第3話
片桐が寝て、その時周りに誰もいなければ何とかなると思って、俺は機会を待った。
しかしその機会はなかなか訪れなかった。
片桐が寝ても近くに人がいたり、まわりに俺と片桐だけになっても、片桐が起きていたり。
条件は二つしかないのだが、それが都合よくそろってくれないのだ。
俺は待った。
待ち続けた。
そして待ち始めて半年が過ぎたころ、ようやくチャンスが訪れた。
片桐が寝て周りに誰もいない状態になったのだ。
俺は片桐にそっと近づくと、その髪の毛を一本つかんでゆっくりと抜いた。
抜いた瞬間、片桐の身体がぴくっと動いた。
俺はあせったが、片桐は起きることなくそのまま寝続けた。
俺は虎の子の髪を財布の奥にしまいこんだ。
退社後、家に帰るとさっそく準備をした。
財布から慎重に片桐の髪を取り出した。
するとその髪が前方にふわりと飛んでいってしまった。
暑いから開けていた窓からの風によるものだ。
――おいおいおいおい。
俺は髪が落ちたとおぼしきあたりを探した。
するとほどなく見つかった。
――ふう、ちょっとあせったぜ。
俺は道具一式を持つと、車に乗り込んだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます