㊹話 陸前浜海道開発反対
【時系列・原作書籍④巻付近】
1587年春
米沢から居を仙台に移して仙台城と街作りに力を入れていると、弟の小次郎政道が黒坂家の正式な使者として来た。
「なんだ、城の縄張りを調べに来たか?今ならまだ守は手薄、すぐに攻め落とせるぞ」
「兄上様、御冗談を。我が御大将は他家へ攻め込むことなど考えておりません。常陸国でも多いくらいだと申しているほど領地に関しては無欲、それに私利私欲の争い禁止の惣無事令の骨子を書いたのが御大将です。破るはずないではありませんか」
真剣な眼差しは最早、黒坂常陸が小次郎にとって本当の主人になったことを物語っていた。
「冗談だ。それよりなんの用だ?」
「はっ、先ずはこちらを」
「ん?地図と手紙か・・・・・・」
描かれている地図はかなり細かな地図で、南は武蔵国、そして常陸国と続き、磐城、陸前、津軽が描かれている。
手紙には、
『街道を造り物流を活発化したいと思います
物流が盛んになれば奥州は栄えます
また、災害の時にお互いに助けられます
その為、関東から奥州に続く広い道を造りたいので協力して欲しいと各奥州の大名にお願い致します
先ずは奥州の入り口に当たる磐城を治めることとなった伊達様にご協力をお願いできないでしょうか
良い返事をお待ちしております
大納言常陸守真琴』
との内容だった。
・・・・・・広い道、人の往来が容易くなり物の流れが活発になれば確かに奥州は栄えるだろう。
だが、これは容易く受け入れられるものではない。
「広い道は軍勢の通り道になるではないか」
「御大将はその事で協力は難しいかもしれないが自分を信じて協力をお願い出来ないかと。その事を考えていただくために私が打診をするようにと命じられました」
「信じるも信じないも我は常陸様とは一度陣を共にしただけ・・・・・・父上様は大層気に入られているが、我は確かに常陸様が考えだす知識には惹かれているが信じてはおらぬ」
「御大将は今直ぐ答えを求めてはおりません。常陸国内の街道整備も始まったりばかりなので」
「小次郎、常陸様と我、どちらが上と思う?」
ふとなにげに言葉が口に出てしまう。
「・・・・・・兄上様、残念ながら器量、知識、そして個人としての武術、どれをとっても御大将には叶わないでしょう。叶うとしたら野望だけ」
「ぬははははははっ、相変わらず正直者よな~、その野望があるからこそこれは受け入れられん」
「兄上様・・・・・・」
「小次郎、一度我は常陸様ととことん飲んで語ってみたい。もし信頼出来るとこの右目が光を感じたらこの話考えるよう」
我の右目は疱瘡で光を失っている。
無理難題をふっかけるが、
「わかりました。時を見計らいましてじっくり会えるよう段取りいたしましょう。ただし、御大将に敵意を向けたらそれすなわち伊達家の滅亡とお考え下さい。黒坂家の忍びは織田家随一。敵意見せればすぐにその場で始末されましょう。それ程緊張する家だと言うことだけは忠告を」
そう言い残して小次郎は米沢の父と母の元に寄り帰っていった。
我の右目に光を感じられるほどの男なのか?
小次郎は黒坂家の忍びの監視厳しく頭がおかしくなってしまったのか?
もしかして、黒坂常陸様は見えなくなった右目を治す術を持っているのか?
大きな疑問が続く事となってしまった。
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