⑨⓪話 黒坂真琴伊達領へ・体調不良真琴
【時系列・原作書籍⑤巻・第四章・磐城巡察】
◇◆◇◆【鬼庭左衛門綱元】
夕飯をお出しするとその日の夕飯は珍しくお残しが多かった。
その為、台所を取り仕切らせている私の妻が口に合わない物をお出ししてしまったのかと青ざめていた。
失礼があってはならないと思い常陸大納言様の部屋に出向き襖の外から声をかけると、襖が開き柳生宗矩が廊下に出て来た。
開いた襖から見た中の様子は床の用意を小次郎政道様にさせており常陸大納言様は寝間着に着替えているところだった。
「御大将はお疲れが出ると熱を出されることがある。寝ればすぐ治るので心配無用」
「御無理をそれがしはさせてしまいましたか?」
「いや、風呂に何回も入りすぎて疲れただけだ。御大将御自身がそうおっしゃっている。気にするな」
「はぁ~」
そう言われてもなにもしないわけにはいかなく常陸大納言様の衣服を畳んでいる小糸小滝姉妹のところに行き、
「常陸大納言様が熱を出されたとのこと。なにか薬はあるか?」
「はい、私達の商売道具だからいつも持っております。熱冷ましはこちらに」
「どれ、それを毒味する。用意致せ」
煎じられた熱冷ましを飲む。
大変不味い薬だが飲むと体の芯が温かくなるのを感じた。
「毒はなし。これを持って行く付いて参れ」
小糸小滝姉妹を連れ常陸大納言様の寝所に行く。
「常陸大納言様、熱冷ましの煎じ薬用意させました。毒味はそれがし済ませておる確かな物にございます」
襖の外から声をかけると襖が開く。
横になられていた常陸大納言様は身を起こし、
「そうかありがとうね。軽い風邪だから寝れば治ると思うけど貰うよ」
「御大将が口にする前に私が毒味を」
部屋の隅に控えていた小次郎政道様が懐から小さな皿を取り出しそれに注ぐように言ってきたが、
「小糸小滝姉妹が入れてくれた薬なんでしょ?二人なら大丈夫。邪な気、今も感じないから」
「いけません。万が一なにかあれば一大事。御大将の御命、そして伊達家も大変な事に。念には念を」
「大納言様、わかっております。御身分が高い方がくちにする物、家臣が毒味当然のことだっぺ」
「姉様の言う通りでした。私達を信じている、その御言葉が聞けてとても嬉しいでした」
「兎に角、御大将が飲む前に私が」
小次郎政道様が毒味をすると渋い顔を見せた。
「う~不味い・・・・・・しかし胃の腑が温まるのを感じる。それにどこか懐かしい味、子供の時に飲んでいた薬に似ている。御大将これなら大丈夫かと」
「不味いのか・・・・・・でも風邪こじらせたら大変だから飲むか」
茶碗に注いだ煎じ薬を飲み干す常陸大納言様。
「う~不味い、もう一杯」
「あははははっ、不味いのにもう一杯だなんて変な殿様だっぺ、ごじゃっぺ、あははははっ」
「姉様!姉様の失礼お許しくださいでした。大納言様、薬は適量という物がありましてそれが一回分なのでお出しできませんでした」
「はははははっ、これは渾身のギャグだから気にしないで。小糸は笑うとそんな可愛い顔するんだね、いい顔だったよ」
「何言ってんだ・・・・・・です。う~ごめんなさい。言葉がどうしてもぬけなくて」
「お国訛りは誇っていいことだから無理に治さなくて良いから。おっほんと体が中から温まる感じがする。これで一眠りしたら熱引きそう」
「では、ごゆっくりお休みください。なにかありましたらすぐにお申し付けを」
小糸小滝姉妹とともに部屋を出ると、
「姉様、大納言様に向かってごじゃっぺなんて言ってひやりとしました」
「なんか喜んでたわねあのごじゃっぺ大納言様」
「姉様!」
「わかっているわよ」
この二人の娘、成敗される日が来るのではと正直不安だ。
だが、翌朝には常陸大納言様の熱は下がり、朝食も出した料理全て食べられるほど回復なされていてホッとした。
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