⑧⑧話 黒坂真琴伊達領へ・怒る常陸大納言
【時系列・原作書籍⑤巻・第四章・磐城巡察】
広間に入ると、宿主・光衛門が畳みに額を付けひたすら謝っている場だった。
「綱元はあの姉妹のこと知っていたのか?」
「はっ、常陸大納言様の接待にと私の一存にて用意した女子にございます。お気に召さなかったようで変わりの湯女を用意致します」
「気に入る気に入らないの話ではない。むしろ好みの黒ギャルだ。だがだな、俺は人を物として扱う振る舞いが嫌いだ。身分低かろうと、女子であろうと、人は人。接待の道具としたことに腹が立つ。この様な接待を続けるつもりなら俺は帰る」
物腰が柔らかな人柄だと思っていた常陸大納言様が発する怒りの言葉は背筋を凍らせる響きを持つ言葉だった。
座から腰を上げようとする常陸大納言様、怒りを静めなければ。
やはり最早これまでか・・・・・・。
「この鬼庭左衛門綱元の命でどうかお許しを」
私は常陸大納言様に背を向け、短刀を抜き切腹を試みると腹に刺さる前に柳生宗矩の鉄扇で短刀が弾き飛ばされ、襖に刺さった。
「控えよ鬼庭左衛門綱元、御大将は切腹での謝罪は禁じておる。御大将そうですね?」
「あぁ、その通りだ」
「申し訳ございません」
「命を賭けた接待であることは承知した。しかしだな俺はこの佐波古の湯で静かに湯治が出来ればそれが最高のもてなしなのだ。その様な事が出来る宿なら定宿として【黒坂家御用】の看板を許したいと思っているくらいだ」
「黒坂家御用宿が伊達家領内に・・・・・・大変光栄で有り難いこと」
「兎に角、切腹の謝罪は許さぬ。どうしてもけじめを付けるというなら頭を丸めてこい。それでこの事は不問とする」
剃髪での謝罪、ありがたいお許しに畳みに額を擦り付ける。
「仰せのままに」
私は急ぎ剃髪をした。
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