⑧⑤話 黒坂真琴伊達領へ・本陣湯本屋
【時系列・原作書籍⑤巻付近】
「お疲れ様でございました。宿の湯本屋でございます」
佐波古の湯に建てた大きな宿に常陸大納言様を案内する。
店の者達は全員、門から玄関まで両端地面に両手を付き土下座をする。
『大納言』と言う特別高い官位を持つ者に対して当然の礼儀だが、常陸大納言様は、
「あ~土下座はやめて」
「御大将、仕方ありません。これが普通なのですから」
「しかしだな宗矩」
「はいはいわかっております。皆の者、常陸大納言様は土下座を好まぬ。腰を低くし頭を下げるだけで良い。鬼庭殿、その様に手配してください」
「はっ、はい。皆の者、立って頭を下げよ」
私が指示すると、恐る恐る皆立ち頭を深々と下げるが、
「まだかたっ苦しいけど仕方ないか・・・・・・数日泊まらせて貰うよ」
「おい、急いで濯ぎの水、あっいや、湯を盥に持て。常陸大納言様は冷たいのはお嫌いだ急げ」
足濯ぎの湯を持ってこさせ、仲居が恐る恐る常陸大納言様の足をすすぐ。
「お~湯の濯ぎ良いね~早く風呂入りたい」
「御大将、宿を検分いたしますのでしばし部屋にて」
柳生宗矩が家臣に指示して宿をくまなく検分させている間、大広間に常陸大納言様を案内する。
そして、宿の主人に挨拶をさせる。
「この宿の主・光衛門でございます。天下の大納言様を迎えられたこと光栄の極み。なんなりとお申し付けください。どうかいついつまでも御逗留を」
「はははははっ、いついつまでもって湯治は長くしたいけどそんなにゆっくりは出来ないから二泊くらいかな」
「そんな五泊はしていただかねぇ~と困ります」
光衛門の言葉に目つきが変わる柳生宗矩、それには殺気が込められており殺気に当てられた光衛門が言葉が詰まり私に助けを求める視線を送ってきた。
「柳生殿、その様に睨まないでください。仙台の殿に接待に出向くよう早馬を走らせました。おそらく到着がそのくらいになるかと」
「へぇ~政宗殿自ら出張ってくるんだ?」
「御大将、罠かもしれませんぞ」
「宗矩、そう疑わないの」
「しかし・・・・・・御大将その様に長い逗留となるなら警護は増やします。五浦城の兵を呼び寄せます。鬼庭殿、他の宿も空けて黒坂家の兵が寝食出来るよう手配を。これが出来ないなら御大将の滞在は認めません。これはお方様より御大将の御命何より優先することと命じられている事」
「茶々に命じられているのか・・・・・・仕方がないか、宗矩に任せるよ」
「鬼庭殿よしなに」
「はっ、急ぎ手配致します」
すぐに近隣の湯宿に部屋を空けるよう指示をした。
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