㊺話 殿の子を産むにゃん
【時系列・原作書籍④巻付近(原作書籍④巻店頭激品薄)】
「殿、小糸小滝姉妹双方すこぶる賢く行儀作法を習得しており大納言様の側室にいつ差し出しても問題なく育っております」
妻の愛が任せておいた黒坂常陸様に差し出すつもりの女の教育状況を報告してきた。
「うむ、時を見ておる。二人はしばらくそちに預けておくゆえ面倒を頼む」
なにかと読めない黒坂常陸様にいつ女を献上しようかと悩んでいる。
女を物のように扱うと逆鱗に触れるという噂が最近飛び交っている。
織田家随一の出世頭の黒坂常陸様になにか献上をと試みる大名は多いらしく・・・・・・当たり前だが。
献上品・いわゆる袖の下、その場ではニコニコと受け取るらしいが、同じく織田信長公側近の前田利家公の御内儀が黒坂常陸様の正室・茶々の方様使いとして後から返しにくるという一風変わった噂が大名間では広がっていた。
建築技術や農業改革を教えてくれる弟小次郎政道にその詳細を聞くと一向に返事は来ない。
返事がないと言うことは真実なのだろう。
この事は探ってはならぬ黒坂常陸様の秘密にあたるのかもしれない。
「殿、小糸小滝姉妹のどちらかを殿の側室に迎えられては?」
「何を言う?愛、戯れが過ぎるぞ」
「戯れではございません。伊達家は陸前・磐城を治める大名となりました。奥州の守護たる奥州探題も命じられた今、伊達家の跡取りを真剣に考えねばなりません」
「小糸小滝姉妹は体格顔つきが違う。どちらを黒坂常陸様が好みとしているかわからぬゆえ二人を差し出す。伊達家・・・・・・もしもの時には父上様が織田信長公、そして黒坂常陸様と掛け合い弟小次郎政道に伊達家を継がせるだろう」
そう言うと、愛は大きくため息をついて、
「殿は御実弟小次郎様の事をなにも理解していないのですね」
「なにを言う、愛?」
少し声を荒げて言うと、愛は続けて、
「小次郎様は最早伊達家の者ではございません。大納言様を心より主といたしております。もし、伊達家に帰れと言われればきっと腹を斬りましょう」
確かに真面目一筋の小次郎政道が主として認めた以上あり得る話。
「なら、藤五郎成実に」
「それで伊達家中が纏まると本当に思っておいでなのですか?」
父が存命、そして母も・・・・・・。
母は最上家の血を引く。
最上家となんのゆかりもない藤五郎成実が跡目となると家中に争いは・・・・・・想像出来る。
「愛、だったらなんといたせと言うのだ?」
「側室をお迎え下さい」
「はっ?」
唐突に言い出す愛の言葉を聞き返す。
「ちょうど、飯坂 宗康殿が娘を側室に差し出したいと申しております」
詳しく聞くと、飯坂城主・飯坂右近宗康の次女が17歳で我の御側にと片倉小十郎景綱に申し出た事を愛に相談したという。
「愛はそれで良いのか?」
「良いも悪いもありましょうか?考えることは伊達家、殿のお血筋を守る事のみ。殿が気にかけている大納言様の正室・茶々の方様は大納言様の血筋を守る為に、侍女、そして実の妹も大納言様の側室に迎えたと聞いています。小糸小滝姉妹を差し出すのに調べました」
「うむ、確かにそれは聞いている」
黒坂常陸様の正室は織田信長公の実の妹と浅井長政の姫で茶々。
その茶々は織田信長公が養女にして嫁がせた。
さらに侍女三姉妹を相次いで側室にしただけでなく、茶々の実の妹、お初を浅井家の姫として嫁がせ、さらにその妹のお江まで嫁がせている。
わずか数年で5人の側室持ち。
しかも、そのうち3人は織田信長公の実の姪。
「上様はよほど織田家の血を大納言様の家に入れたいのでしょう。それと同じく、私も殿の血を伊達家に残しとうございます」
気迫溢れた眼差しを向けて言ってくる愛。
「うむ、愛の気持ちあいわかった」
気迫に押し負けて思わずそう返事をしてしまった。
そして迎える事となった側室・・・・・・
「殿の子を産むにゃん」
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