㊼話 わんにゃんわんにゃん

【時系列・原作書籍④巻付近(原作書籍④巻店頭激品薄)】


「愛は上方で黒坂常陸様の絵物語が流行っている噂は知っていたのか?」


猫姫の初夜のあと翌日、愛に聞くと、


「なんのことですワン?」


「わん?」


「冗談ですわよ、ふふふふふっ」


愛は側室との初夜のあとだと言うのにあかるげと思う振る舞いだった。

武家の姫たる振る舞い?

流石、田村家の血を引く姫。


「上方に忍ばせている草からはなにも聞いていないが?」


「ふふふふふっ、本当に冗談です。大納言様の絵に描かれた美少女にはなぜか獣の耳が描かれているため大名の奥方の遊びで、わんにゃん遊びが流行っているそうです。草となっている忍びには大名遊びなどは知らせるほどの事ではないでしょうけど」


「わんにゃん遊び?」


詳しく聞くと、奥方の遊びで盃に注がれた酒の前でじゃんけんをして、『わんにゃんわんにゃんわんわんにゃっにゃ』のかけ声をして手で立った猫耳、垂れた犬耳を真似て、じゃんけんに勝った方と同じ耳をしてしまうと酒を飲む遊びだそうだ。


男共の宴席でその様な遊びをすれば面白いと言うより・・・・・・汚い。

髭をたくわえたむさ苦しい男共の犬猫の姿を誰が見たいだろうか?


『わんにゃん遊び』より『化け物遊び』になりそうだ。


むさ苦しい男共が猫耳や犬耳を真似る宴席・・・・・・地獄絵図。


「ふむ、そうであったか・・・・・・」


「殿は知ってるものとばかり思っていました。あっでも確か大納言様と言うより、家老の前田・・・・・・慶次様?が巷で飲むときにやっているとか・・・・・・」


「まったく知らなかった」


「大殿様と義母様は毎夜それで酒比べをしているそうですよ」


「父上様と母上様とが!?」


「はい、そう聞き及んでいます」


仙台城に小名浜城の城造りが忙しくその様な戯れの話は全く聞いていなかった。


しかし、父親様と母上様が犬と猫のまねごと・・・・・・見て見たい。


「どうです、私達も今宵」


「うっ、うむ・・・・・・」


その夜、愛とわんにゃんわんにゃんわんにゃんにゃんとじゃんけんをしながら飲む・・・・・・一世一代の酔いとなり我は三日三晩二日酔いに悩まされることになってしまった。

三日三晩なのだから三日酔いか?


愛のじゃんけんに一度も勝つことなく知らぬうちに三升飲んでいた。


二度とやるまい、わんにゃんじゃんけん。


恐ろしい酒宴だ。


・・・・・・晩年飲み友達となる黒坂常陸様の側近、柳生宗矩とこの遊びをすね事になるとは思ってもいなかった。

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