第7話 私と私と私と私と私と私と私と私と私と私


「……えっ?」


 今ハジメは何と言った? 私も擬人化の一人だと言ったのか……?


「やっぱり気付いてなかったんですねー。もっと早く私が言えば良かったですー」

 少し落ち込んだ様子のハジメは謝罪の言葉を述べた。

 いや、今はそんなのはどうでもいい。なんで私がブログの擬人化なの? 私は私で擬人化じゃないはずだよ。



「私、実はサイシンより少し早く起きたんですよー。そうしたらもう一人私がいてー、その私は私たちに驚きながらも出社していったんですよー」

「出ていく間際に「夜、私たちが起きてるとき何処にいたんですかー?」って訊いたら、「そんなの怖くなって外に出ていたに決まってるでしょ」って言ってましたー」


 驚きながらもなぜかハジメの言葉に納得し、受け入れてしまっている自分がいる。


 そうだ、記憶が曖昧だったからってスマホをタクシーに置き忘れるようなヘマはしない。酔ってなんかなかったんだから。

 朝欠勤の電話したとき、高木さんが私をオレオレ詐欺だと疑ったのも、欠勤すると言ったときに「は?」と言ったのも、もうすでに私が出社していたのだから当然だ。



 そして何より、私は自分が消えることに恐怖を感じていなかったことに今更ながら気付いてしまった。




「でも、そうなると私のブログはどこに……」

 最新の記事を見ても1カ月前のだ。

「それならここにー」

 そう言ってハジメが見せたのは下書きのページだった。



 そうだ、私は飲みながらブログを書いていて、その途中で寝落ちしていたのだ。

 きっと書き途中だから、続きだから性格も固定されていないし自由に考えられたのだ。




 そう納得しながら書き途中のブログを読み終わると、ドアを開ける音が聞こえ――

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