第4話本当さ・・・

銀座の片隅、艶やかな色彩のブランド名看板が立ち並ぶ通りのキラ美かで派手な流行りの雰囲気で無く、道行く人々の快適な会話も届かない二、三通路奥に入った通りにその店は有った。

ガラス張りの煉瓦敷きに内側からは両開きのカーテンで、何時も全開に開かれて来る客は拒まない様子であった。

店内からは流行りのBGMが外に漏れて騒つく感じで無く、異国調のどこか懐かしい静かな曲のオルゴールが流れていた。

道行く人は、殆んどが素通りするばかりで、関心も寄せてくれない。

通路から半階階段を下った位置にあるせいもあるかもしれない。

経営は成り立っているのか、幾つも質問をしてみたくなる気にさせてしまう装いであった。


「来ないね」

「何が」

「人よ、人間」

「人間か・・・そう簡単に来ないよ、結界あるし」

「結界か・・・破れば、来るでしょ」

「破れれば、・・・今日あるかな」


店内カウンターに居る二体のオオカミの縫いぐるみが会話している。

ジンとマル、毛並みが多いのがジン、モコモコな感じなのが、マル、バイトの店番を店長から頼まれていた。

「チラチラして眩しいな、バイトも楽じゃねえな」

赤や青や黄色やオレンジ色の遮光が人が通る度に店内を照らしていた。

「自動車のライトみたいに強くはないが、眩しいな

なんか、店長が、オーラがどのこうのというらしいが、分からんな」

「誰か来たら知らせろと言ってもなぁーーー」

「本当、本当、時間も進むのが遅いし、遊んでたら

直ぐ夕陽が沈んで来ちゃうのに、ただ外をボウーと眺めてるだけは辛いよな」

ボオーン、ボオーン、ボオーン、ボオーン

午後の二時の時を壁時計が鐘を鳴らして時間をつげている。

「ジン、暇だな、人間来ないかな、今日来るかな」

「わからん、でも店長が、店番頼んだ訳だし来るんじねえの」

「でもよ、こんなに光が照らされてるのに、もしかして、鍵がかかっているとか、看板が裏返したままとか、マルちょと前見てこいよ」

「何言うんだよ、ジンが行けよ、・・・ドア開けて見ようか」

「駄目だろ、それは、間違ってるよ、人間が、自分の意思で来ないと意味がないよ」


コツコツコツ、カンコンカンコン、リンリンリン

通路から一人の女性が店にやって来る

「あっ、店長ー、お帰りなさい」

「ふぅー、ジン人間はやって来た」

店長のアンドレが問いかけた。

長身の茶髪の背中の越し長髪の顎がキュッとしたラインの二十三歳で、切れ長の眼線を寄せて細ばな先を動かして聞いて来る。荷物を中央のガラスショウケースの上に置いて、エプロン姿の黄色いシャツの腕を捲っている。

「まだです」

可笑しいわね、報せはあるのに・・・まだ、余裕ありそうね

後ろ髪を束ねてゴムで結んでいる

「おやつにしようか、休憩して、ほらっ、奥へいらっしゃい」

「おやつーーー」

「ありがたいです」

「ちょっと、その姿のままおやつは無理でしょう」

「すみません〜」

「人間の物を食する時は人間に成る事、おやつなんて私らには存在してないのよ」

二体のオオカミの縫いぐるみは呪文のようなものを

口ずさんで、それぞれ十歳くらいの少年少女に成り

おやつを食べ始めた。

「駄目でしょ、手を洗って来てからよ、二人とも

お掃除で汚れてるでしょ」

「まさか・・・」

「マル、手を洗いに行こう」

ジンとマルは手洗い場に向かって行った。


「いただきまーす」

「まんじゅうだーーー」

「こしあんとつぶあんとあるから、好きなのを選んで食べてね」

「私こしあん」

「俺つぶあんかな」

それにしても遅いわね、人間って、決定的な生き物じゃないのかしら。

・・・考えるなんてややこしい、迷いに侵されて

大変ね。

店じまいには早いけど、私も暇じゃないし

キラキラ、キラキラ、キラキラ、キラキラ

ギーク、ギーク

あらっ、やっと来たみたいねー

さてと、どうやら



























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