⑧⑦話 黒坂真琴伊達領へ・小糸小滝姉妹
【時系列・原作書籍⑤巻・第四章・磐城巡察】
「今厠から出て来たあの若いお方こそ大納言黒坂常陸守様だ。風呂が大変好きで夕飯後にも入るそうだ。その時お背中をお流ししご寵愛をうける。良いな」
小糸小滝姉妹に言うと、
「姉様、あの方って神社でです」
「鬼庭様、本当にあの様な私達とそう歳が変わらないように見える方が常陸大納言様なのですか?」
「あぁ、織田信長公の軍師として数年で今の地位までなられたお方間違いない」
「姉様、私あのお方なら抱かれても良いですです」
「私もそう思ったわ。どんなむさ苦しい強面の男なのだろうと想像していたけど全然違う。神社の件、あの男達を無礼打ち出来たのにも関わらず慈悲を与える裁き、器の違いを感じるわ」
「あのお方は兎に角女子を大切に扱うと言われている。強引に自ら抱こうとはしないだろう。お前達から迫れ。そしてご寵愛を受け側室にしてもらうのだ」
「そして伊達のお殿様に常陸大納言様の言動を逐一お知らせする。それが私達の役目」
「そうだ。そうすれば弟を当主として御家再興が許される」
「母上様と弟が三春でまた暮らせる・・・・・・」
少し震えながら御手水で手を洗う常陸大納言様を2人はしっかりと見ていた。
夕飯後一休みをして風呂に向かう常陸大納言様を仲居が知らせてきたので、小糸が向かった。
四半時もせず部屋に戻ってきた小糸は、
「でれすけだっぺよ。私の裸を見ても抱くどころか背中も流させないんだから!」
「姉様、怒らないでくださいです」
「やはり一筋縄ではいかんか・・・・・・」
「鬼庭様、次は私行きますです」
「うむ、次の風呂には小滝が行け」
翌早朝、常陸大納言様が風呂に向かった為、慌てて小滝が向かったが、結果は同じ。
抱かれるどころか背中を洗う事すら許されずにすぐに風呂から出て行くように申しつけられた小滝が部屋に戻ってきた。
「鬼庭様、私達は大納言様のお好みではないようです」
「う~、神社でそのほう達を見たとき鼻息を荒くして『くろぎゃるきたーーーー』と謎の言葉を発していたがあれは好みの女を見たときの興奮ではなかったのか・・・・・・」
どうしようか少し考えていると、柳生宗矩が、
「御大将が御立腹、話があるからとお呼びです」
「はっ、すぐに」
廊下を進むと後ろから、
「鬼庭殿、御大将の逆鱗に触れてしまわれたかもしれませんぞ」
その言葉で私は切腹を覚悟した。
小糸小滝姉妹を密偵として送り込む事は伊達家の企てとしてではなく私一人の一存で湯女を差し出したこととして収めるために。
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