。緊張した面持ち。指先が少し震えている。

「勝てる」

嘘をついた。勝負に絶対はない。それでも。

「小萩さんが勝つって言った。だから勝てる」

長瀬は目を丸くしておれを見た。そして、うん、と頷いた。


棒倒し一回戦、朱雀対玄武。自陣に立つ長さ5mほどの赤い棒、反対側には玄武の黒いそれが守備陣に支えられて立っている。

「黒い棒見ると下ネタ言いたくなる」

「病気ですね」

大西先輩に軽口を叩く。

「だって黒い棒が女子の手でそびえ立つとか下ネタにしか聞こえねえもん」

「でも玄武の大将インポなんでしょう?」

「いや、中西のとは限らないからな」

「なるほど。つまり若井が絶倫の可能性」

「それだ」

なんでだよ、誰がインポだ、隣にいればそう突っ込むはずの中西先輩はここにはいない。見ればその姿は玄武軍の陣の近くにあって、真面目な顔で何かを話している。なるほど、作戦会議か。

「中西の入れ知恵など恐れるに足らず!棒倒しは我々のものよ!!」

「夜の棒倒しなら負けない的な?!さっすが!こっはぎ!えっろす!」

「うるさい二葉黙って」

始まる前から舌戦を繰り広げる。玄武軍には二葉さん、笹谷、佐倉、東、姉崎 。相手がうちの軍じゃなければエールのひとつも送ってるところだ。

「一回戦第一試合、朱雀軍対玄武軍。はじめ!」

ピーッ、試合開始の笛が鳴る。玄武の守る陣に向かって朱雀軍の第一陣が走る。迎え撃つ玄武軍。

「通しませんよーーー!!」

守備側にいた姉崎が朱雀の攻撃部隊を一人倒した。同じように玄武の一年が第一陣を止める。陣に着く前に防御役を当てて早めにつぶしていく作戦のようだ。

次々に倒される朱雀。それでも数人がなんとか棒に辿りつきしがみ着く。登るための土台はできた。が、肝心の特攻部隊たちがどんどん潰されていく。

「遅い」

思わず呟いた。時間がかかりすぎてる。誰か一人でいい、早くあの土台を駆け上がってくれ。

内心ハラハラしながら見守ってると、混沌とする陣の外側から一人が抜け出した。ものすごいスピードで躍り出てきた小柄な、ドリブルの魔術師。

「行けーーー!月香ぁぁああああ!!!」

小萩さんの声に押されて鰐口が駆け登った。瞬く間に到達した棒の頂上、ぐいんと腕を伸ばしてぶら下がる。倒れない。

ダメだ。軽い!

せめてあと一人、棒にぶら下がらないと崩せない。誰かいないか目を凝らすと、運動部の群衆に気をとられて手薄になった後ろ側に見覚えのある後ろ姿が見えた。

「内海!」

その名を呼ぶ。

「登れ!!!」

おれの声が届いたのか届いてないのか、内海は意を決したように土台の背を踏んだ。一歩、一歩。速くはないが確実に。

「鰐口さん!!」

伸ばした手をつかんで、影が重なる。下にいた赤い鉢巻きの誰かが二人の体を引いた。

ぐらり。黒い棒が傾く。

わああああああああ、自陣から歓声が上がった。

「一回戦第一試合、朱雀軍先取!!」

実況が叫ぶ。

小萩さんがおれの方を見た。何か言いたげな顔に呼ばれた気がして思わず駆け寄る。男子がそこにいるのは場違い甚だしかったが、小萩さんは当然だとでもいうように前置きなくおれに質問を投げた。

「どう思った?小西」

「正面からぶつかって時間かけすぎです。鰐口は速いけど、あの速度がもう一人要ると思います。今度は小萩さんも」

一緒に上ってください、と言った。

「指揮しなくていいの?」

「小萩さんはプレイヤーでしょう」

現場で指揮をすることくらい、いつもやってるはずだ。

「守りが薄くならない?」

「こっちは一勝してます。攻撃は最大の防御ですよ」

つまり速攻か。小萩さんは呟き、覚悟を決めたように鰐口を見る。

「よし。走るよ」

「はい!」

まわりが頷いたのを見届けて席に戻る。第二試合。試合開始の笛の音。

「走れーーー!!我ら朱雀と共にありぃぃいいい!!!」

三人、いや四人。小萩さんと一緒に全力ダッシュで玄武軍に向かって走る。

「迎え討てーーー!!!」

二葉さんの声がした。一斉に迎えに走る玄武の女子たち、その中に東や佐倉、笹谷の姿も見える。二葉さんはものすごい笑顔で小萩さんに向かっていく。

「どいて二葉!!」

「やだよーー!!!」

まさかのタックル。砂ぼこりをあげて二人が倒れ込む。その横をすり抜けた朱雀が二人、が。

「月香行って!早く!!」

「嫌です!」

初速の一番速いはずの鰐口が立ち止まってしまった。二人を引き剥がそうと二葉さんの腕をつかむ。

「千晴さん離してくださいよ!二葉さんのえっち!えっち!!」

「えっ?!なんで?!!」

思いもよらぬことを言われて動揺したのか、二葉さんの力が弱まった。瞬時に飛び起きる小萩さん。何かを二葉さんの耳元でささやき、二葉さんの動きが止まる。

「行くよ月香!」

二人は二葉さんを置き去りにして走り出した。

「二葉さん?!どうしたんですか二葉さん!!」

佐倉が二葉さんに駆け寄り、笹谷があわてて小萩さんの背中を追う。

「何言ったんだ小萩」

「……固まってますね」

大西先輩と二人、フリーズした二葉さんを眺める。顔が真っ赤だ。

うわあああああ、歓声が上がった。見ると黒い棒は地面についていて、そのまわりで赤い鉢巻きの女子たちが抱き合って飛び跳ねている。間に合わなかったと膝を着く笹谷。おれたちが二葉さんに気を取られている間に行われた早技に思わず目が丸くなる。

「さすが小萩」

大西先輩が感心したように腕を組んだ。

「夜の棒倒しもお手の物なんだろうな」

「怒られますよ」

二勝、勝ち上がり。これで二位以上は確定だ。望みを繋いだ。

「一回戦第一試合、勝者朱雀!続いて第二試合を行います」

次は白と青。ふと見ると副将二人が身を乗り出している。

「うちが勝ったらガリガリ君な」

南野が卜部に挑むと、

「じゃ、うちが勝ったらハーゲンダッツ」

「なんだそれ不平等!!」

卜部がそれを受ける。

「何、賭けてんの?」

隣で聞いていた影野が卜部と南野を笑った。

「うん。勝ったらハーゲンダッツ。頑張れ」

「やった。頑張る」

影野をはじめとする白虎軍女子を送り出し、卜部は真面目な顔で自軍の席についた。瀬尾さんと何やら話している。

「白虎軍、青龍軍、入場!」

実況の声に白と青の女子たちが入場し、位置についた。

「白には当麻、青には平田か。どっちも応援しづらいな」

「白頑張れ、青頑張れでいいんじゃないですか」

大西先輩とそれを眺めながら外野気分でのんびりと観戦する。

白は守備、青は速度重視の作戦のようだった。試合開始と同時に走る青龍軍。平田が走る。速い。瞬く間に白の棒は倒され、一勝。そして二勝。

「あっという間……」

「青龍強い」

白の陣の女子たちは泣いていた。当麻の姿も見える。棒倒しを落としたのは痛い。白はかなり追い込まれたと言っていい。騎馬戦では必死になって勝ちに来るだろう。

「おれが、頑張らないと」

当麻の涙を見守っていた松崎がぽつりと呟いたのを、おれは聞き逃さなかった。

「残念だったねぇ二人とも」

負けて帰ってきた白と黒の陣、そこにいた二葉さんと浦河さんの肩を宮下さんが叩く。

「棒倒しは確かに負けちゃったけど、朱雀は総合点が低いじゃない。勝負は最後までわからないよ」

「そうだよ、うちだって次の騎馬戦は勝つ。中西が勝つ!そんで大西が悔しがる!つまりおおなか!そしてまつこに!」

「いーや、おおまつ。もしくはみなこに」

「なに言ってるの、西高最大手はなかせおでしょ。バカ西トリオならおおなかこにも有りだけど」

「こにせお……こにせお…………」

三人が話している横を梅原さんがブツブツ言いながら通過していく。

「灯ちゃんこにせお派なの。マイナー勢」

「宮ちゃんだってうらみな派じゃん。いつも干からびてるじゃん」

「おおなかだってなかせおに比べたら人口少ないよ!」

「なにおう!今は玄武が優勢なんだからね、絶対おおなか本作るんだからね!」

「勝負は最後までわからないってさっき浦ちゃんも言ってた!!」

モメてる。なんかわかんないけどモメてる。

「決勝は対青龍戦か」

そんな三年女子たちを尻目に、大西先輩が呟いてグラウンドに声をかけた。

「ひらたー、手加減しろよ」

「いやでーす」

笑顔で手を振る平田。笑うおれたち。朱雀の女子たちがもう一度入場していく。

「決勝戦、青龍対朱雀!はじめ!!」

実況の声に走る両軍。一戦目は朱雀が、二戦目は青龍が取り、勝負は三戦目にもつれ込んだ。次に勝った方が50ptを取る。

青龍と朱雀、それぞれの陣から歓声が飛んだ。負けた軍からもエールの声がかかる。卜部が声を出そうとして口を開き、一瞬躊躇して瀬尾さんを見た。

「征矢と矢野、どっち応援しますか」

「……征矢。青が勝てば白虎にポイントが入る」

三位の20ptは一位になった軍に一回戦で負けた方に与えらえる。

「せいやーー!頑張れよ!!」

卜部の声に応えて征矢が笑顔で手を振る。

「魚谷ーー!!ジョジョ立ちの成果見せてやれ!!」

「がんばれーーうおちゃーーーーん!!」

美術部たちが魚谷に声援を送れば、

「いっけええええはるちゃん!!朱雀いてこませーーーー!!」

自分達の仇を取れとばかりに笹谷が叫ぶ。

「待ってレナ、ここは朱雀に勝ってもらわないと私たちにポイント入らないよ」

「はっ、そうだった!こはぎさーーーん!!!」

あっさりと手のひらを返す。なんだそりゃ、とおれたちは笑う。二葉さんが立ちあがる。

「いいじゃない!目的のためなら手段は選ばない!!宮ちゃん頑張って!おおなかのために!!」

「そーれおーおなか!!おーーおなか!!!」

四軍入り乱れて飛ぶ声援がグランドに響いてボルテージは最高潮。両軍がもう一度棒を支え立てて向き合った。決戦開始の笛の音。

「走れ朱雀!!」

小萩さんが守備陣から檄を飛ばす。今回は守りに回って指揮を執ることにしたようだった。第二戦目、青龍の足の速い女子に速攻勝負で負け、攻めに人を多めに投入したせいで守備が薄くなって取られたから。

朱雀は鰐口、青龍は平田。足の速さ勝負とばかりにスタートを切った。青龍の第一陣が赤の守備陣を踏む。そうやって素早く土台を築いたその上を目指し、平田が、他の運動部の女子たちが駆けていく。土台となった青を引きずり降ろそうと必死の朱雀軍。外側の奴らは肘と肘を交差させて組み、倒れないように支えてる。矢野、長瀬、内海、福山、宮下さんや梅原さん、折り重なった中に見知った顔が見える。

「もみくちゃだな女子。一番内側とかどうなってんだろ」

「女子高生によるおしくらまんじゅう」

「夢いっぱいだな」

「おれは長瀬さんに支えられる棒になりたい」

客席では男子たちが煩悩にまみれたコメントを連発し、応援しろよ、とたしなめられたりしている。

「守備踏ん張れ!ぜっっったい離すなーーー!!!」

もみくちゃになっていた守備陣の中、福山の眼鏡が吹っ飛ばされた。

「あっ」

「大丈夫かあいつ」

それでも手を離さない福山。その眼鏡を征矢が拾って福山の体操着に掛ける。福山の唇がありがとう、と動く。そんな二人の横を平田がすり抜け、土台を踏んで素早く駆けあがった。青龍側の陣に目を向けると同じように鰐口が駆けのぼっている。どちらも棒にぶら下がる。ほぼ同時!

「月香ーーーーーーーーー!!」

ひらた、と言いそうになって堪えた。

「平田ぁぁあああああああ!!!」

おれじゃなくて、南野が叫ぶ。ぐらりと傾いた赤と青の棒を交互に見た。平田に続こうとする青の鉢巻きを小萩さんが引きずり下ろす。それに続く赤の軍、土台は堅牢にして崩れない。反して青は次々に鰐口に加勢が入り、結果、

「鰐口さん!!!」

青の陣はばたばたと崩れ、青い棒が鰐口と一緒に地面に倒れ込んだ。

「……決勝戦、勝者朱雀!!」

歓声が上がる中、勝利の余韻も味わわず小萩さんが青の陣に駆けた。倒れた鰐口を助け起こす。

「いったーーー……」

「大丈夫?!月香!!」

「取ったよ千晴さん!」

「うん、よくやった。でもちょっとジャンプして見せて」

「う」

立ち上がった鰐口はそれに応えることができなかった。小萩さんが肩を貸し、足を引きずった状態で退場する。

「……やべえな」

呟いた。鰐口はこの種目が最後じゃない。軍対抗リレーの選手だ。

「こにし」

戻ってきた小萩さんがおれの名を呼んだ。頷く。

「鰐口は軍対抗リレー棄権ですね?補欠に切り替えます。実行委員、本部に」

「大丈夫だよ!出れる!」

「駄目だ」

「千晴さん、大丈夫です!出れます!!」

「ダメ!!」

鰐口は泣きそうな顔でうつむいた。出たい。出たかった。それなのに。

「月香はこの勝ちだけで十分良くやった。部もあるのに無理はさせられない。後はわたしたちに任せて」

小萩さんに肩を抱かれ、鰐口はうつむいたまま、おれたちに表情を見せないまま、ようやくこくりと頷いた。

気持ちがわかる。見ていられない。目をそらすと不機嫌そうな南野と目が合った。朱雀に一勝二敗。南野にとっては悔しい結果だろう。

「……ガリガリ君?」

「お前とは賭けてねえ」

そもそもお前の手柄じゃねえだろ、騎馬戦は負けねえからな。言い捨てて先陣を切って入場門に歩いて行く。それを隣で見ていた浅井がくつくつと喉を鳴らしてこちらを向いた。

「接戦であっても取るべき戦を取る、さすがは朱雀王だ。四国統一の鍵となっただけある。ねえ、軍師殿?」

「は?」

「こればかりはさすがの広徳王も読み切れなかったと見える、歴史は繰り返すというが本当だね。将は盤古の如く荒れているが軍参謀相手には夙夜夢寐の事だろう?とはいえ獅子搏兎の如く騎馬を狩ろうとするに違いない。君に迦陵頻伽の加護があるよう祈るばかりだよ」

あ、駄目だ。思わず泳ぐ視線の先に平田が戻ってくるのが見えて、思わず助けを求める。

「平田……浅井が何言ってるか全然わかんねえんだけど」

「いつものことでしょ。あ、麻美ちゃん」

平田が呼んだ名前に心臓が跳ねた。視線をやれば保健室から戻った渕崎がゆっくりと近付いて来ていて、遠目からでも顔色が随分良くなったように見えた。

「棒倒し見てたよ。赤に勝てなくて残念」

「うん、惜しかった。でも白虎に勝ったから良しとしよう」

「副会長どんな顔してた?」

「うーん……特に動揺してるようには」

「本当に可愛いげがない。気に入らないわ」

憮然とした表情で首を振り、瀬尾さんを遠目に睨んだその目がこちらを向く。ほんの少し躊躇して、それでも声をかけた。

「……もう大丈夫なのか」

「平気。いつものことだし」

多分こうなるって、わかってたし。

保健室での青白い顔を思い出した。渕崎の本音。おれへの苛立ち。

「お前さ……おれが野球やめたから怒ってたのか?」

「そうだよ。野球やりたかったなら同好会でもなんでも続ければよかったじゃない。やればできたのに、その努力もしなかったくせにずっとそうやって引きずって……馬鹿みたい」

自分と小西を比べて苛立つ私も、馬鹿みたい。

「……ごめん」

「何謝ってるの?小西は私に何もしてないでしょ」

渕崎の声は静かだ。淡々と、淡々と。

「分かってるの。これはただの八つ当たり。根底は私の問題で小西は関係ない。でも気に入らないものは気に入らないから」

「……あのさ、結局おれは野球より平田とか先輩たちとかといることを取ったんだよ。覚悟決めたつもりなのに未練たらたらなのはかっこ悪いけど、そんな簡単じゃねえから。仕方ない」

都々逸部なんてやりたくなかった。でも今は。

「未練はある。でも今は、これも悪くないって思ってるよ」

横断幕を見上げてそう言った。渕崎が納得したかは分からない。表情からは何も読み取れない。平田は隣でただ聞いている。渕崎の唇が動く。

「……いいんじゃない」

たった一言、それだけ。

「小西!騎馬戦集合だぞ!」

「あ」

手塚に呼ばれて気付いた。とっくに集合がかかっている。大事な大事な一戦。

「じゃー行くから」

平田に手を上げる。

「わかった。頑張って」

「おー。南野こてんぱんにするけどいいのか?」

「……いいよ。やっちゃえ」

サッカー部なんて、と平田がいたずらっぽく笑った隣、にこりともしない渕崎が親指を立てておれを見送った。


遠目に見える黒の軍は一騎当千の大将をいただいて物々しく並んでいた。

対する白の軍はドSを大将に持ち、四軍一の統率を誇る。

西高体育祭名物、騎馬戦。全学年男子による総力戦、再戦なしの一発勝負。 三人が一人を上に乗せる四人一組の騎馬でぶつかり合う。鉢巻きを奪うか騎馬を崩すか、いずれかの手段で騎馬がより多く残った方の勝ち。

「あああああ…………こんなおいしい眺めにカメラ持ち込めないなんて……!!!」

二葉さんが頭を抱えてもだえ苦しんでいる。視線の先には玄武軍大将。騎馬戦で男子は上半身裸になる。

「二葉さん、気持ちはわかりますが見て!せめて網膜に焼き付けるんです!」

「なかせおの裸と裸のぶつかり合い……網膜がレンズ、まぶたがシャッターなスパイカメラの開発はよ!!!」

「写真班を買収しておけばよかった……ぬかった……」

佐倉と笹谷が騒ぐ側で浦河さんが呟く。うるせえ。

「どっち応援する?」

一回戦第一試合、白虎対玄武。実況にコールされるカードを聞きながら大西先輩がおれを見た。

「そりゃ、まあ……黒ですよね」

「直接対決したいか」

うーん、まあ、と曖昧に答える。

「松崎くん……!!頑張ってーー!!」

白虎の陣から当麻の声がする。

「……戦うのはどっちでも。白には松崎もいますし」

「だな。あいつもいいとこ見せねえとなあ」

言いながら当麻を眺めた大西先輩は、なんか親戚の兄ちゃんみたいな目をしていた。

「征け」

試合開始の笛が鳴り、静かだが凄みのある瀬尾さんの声が響く。うおおおお、地を這うような野太い声が上がって白の騎馬が前進する。

「迎え撃て、玄武軍!」

中西先輩のよく通る声がそれを迎え撃つ。

白虎の第一陣が玄武の騎馬とぶつかった。一年同士が鉢巻きを奪い合う。その中に見える松崎の姿。機動力を活かして素早く動き、ぶつからず消耗戦を避けて軽やかに黒の鉢巻きを奪っていく。

「やるじゃんあいつ」

「松崎くん!!」

当麻が声援を送る。

「すごい、松崎くん。かっこいいね」

「え、……うん」

矢野に言われて当麻が戸惑いながら頷いた。後ろから見てるおれたちはちょっと笑う。脈ありそうだぞ、よかったな松崎。

そんな松崎の前に黒の騎馬が数騎立ちふさがった。その一つに文芸部の高橋が乗ってる。

「さすがだね、サッカー部。もうさよならは言えたのかな」

にこにこと笑いながら松崎に話しかけた。

「それともいまだに見てる?」

「……なんの話?」

「ううんなんでもない。当麻さん、かわいいもんねえ」

「え、な」

「松崎!!」

明らかに動揺した松崎を呼んだのは江中だった。他の騎馬を引き連れて助けに来る。

「止まるなよ!」

一対複数の劣勢だった戦況が五分に戻る。高橋はにこにこと笑ったまま首をかしげ、風のように自陣に逃げて行く。その背中を追う白の軍勢の前に立ちはだかったのは。

「はーいそこまで!」

副将、若井星次。

「江中ぁ、こっち。相手に不足ないでしょ」

「確かにお前取ったら瀬尾キュンに誉めてもらえそー。よし来い!」

江中と若井が真っ向から組み合った。足の速い陸上部、肩の強いバレー部、肩の強い方が鉢巻きを取り上げる。が、取った瞬間、後ろから白の騎馬が追突してきた。卜部が率いる騎馬。フィジカルが強い。

「いっ」

その衝撃で若井の騎馬は崩れた。撃破した勢いそのまま中西先輩に向かっていく。

「あ」

卜部の騎馬が思い切り中西先輩にぶつかった。砂埃が舞う。思わず拳を握りしめる。

「なかにし」

大西先輩の小さい声。

人が多くてよく見えない。黒の大将騎馬とその行方。勝負の行方。

負けるわけない。中西先輩が負けるなんて、そんなの有り得ない。

ピーッ、喧騒を遮るように笛が鳴った。試合終了。目を凝らして見慣れた姿が現れるのを待つ。爪が食い込むほど握り込んだ手のひら。

静まった喧騒の中から現れた玄武軍大将は、鉢巻きも騎馬も守りきっていた。

「あっぶね」

中西先輩は笑っていた。ちえ、と言いながら自陣に戻る卜部。でも。

「勝者、白虎!!」

騎馬の数で圧倒した白虎が勝利を納めた。白の陣から歓声が上がる。

……中西先輩が負けた。

興奮冷めやらぬグラウンドから目を離し、行くぞ、と声をかけて体操着の上を脱ぎ捨てた。今度はおれたちの番だ。

入場し、騎馬を組んでずらりと並ぶ。おれは騎馬を組む前に自陣の前に出て一礼をした。大将が騎馬戦に出ない朱雀、指揮を執るのは副将、小西秀秋。三年を差し置いておれが指揮を執る、その事に対してせめてもの礼儀を。

「朱雀が目指すはここでの二勝。青龍戦は通過点」

そう。おれたちの戦いはこれからだ。

「全力で当たる。よろしくお願いします!」

言って騎馬の上に飛び乗る。おれを支えてくれるのはラグビー部の屈強な男子三人。夏の総体を引退したばかりの三年のフルバックとプロップ、おそらく朱雀軍で最も強靭な騎馬だ。副将も大将も数は同じ一だが、心理的には取られてならない大事な騎馬だから。

試合開始の笛が鳴る。一回戦第二試合、青龍対朱雀。

「行くぞ!我ら朱雀と共にあり!」

「撃ち落とせ!!」

広丸さんの声を合図に青龍軍が向かってくる。速い。だが横の連携がある訳ではなく、あくまで速さで圧倒する構えのようだ。それはおれたちにとっては好都合だった。

いいか、単騎になるな。六騎で一つのグループになって動け。狙いを定めたら取り囲んで数で圧倒して潰せ。そういう作戦で練習してきた。

しかし大勢で動くのはかなり難しい。同数に攻められる前に動くこと、そのために声を出すこと、 局面に応じて三騎ずつ素早く分かれ取り囲む心積もりをしておくこと。グループ内の連携を徹底する。狙いを定める、どこを攻める、援護する、それらの判断を誰がするかが重要だった。グループごとにリーダーを置く形を取っている。軍に例えるならば小隊長といったところか。

「総力戦っていったって、おれら役に立てる気がしないんだけど」

運動苦手だし、足も速くないし。練習のとき文化部の奴がおれに言った。

「大丈夫、それぞれできることをすればいい。攻め騎馬と守り騎馬に役割を分ける。お前らは守り騎馬、陣の深いところで守ってくれ」

守るといっても騎馬戦には守るべき陣地も王もない。守るは己の身ただひとつ。

「つまり……自分の身を守れと?」

「そう。守り騎馬は生き残ることが目的、徹底的に戦いを避ける。自陣から動かなくてもいい。敵が迫ってきたら隊を維持したまま逃げろ。もし深追いしてくる単騎があれば全員でフルボッコ」

「なるほど、そっか。それならできそうだわ」

守り騎馬の小隊長にはサッカー部のディフェンダーやバレー部のセッターを配置、全体を見て戦いを避け隊を守ることを徹底。攻め騎馬の上には剣道部、空手部、勝負に貪欲な奴を置いて戦わせる。適材適所、クラスの垣根を越えて騎馬を作った。この日のために。

「そこ!!単騎になるな!!」

「手塚!右手の部隊攻めあぐねてる、カバー頼む!!」

暑い。汗が飛ぶ。

戦況は悪くない。狙った通り小隊は機能し、青の騎馬を次々落としていく。攻め騎馬はダメ押しとばかりに青龍陣の深いところまで進んでいた。狙うは副将、そして大将!

だがそれは同時に、指揮をするおれが集中砲火を浴びることでもあった。小西を潰せ。血気盛んな青龍騎馬が束になって向かってくる。

「やっべ」

「どうすんだ小西?」

「逃げましょ。守り騎馬から遠い、騎馬の少ないところへ」

あっち、と指をさして、すでに崩された騎馬たちが自陣に戻るために歩いている付近まで駆ける。

「お見事小西。妙音鳥の声は聞こえているようだね?」

「いや、だから、何言ってるか全然わかんねえよ!!」

崩された騎馬の一人、浅井の声に答えながら逃げ回る。

「小西てめえぇぇえええ逃げんな!!戦え!!」

南野が追ってくる。単騎。バカだあいつ。こんなところまでおれを追って来てる場合じゃないのに。

「逃げてるわけじゃねえ、戦略!」

「逃げてるじゃねえかこのヘタレが!!」

どうする小西、ともう一度聞かれた。単騎で乗りこんでくる副将。潰しておけば相手に心理的なダメージを与えられる。だが負けた時は。

「行こうぜ。足場は守る」

下からの声に押されて、わかりました、と言った。副将を取る。ダメ押しでとどめを刺す。

「誰がヘタレだ、戦えばお前なんかに負けねえよ」

「おれらは龍、お前らは鳥だぞ?鳥が龍に勝てるわけないだろ!」

「不死鳥って言葉知ってるか?バカだから知らねえか」

「バカはお前だろうが!!!」

「うるせえかかって来い!!」

双方向から勢いよく駆けて、おれたちの騎馬はぶつかり合った。衝撃の割に振動は小さい。土台の三人の重さは拮抗しているようだ。青龍の副将騎馬、強靭なのは当然か。

南野と組み合い、ぐぐぐと両腕で押し合った。互角。力の差はたぶんない。ふっと力を抜いて緩め、前のめりになった南野の身体を避けて右手を抜く。バランスが崩れる。鉢巻きに手をかける。南野の左手が自らの頭を守るためおれの腕をつかもうと振り上げられる。

「南野くん……!!頑張って!!」

不意に聞こえたさゆり先生の声、それに一瞬意識が持っていかれて重心が乗り遅れた。おれの足を支える手のひらが汗で滑り、ぐらりと馬の三人が揺れ、踏みとどまるために反射的に右手を振る。

「ッ!!」

その指先が南野の頬をかすった。両手で顔を覆って鉢巻きを守り、だがその反動で上体が大きくのけぞった。

騎馬が大きく崩れる。南野が落ちる。その動きがスローモーションのように見えて、だけど、

「南野!!」

広丸さんが叫び、彼になぎ倒された朱雀の騎馬たちが崩れ、それに手を伸ばす南野。バランスを崩した朱雀の騎馬を引き込むため避けることもしない、その南野の上に何人かが落ちていく。 きゃーーと女子の悲鳴が響く。ほぼ同時にピー、と試合終了を告げる笛が鳴る。

「バカ、お前!!」

足!!

あわてて騎馬を解いて駆け寄った。

南野の上に乗っていた奴らを助け起こし、起き上がらせると金髪が現れた。大丈夫かと声には出さない。いってぇと頭を押さえてごろりと転がり、膝を立てて座った。

「へーきだよ。何焦ってんだよ」

とんとん、足を鳴らす。

……なんだよ。驚かせやがって。

「お前から足取ったら取り柄なくなるじゃねえか」

「なんだとやんのかコラ」

「今やって、負けたんだよ、バーカ」

鉢巻きを奪えなかったのは残念だけど、騎馬を崩したんだから良しとしよう。どちらも同じ。一騎は一騎だ。

「小西、騎馬のカウント始まるぞ。戻れ」

土台の三年に言われてもう一度登った。守り騎馬たちの無事が見える。風にはためく赤の鉢巻き、それをざっと数えて確信した。おれたちの勝ちだ。

「一回戦第二試合、勝者朱雀!」

わー、歓声が上がる自陣に目を向けると小萩さんが大きくガッツポーズしてるのが見えた。おれと目が合ってサムズアップ。ざまあひろりん。

一旦騎馬をといて一息つくと、待機場所からおれたちと対面の敵陣に移動する白虎軍が見えた。その中の一人がおれを睨む。

「うちのエースに何してくれてんの。怪我はなかったんだろうな?」

「あー、頭打ったみたいだぞ。バカになってないか確かめた方がいい」

まあ元々バカだけどな。言うと卜部はふっと笑った。

「南野の仇ってわけじゃないけど、今回は勝たせてもらう。中西さんを負かしたおれがお前に負けるわけにはいかないからな」

「……さすが次期会長」

「茶化すな」

本気を出した卜部は厄介だ。いつもと違ってムキになる。

茶化してねえよ、と言って互いに持ち場についた。騎馬を組んで整列。勝ち上がった鳥と虎が睨み合う。最後の一戦。

「大丈夫、瀬尾キュンの騎馬はおれらが守るから!」

「その呼び方をやめろ」

遠くに見える白の大将は江中の後ろで渋い顔をしている。ずいぶん奥に引っ込んでるんだな。いい身分だ。

「瀬尾に近付くのは大変そうだなー」

大西先輩が飄々と言う。

「……肩大丈夫ですか」

「平気だよ。多少怪我したって、もう試合があるわけでもないしな」

そりゃそうですけど。

大西先輩の肩の包帯はもう取られていて、傷跡だけがそこにある。肩をあまり動かさないならいいよ。リハビリでできてる稼働域までね。土台は無理だけど上に乗るなら自分でコントロールできるでしょ。医者がそう言ったから、と騎馬戦に出ることを決めた大西先輩。おれは止めなかった。だけど今でも直視できない。

「無理しないでくださいよ」

「母ちゃんかお前は」

「違います」

言って、もう一度整列した。さっきと同じように自軍に礼をする。

「青龍戦は作戦通りよく機能してました。次もそのままで、お願いします!」

さあ、行こう。決勝戦。朱雀対白虎!

「やれ」

殺れ、に聞こえるトーンで瀬尾さんに凄まれて怯んだが、試合開始と同時におれたちは駆けた。攻め騎馬が白の陣に向かっていく。網を張るように横一線で迎え撃つ白虎軍。

網ですくい上げられ、小隊はいくつも崩されていった。ほぼ同数の騎馬を取ってはいるものの白が単騎にならないため攻めきれない。一進一退を繰り返す。

「どうする小西」

「……おとりでも使って引っ掻き回すか」

単騎になるのは危険だ、重々わかっている。だがこのままではなにも動かない。ふーん、と戦況に目をやった向井が、うん、と頷いた。

「囮になってあげるから、連れてきた騎馬は叩き潰してね」

「え」

おれが指示を出す前に向井のグループが四散して走り回った。戦況が動く。何騎か潰される、だが網に穴が開く。突破しては戻り、囮を深追いしてきた白の騎馬を取り囲んで潰す。

続けてほころびたところから侵入するが、そこには何重にも張られて大将を守る網が待ち構えていた。一枚突破してもまたやられる。グループの形が保てなくなる。同じことだ。罠だ。

そうだった、卜部はゴールキーパーだ。守り戦が得意。攻めさせられてるだけだ!

「向井!戻れ!!」

「なんで!」

「攻めさせられてる、相手は待ち構えてる」

「だから何。待っててどうすんの!」

「お前は間違ってない!逃げるな小西!!」

向井と手塚が遠くからおれを指差す。止まらない。

「くっそ」

呟いた。どうする。戦況をにらむおれにしびれを切らした三年がこちらを見る。

「行くのか?!引くのか?!」

「どうすんだよ小西!!!」

肉を切らせて骨を断つ作戦は練習してきたことが水泡に帰すような自殺行為でもあって、でもそれが間違ってないと言われたらおれは行けと言うしかなくて、こうやってぐちゃぐちゃ考えて何もできなかったことは今までもあったから、今はそうじゃないと思うから、

「―――総員攻撃!!」

叫んだ。

うおおおおおおお、後ろに控えていた赤の軍が一斉に前に出る。赤の小隊は白の網と真正面からぶつかり合って陣形を成さず乱れた。ぐっちゃぐちゃ。白虎の網も朱雀の小隊も機能しない、ただの乱戦。

そっからはもう、無我夢中だった。どこかで瀬尾さんの声がする。立て直せ。そうはさせない、そんな時間は与えない!

「大将騎馬を狙え!!首を取った奴がヒーローだ!!」

「金一封くらい出るかもなー!」

大西先輩が大声で笑っておれの横を駆け抜ける。

「えっ何もらえんの?」

「……小萩さんがパンツ見せてくれます!!」

「マジか!!!」

「いけええええええ!!!」

士気が上がる。瀬尾さんに向かって走る大西先輩の騎馬。それを赤の騎馬達が追う。あわてて守りに走る白の騎馬。卜部は遠くにいる、間に合うまい。肉を切らせて骨を断て。

でも肉ごと骨を断たれる。向井や手塚、囮になった者たちの騎馬はどんどん落とされていく。

「くっそ!!」

吐き捨てるように悔しさをにじませた向井、その鉢巻きを奪ったのは他でもない松崎だった。嬉しそうに顔を輝かせ、次、と声を出してこちらに向かってくる。この距離だと次にぶつかるのは。

「こにしせんぱい……」

松崎が、おれを前に一瞬止まったように見えた。

「なんだ?」

躊躇してる場合か。おれが頑張らないと、と言ったあの独り言は本心なはずだ。ちらりと松崎の後ろをみる。赤の騎馬が見える。

「かかって来い。松崎」

「…………はい!!」

決心したようにおれに向かってくるが、でも、遅い。躊躇している間にお前は囲まれている。おれはお前の心情を利用して味方を呼び寄せた。

「わ!」

後ろから攻撃されて松崎がバランスを崩す。おれから目を離したその隙に横に回った。右手に触れる白い布。つかむなり素早く上に引いて取り上げる。

「あっ」

「もらい」

松崎は泣きそうになって、それなのにちょっと笑って、ずるい、と唇だけで言った。

あああああ、絶望に似た声が聞こえてそちらを見ると、瀬尾さんの前に赤の騎馬が倒されていた。地面に膝をついて苦笑いする大西先輩。立ちはだかる江中。卜部。

……あの野郎。

ピーッ、そこで笛が鳴った。おれも瀬尾さんも無傷のまま、決着は数勝負。ざっと生き残った騎馬を数えた。わからない。どっちが勝った?!

「整列!!」

瀬尾さんの声で白の騎馬が並ぶ。おれたちもそれに倣う。

「白虎軍、残二十三騎。朱雀軍……二十騎!勝者白虎!!」

……負けた。騎馬戦は二位。

下を向いた。勝てなかった。勝てなかった!

「全軍退場!」

アナウンスと音楽に導かれ、退場門に向かう。悔しそうな朱雀。笑顔の白虎。

退場門をくぐると卜部と目が合った。なんだか複雑な顔をしている。喜びと、安堵と、そして少し申し訳なさそうな。

「なんて顔してんだよ」

笑った。難儀な奴。

「気にすることない。結果で示さなきゃいけなかったのはお互い様だ。おれらが本気でやってるの、見せなきゃいけなかったんだろ」

それで勝たなきゃいけなかったんだ。卜部は。

「言っとくけどこっちも手加減なんかしてないからな。おれたちは全力で負けたの。お前らは実力で勝ったの」

「……ありがとな」

「だから礼なんかいいって」

「小西はそう言うけど、自分のことを気にかけてもらうのを当たり前だとは思いたくないから」

「……お前がモテるのわかる気がするわ」

「えっ?!おれモテてんの?誰に?誰?!」

「あーうるせーうるせー。教えねえよ」

応援合戦であんだけキャーキャー言われといて自覚ないとはどういうことだこの野郎。

お前だっておれのこと十分気にかけてるくせに。勝って申し訳ないなんて思うくらい、おれが本気なの知ってるくせに。つーかなんで知ってるんだよ。筒抜けかよ。

心の中で悪態をつきながら、おれたちは肩を並べて陣に戻った。


戻るなり小萩さんにひっぱたかれた。隣に立つ鰐口がおれを睨む。

「千晴さんのパンツをニンジンにするなんて小西最低」

「ねー。勝手に言ってくれちゃって」

しかも負けてるし。痛いところを突かれる。

「夢中だったんですよ……他意はないですって。いいじゃないですか結局見せずに済んだんだし」

「そこまでして大将を落とせなかったなんて!千晴さんのパンツの価値が低いみたいじゃない!!!」

「月香怒りの矛先がおかしい」

まあいいけど、騎馬戦で二位なら悪くない。小萩さんは笑った。おれもそう思う。だが戦況は厳しいと言わざるを得なかった。

残すは軍対抗リレーただひとつ。各学年から二人+大将副将、全部で八名のリレーだ。各軍女子が二名入っている。 大将はアンカー。副将はその前を走ってバトンをつなぐ。

「大将と副将は200mを走る。だから白と赤は不利」

運動部じゃない大将と女子大将。元からハンデを背負って挑んでいるんだ。そんなことは始まる前からわかっている。鰐口を欠く前から同じことだ。

「小萩さん、頼まれたもの持ってきました」

「ありがとう!」

小萩さんが矢野の手元を覗き込んだ。持ってきたのは最新のスコア表。軍対抗リレー直前、どこまで追い上げられたか。おれと大西先輩、その他リレーに出る面々も小萩さんと同じように頭を寄せる。

「黒195pt、赤188pt、白163pt、青162pt・・・」

「現時点で二位か、かなり追い上げたな。さすが棒倒しと騎馬戦はポイントが高いだけある」

「でも全軍30pt以内にいるよ。次で負けると簡単に逆転される。1位が50pt、二位が40ptでしょ?優勝するには……二位以上?」

「そうですね。ただし黒には絶対勝たなきゃいけない。黒が一位だったら二位でも勝てない」

小萩さんの声に応じながら、徒競走終了直後に見たスコアを思い出した。白が早く、その他の三軍にあまり差はない。

「ですが、白になら一位を取られてもおれたちが二位なら勝てます。それか」

「違うだろ」

大西先輩がおれの声を遮った。

「細かいことはいいんだよ。一位を取った軍が優勝だ。一位を狙え」

「でも」

「はじめから二位でもいいと思ってて黒に勝てんのか?そんなに甘いわけないだろ」

言われて黙りこむ。確かに、そう簡単に勝たせてくれるとは思えない。

「小西お前、負けても仕方ないって思ってないか」

「え?そんなことは」

「本当か?中西になら負けてもいいとか思ってるんじゃないのか」

躊躇のない、声。

「おれはあいつに負い目があるけど、だからこそ負けられない。お前も腹をくくれ」

「おれらはくくってるぞー。中西がなんぼのもんだよ。なあ?」

「ですね!イケメン有罪!」

リレーに出る三年が、一年が、大西先輩に同意する。

「小西がどう思ってるかは知らないけど、私は負けるつもりなんかない。朱雀が不利だなんて思わない。全力で行くよ」

「……おれだって同じですよ」

「それならいい。行こう」

小萩さんの声に頷き、おれたちは決戦の舞台に向かった。最後の種目。たった八名のリレー。十分後には決着が着く。

「おれが陸上やっててよかったなと思うのは、自分はまだ自分と対話する方法を見失ってないなと思うとき」

一緒にスタート位置に待機している手塚が、グラウンドを見つめてぽつりと呟いた。

「こうやってスタートラインに立つと自ずと見えるんだ。自分がどうしたいのかが」

そう言っておれを見る。

「小西はどう?」

「……勝ちたい」

「おれも。人事を尽くそう」

差し出された左手に応えた。パンッ、乾いた音を立てて手のひらが鳴る。

中西になら負けてもいいなんて思ってないか。

……思ってたかもしれない。負けるところは見たくないとさえ。

隣を見た。二人と組んで中西をこてんぱんにするなんて面白そう、と言った大将を。

「小萩さん」

長い髪を揺らしてこちらを向く彼女。いつになく真剣な表情の。

「出来るだけリード広げて渡します。勝ちましょう」

「うん。勝とうね」

ぐっと奥歯を噛んでおれを見上げて、小萩さんは不敵に笑った。

勝利の女神の翼はひとつ。我ら朱雀と共にあり、だ。

「位置について!よーい」

パァン!

銃声を合図に各軍の一年が走り出した。天国と地獄が鳴り響く。

前半はほぼ横一線だったが、出馬表通り白がじりじりと他の三軍を離していく。

「あっ」

バトンの受け渡しでミスして、青が出遅れる。キャー、ああああ、と悲鳴にも似た落胆の声が上がる青龍の陣。白、赤、少し遅れて黒。青はその後ろで10m近く離されて、それでも懸命に走る。

「行け!!」

朱雀の三年がおれにバトンを渡した時、おれの前にいたのは卜部だけだった。少し離れて玄武、ついで青龍。今回は南野を意識する必要はない。卜部だけを見ていればいい。

たとえそれが白でも、目の前に誰も走らせてはいけない。出来るだけ差をつける。おれにできる全力を尽くして。

「小西先輩!!!」

「小西負けんなぁああああああああ」

「行けええええヘタレーーーーーーー!!!!」

視界の端で横切った赤い一団がおれの名とそれらしきものを叫ぶ。目の前の卜部の長い足を追って、交わして、抜き去る。うるせえよ。誰がヘタレだ!!

「小萩さん!!」

200mを全力で駆け抜けて、待ち構えていた大将にバトンを渡した。

その背中を見送ってすぐ後ろを振り向くと、少し距離を置いて白、数メートル差で黒が追いかけて来ているのが見えた。差を広げられたことにホッとしながら卜部が瀬尾さんを送り出すのを見守る。バトンの受け渡し位置に視線を向けるとそこに立つ中西先輩と目が合った。すぐに逸らされた目線が若井を見て、そのバトンを受け取って、瀬尾さんの背中を追っておれの横を走り抜けて行く。もうこちらは見ない。前だけを向いている。軽く瀬尾さんを追い抜いて駆けていく。

おれは小萩さんの走りを見守った。中西先輩が追う。ああ、くそ。速え。

差は縮まっていく。でも。

「速い!小萩さん!!!!」

「小萩ーーーーーーーー!!!!!」

「ちはるーーーーーーー!!!!!」

声を限りに叫ぶ自陣を背負って、長い髪が揺れるのを見守った。

おれたちはどうして、あのときちゃんと話さなかったんだろう。大西先輩が事故った時、野球部を潰した時、きちんとぶつかっておけばよかったんだ。嫌だって、おれは続けたいって言えばよかった。たとえそれが叶わないってわかっててもかっこつけて物分かりのいいフリなんてしなきゃよかった。そしたらこんな、体育祭でまで引きずって、勝つとか負けるとかそんなことにこだわらずに済んだんだ。

「あと少し!!」

中西先輩。あんたなんでそんな、一人で全部決めちゃったんすか。

「小萩!!!」

大西先輩の声がする。あと少し、あと、ほんの、2mで、

「小萩さ……!!」

声援に押された長い髪は、満面の笑みで走り抜けてゴールテープを切った。

「一位、朱雀軍ーーー!!!」

スローモーションのように、小萩さんが走って近付いてくる。

「こにし!!」

高々と上げた右手をおれに向ける。それに応じて腕を上げ、同時に降り下ろし、パチン、と手のひらが音を立てた。

「勝っちゃった」

いたずらっぽく笑う彼女に答えようと口を開いた瞬間、後ろから誰かが飛び込んできた。

「小西ーーー!!!」

「こはぎさんーーー!!」

「やったぁあああーーー!!」

向井が、長瀬が、手塚が、内海が、軍の三年が、一年が。飛び込んできておれの頭をぐしゃぐしゃと掻き回し、背中を叩く。小萩さんを担ぎ上げる。

「獲ったぞ朱雀ーーーーー!!!」

三年男子に担ぎ上げられたうちの大将が、声高らかに拳を突き上げた。わああああ、歓声が上がる。

歓喜の渦の中でまわりを見ると、自軍の女子たちがぐしょぐしょになって泣いていた。

「もーー何、なんで泣いてんの!月香まで!」

「だって……千晴さん速かっ……嬉しい……!!」

ぼろぼろと涙を流す。うんうん、よしよし。小萩さんが鰐口の肩を抱いて、朱雀の女子たちの輪がそれを囲んだ。

勝ったのかおれたち。呆然とした頭で周囲を見る。広丸さん。瀬尾さん。中西先輩。

「ざまあ」

まだ肩で息をしている中西先輩を、大西先輩が笑った。

「……お前も怒ってたのかよ」

部をつぶしたことを、とは言わなかった。言わずとも知れている。

「まあ。やりすぎだとは思う」

「誰のせいだよ」

「だから止めなかったろ」

「おれは次は止めますよ。もう一人で決めないで下さいね」

「……わー。さすがだなー小西」

いつかと同じように茶化して、肩の荷が下りたように目を伏せて、その人の表情はようやく緩んだように見えた。


全ての競技が終わり、全校生徒がグラウンドに整列した。結果発表。放送部の三年の声が響く。

四位青龍軍、162pt。三位白虎軍、183pt。準優勝玄武軍、235pt。そして。

「優勝、朱雀軍!238pt!!」

わああああ、自軍が背中で歓声をあげる。優勝旗を受け取る小萩さんにめいっぱいの声援と拍手を送る。

リレーに勝ったんだ、結果はわかっていた。それでもなんだかまだ信じられない気分だった。戻ってくる小萩さんを隣で迎える。

「ほんとに勝てるとは思わなかったです。小萩さんのおかげかも」

「そう?じゃあ貸しイチね!」

「貸しって。何で返せばいいんですか」

「何がいいかなぁ。ゆっくり返してもらおうっと」

冗談めいて笑う。この人とこうして並ぶのも最後か。

皆さん、お疲れ様でした。体育祭は楽しめましたか?優勝した朱雀軍の皆さん、おめでとうございます。他の軍の皆さんも精一杯戦っている姿が素晴らしかったと思います。勝ち負けに関係なく、この日のために練習を重ねてきた成果が発揮できたことが一番良かったのではないでしょうか。これで身に付いた力を基に、今後の学校生活を充実したものにしていきましょう。これをもちまして閉会の挨拶とさせていただきます。

校長の声で閉会式が終わる。体育祭が終わる。

「はーい、じゃあ業務連絡です。今から全員撤収作業に入って下さい。実行委員はいったん本部集合」

卜部のアナウンスを合図におれたちの戦いは終わって、撤収のために生徒たちが動き出した。余韻もクソもねえな、でも今日撤収しとかないと明日辛いから。手塚になだめられながら一緒に椅子を運んでいると、向こうから江中が来ておれたちの前で足を止めた。

「お疲れ。やっぱ個人技だけじゃ体育祭は勝てないな?」

手塚も江中も陸上部だ。手塚の軽口に江中がクワッと目を見開く。

「くっそー。リレーで白が一位になったら梅原さんに付き合って下さいって言おうと思ったのに!」

「……おお」

思わず声が出た。江中が梅原さんを?変わってるなこいつ……梅原さんほどじゃないが。あ、そうか、むしろ変わってる者同士で相手としてはちょうどいいのか。

「おお、じゃねえよ。お前らのせいで人生設計が狂ったじゃんか!」

「人のせいにすんなよ。別に負けたって言ってくればいいだろ」

「でもさー、こういうのにはいいタイミングってのがあるじゃん」

「ビビってんの?」

「うるせえよ!」

むきになる江中にゲラゲラ笑う。

「江中ー、サボってないでこっち手伝ってよー」

「サボってない!そう見えたとしたらそれは全部朱雀のせい!郵便ポストが赤いのも、こんなに空が青いのも!!」

「わかったわかった。いいから」

影野に呼ばれて連行されていく江中を見送る。

椅子をあらかた片付け終わってまわりを見ると、グラウンドはもうすっかりいつもの姿に戻っていた。引き直されたライン、外された体育祭の装飾、下ろされた横断幕。おれたちの都々逸。

だが余韻は覚めない。みんななかなか帰ろうとしない。おれもなんだか校庭を離れがたくてダラダラとそこで同級生たちと話していた。

「小西先輩!」

「ん?」

呼ばれて振り向くと、朱雀軍の一年女子がそこにいた。数人並んでちょっと緊張した顔。その中の一人が口を開く。

「よかったら、鉢巻きください……!」

「え?あー」

まぁいいか。おれには一本あればいいし。

「いいよ。どうぞ」

ポッケに突っ込んでいた予備の方を差し出すと、ありがとうございますと頭を下げて細い手がそれを受け取った。もらっちゃったキャー、と声をあげて走り去る背中。自分の身にこんなことが起きるなんて思わなかったな。副将効果ってすげえ。

「見ちゃった」

平田が笑いながら近づいて来る。

「副将ってすごいんだな」

「ね。よかったじゃん。優勝おめでとう。副将お疲れ様」

「おー。平田もお疲れ」

「うん。ね、いいものあげる」

平田が差し出したのは、青龍軍の青いそれだった。

「さゆり先生のもらったの。小西にあげる」

「……ん」

受け取る。ありがとう、とは言わなかった。見透かされている気がして照れくさかった。

「お前は?」

誰とも換えてないのかよ、と手元を覗いて話を変える。目に入る青い布の名前。渕崎麻美。

「渕崎と交換?」

「うん。昨日ね」

もし麻美ちゃんが出られなくても、一緒に走れるように。

「そっか」

それをなんでもないように言う平田が、おれは少し誇らしかった。

「小西くん、お疲れさま!あとで総括するから副将も本部集合お願いね」

「おー、わかった」

声をかけてきた征矢に頷く。ふとその右手に握られた白い布に目をやると、ひらりと風に揺れて「瀬」の文字が見えた。

「瀬尾さんの?」

「うん」

矢野ちゃんともらいに行ったの、とはにかむ。

「生徒会だから、って。役得」

「生徒会ね。卜部は?」

「うらくんのはファンの子たちのものでしょ?あっちで女子たちに囲まれてたよー。誰がもらえたんだろうねえ」

何がおれモテてんの、誰に、だよ。自覚がないとは言わせないぞあの野郎。

「小西!」

もう一人の生徒会役員がおれを呼んだ。大西先輩と並んで手を上げている。

見慣れた二人。こうして呼ばれるおれもそれを当然と思っている。当然だと思えているから、野球部がなくなった今でもそう思えるから、だから。

「なんですか。パンなら買いに行きませんよ」

「じゃあ松崎に頼むか。って、そうじゃなくて」

しゅるりと頭から鉢巻きを外し、右手に持っていたもう一本と一緒におれたちの手を取って、

「これは、お前らにやる」

中西先輩はその二本の黒い布をおれたちに握らせた。

「要らねえよ……!!」

めずらしく顔をこわばらせて、大西先輩がそれを突き返そうとした。

「押し付けてんじゃねえよ!絶対面倒なことになるだろうが!」

「いいから持っとけよ、おれだって嫌なんだよめんどくせえ!」

「な、中西が大西に鉢巻きを……?!」

「おーおなか!!おーおなか!!!」

いつからそこにいたのか、うちの部員たちが騒ぎ出す。

「小西先輩!それ私にください!!」

「え、なん、ちょっと」

遠巻きで見ていた女子たちに突如取り囲まれ、おれは思わず身をすくめた。

「やだ小西。ちゃんと応えてあげなさいよ」

「無理ですよ、小萩さん。小西は中西先輩や小萩さんと違ってこういうのには慣れてないんです」

「ヘタレだもんね……」

平田の言葉に小萩さんがうんうんと頷く。

「そうですよ弱小野球部なめんなって感じです。つーかお前もだろ平田」

「私は別に平気だもん」

「やーいヘタレヘタレーー」

鰐口が面白がって囃し立てる。

「えっ?!小西先輩ってヘタレなんですか?!」

「そう!ヘタレ!!だから押せばもらえるよみんな頑張って!」

「小西くん!!」

「小西先輩!!」

「小西せんぱーい!!!」

小萩さんと鰐口のせいで、話したこともない女子たちまでもが口々におれの名前を呼んで面白がる。都々逸部の女子たちは言わずもがな、先輩たちも近くにいるのにおれを助けようとさえしない。むしろ矛先が自分たちに向かわないのをいいことにニヤニヤと笑みを浮かべてこちらを見ている。

「めんどくせえ……!」

「めんどくさいのにそれでも誰にも渡したくないのね?!」

「負かしてやると必死の後輩!それに応えて全力を出すも負けてしまう中西先輩!!鉢巻きを渡して負けを認め、暗に好意を伝える中西先輩!!だからこそ鉢巻きを誰にも渡したくない小西!!」

「つまりなかこに……?!」

「そして中西を慰めない大西!!!」

「おおなかこに……?!!」

いやだからなんでそうなるんだよ、と口を挟む隙もない。

「…………小西」

「なんですか!!」

元凶に呼ばれて振り向けば、へらりと笑って

「好きだよ。大事にしてくれよな」

ぎゃあああああああ、悲鳴にも似た声がグラウンドに響く。

「中西先輩ったら!!中西先輩ったら!!!」

「尊い……!!!!」

「なんなんですかなんで火に油を注ぐような真似を」

「スケープゴートって言葉があってだな」

「たち悪……!!インポのくせに!!」

「ええっ、なんで小西がそんなこと知ってるの?!確かめたことがあるの?!!!」

「つまりなかこに!!」

「なーかこに!!なーかこに!!!! 」

「あああああああうるせえ!!いらねえよこんなもん!!!」

思わずやけになって高く放り投げたその黒い布は、笑い声の響く九月の青空に舞った。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

おいでよ西高都々逸部 小早川 @kobayakawa_d

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ