第8話本当しか・・・
消え逝く様な小鳥のさえずり、水面を消し分けて行くアメンボたちの波音を思わせる様に、機関車は真似夜の近くを通り過ぎている。
数メートル、数センチ、この空間には距離を測るすべがなく、目の前ほどで無いくらい近くとしかいいようがない
「おーい、誰か居ませんか」と声を掛けするも返答がない。
過ぎ行く機関車の中は薄暗い明りに照らされてはいるが人影は見えない。
一二三四、五と車両を数えてみて、後から連なって来る様子に数えるのを止めた。
「すいませんー、誰かー」
・・・・・・
「はーはーい、はーい、呼びましたかー」
声がする、ようやく・・・疲れた
「誰かー出て来て、話をしてーー」
空間を飛び交う様にリズムにのりながらユメダがやって来る
「ユメダです、真似夜さんの夢の進行役です。」
「あっ、ユメダさん、・・・何処に居たんですか
・・・どうしましょう」
「真似夜さん、どうですか、真似夜の夢の感想は」
感想と言われても、どう返答していいか
「・・・そうですね、分かりません・・・楽しいのか、何をすれば良いのか、分かりません・・・進行役ですよね」
「進行役です、間違いないので、安心して下さい」
ユメダさんには、悪いけど、もう夢から覚めたくなって来た。
提案して見ようか・・・楽しそうに会話して来るけど、起きたいと。
「ユメダさん、真似夜は、夢から覚めたいんですけど、どうしたらいいか教えて下さい」
「夢から覚めるとーー、夢はまだ、始まってませんよ、真似夜さんにはプランが無いのですか」
夢のプランーー、無い事も無いけど、何か、考えと違う気がして
さっきまでの支離滅裂な展開の様な状況が、また来るのかなんて、今は余裕が無い。
・・・ユメダさんに質問したら、良いプラン出来るのでは
夢の進行役だし、責任もあるはず
夢も始まっていないと宣言していた
今度はちゃんとやれば、楽しい、嬉しい展開にしてくれるかも知れない
「真似夜さん、どうしたのですか、お声が、止めたいですか」
「ユメダさん、質問して良いですか」
「はい、何でも質問して下さい」
「沢山ありますが、先ず一つ、夢は幾つ見れますか」
「幾らでも・・・覚めなければ、見れます」
幾らでもか、数えるくらいで、充分満足なんだけど
「覚めなければって、どう言う事ですか」
「夢は、・・・簡単に言うと難しいです。見ている事に気付かず見続けたり、見たくも無いものを見たり、見ていたいのに終わってしまったり・・・難しいです」
夢は難しい
確かに想う様に行かない事が多いな
知らない街や、知らない国、知らない人、知らない生き物と出会って、何も不思議に感じず、夢の世界が始まって行く
一言ではいいあらわせない
でも、楽しい、嬉しい、見ていたいから夢を何度も見るんだ
日頃の疲れを取る為にとも言われてる
確かに、今、疲れてる、支離滅裂な展開に、今、此処にいる違和感
此処には真似夜と、ユメダさんしか、・・・機関車も、まだ、車両が続いてる、もう、何両あるのよ
「真似夜さんには見えないんですか、三千・・・」
「サンゼンーーーーーーー」
三千両って事・・・一ニ三、四、数えられないよーーー
「すみません、実は、ユメダも分かりません。数えた事も有りません。廻っています。何キロかは、分かりませんが、円を描いて同じ線路を廻っているのです」
廻っているの、同じ線路を、何の為に、意味無いの
誰も乗客も、乗って居ないのに
「ユメダさん、真似夜は・・・機関車に乗りたいんですけど、乗れますか」
「機関車に乗りたいんですか、・・・分かりました、乗りましょう、機関車に」
「真似夜さん、一つだけ、何かあれば、直ぐに夢の進行役のユメダを探して下さいね」
探す・・・
どう言う事ですか
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