⑨②話 黒坂真琴伊達領へ・義参上

【時系列・原作書籍⑤巻・第四章・磐城巡察】


◇◆◇◆鬼庭左衛門綱元


「殿、大変でございます。今し方米沢より御方様が馬を走らせ宿に御到着にございます」


米沢の御方様とは大殿・伊達輝宗様の御正室様で現伊達家当主の御母君。


義様は伊達家家臣団に引けを取らない乗馬の名手。


だからといってわざわざ雪がまだ残る米沢からわざわざ来たのか?


玄関に出迎えに行くと、御髪を乱した義様が足をすすいで貰っていた。


「御方様、どうしてこの様な所に?」


「綱元殿か、久しいの~どうしてここに?切れ者のそちがわからぬはずはないであろう」


「常陸大納言様の来訪が耳に入りましたか」


「常陸大納言様に是非ともお目にかかって小次郎を引き取り伊達家の内紛の危機を救ってくれた礼をいたさねば。それに小次郎が仕えているお方の顔を見ておきたかったのじゃ」


「常陸大納言様にお伺い致しますので、湯で身なりを」


「わかっておる。お~そうじゃ、来る道中で雉を仕留めてきた。これを今宵常陸大納言様に食して貰う。下ごしらえを頼みたい」


「はっ、台所にいる我が妻に頼みます」


雉を受け取っていると奥の間から小次郎政道様が玄関に出て来た。


「まさか母上様がこの様な所まで足を運ぶとは驚きにございます」


「お~小次郎、息災であったか、ん?良い体つきになったの~、どれもっとちこうよって顔をよく見せてくじゃれ」


小次郎政道様が近くに寄ると、両肩に手を軽く当て体つきを確かめるように軽く叩くと、


「凜々しい腕になりなさったなぁ~母はうれしく思いますぞ」


「黒坂家の美味い飯、そして一流の剣客が剣を教える道場があります。家臣一同そこで稽古を」


「柳生新陰流を会得したと手紙でよこしてくれたことがありましたが、細いあなたがと信じられませんでしたがその腕の太さ、信じましょう。黒坂家に預けて本当に良かった」


「御母上様いつまでも玄関で長話は、さっ、まずは湯に入って旅の疲れをお流しください。その間に御大将にお目通りのお願いを致します」


「頼みましたよ、小次郎」


「はっ」


小次郎政道様は常陸大納言様に義様の目通りの許しをお願いしに行くと、常陸大納言様は二つ返事快く許してくれた。

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