⑧④話 黒坂真琴伊達領へ・いわき湯本温泉神社騒動

【時系列・原作書籍⑤巻付近】


「御大将、参拝だけですからね」


冬の終わりを祝う祭りが行われていた境内は人が多く柳生宗矩はそれを気にしていた。


多くの護衛を付けようとしたが常陸大納言様は殊の外神社を大切にするためそれを拒否、柳生宗矩と私だけそばに居るよう命じ参道をスタスタと進む。


「おっ、手水が温かい。温泉の手水、いいね~」


手を清めた常陸大納言様は拝殿に参拝を済ませると、参道に出ていた出店をチラチラと見ながらゆっくり家臣が待つ鳥居に向かった時騒ぎが聞こえた。


「おうおう、おめぇ~ら確か安達ヶ原の山姥じゃねぇ~か、な~にこんなとこに来てんだ?」


「けけけけけっしってっぺ、猪苗代の村で見たことあっぺ。な~に大したべべ着て」


むむむ!あれは殿から預かった二人!


「黒ギャルきたーーーーーーーーーーー」


私が慌てて止める前になにか興奮した用で雄叫びをあげてその姉妹に近づく常陸大納言様。


「なに大の男が黒ギャル・・・・・・げほんっ、可愛い娘に絡んでいるんだ?安達ヶ原の山姥と聞こえたがこんな可愛い妖怪いるか?それにこの二人から感じる気はとても清々しい綺麗な気、きっと多くの人の手助けをしてきたんだろうね」


「若造がな~に言ってんだ?くらつけてやっぺ!」


「けっ、からかって遊んでたのにつまんねぇ~ごじゃっぺ出て来たな!」


男達が太刀に手を当てた瞬間、脇をスルリと抜け、柳生宗矩の手は二人の喉元すれすれで止まっていた。


手だと言うのにまるで短刀を当てているような気迫で男達二人は身動き出来ないどころか言葉すら出せない。


額に滲む汗が緊張を語っていた。


「御大将、斬りますか?」


「宗矩、その二人は俺を誰だかわからないで売り言葉に買い言葉で喧嘩になりかけたわけだから」


「はっ、では無名の武士と武士の喧嘩と言うことで。ですが、神社境内の立ち居振る舞いとしては良くない。そうですよね?」


「あぁ、女性を傷付けた言動にはそれなりに罰を与えなければね、綱元」


「はっ、この鬼庭左衛門綱元がこの二人に仕置き致します。おい誰かこの二人を縛り平城へ」


手刀が解かれると二人は腰砕けになり地面に座り込み、


「え?鬼庭様がなぜ?」


小さく呟いた。


「命拾いしたな。もし抜いていたら首と胴体は離れていただろう。それはそれとして、伊達家家臣としてこの様な振る舞い恥ずべき事、叩きの刑と致す。引き立て」


二人は私の家臣に連れて行かれると、小糸小滝姉妹は呆然としていた。


常陸大納言様は何事もなかったようにその二人に軽く手を振り、鳥居へ歩みを続けた。


「いや~黒ギャルいるんだね~可愛かったなぁ~」


くろぎゃる?どういう意味なのだろうか?よくわからないが可愛いと褒めていることに安堵した。


小糸小滝姉妹には他の家臣を護衛に回し宿に向かわせることにした。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る