㉘話 1586年9月3日 関東の殲滅戦・中編

【原作書籍3巻付近】


◇◆◇◆

《伊達藤五郎成実》


「大砲で敵は混乱している今が突撃の時では?」


俺は動くなと指示をしてきた黒坂家軍前田慶次殿の所に行き抗議すると、

「海からは敵と味方が見えていない。今時たま上げている狼煙で船に我らの位置を知らせている。動けば弾の餌食となる。伊達の若造、黙って見ておれ」


「じゃ~我らの働きの場は?」


「弾には底がある。そうそう長く撃てはしない。昼前には隊を動かす合図があるはず。その時、敵を殲滅させるためだけの地獄が始まる」


敵は海、そして大甕の陣から飛んでくる大砲により右往左往、最早戦意は完全に奪っている。

降伏を呼びかければ投降する者は多いはず。

そんな事はわかっていても続く大砲の嵐。


「100000を殲滅?」


「この戦、戦乱最期の戦いとするため如何に織田軍の火力が並外れているかわからせる戦い。黙って見ておれ、死にたいなら勝手に突っ込め伊達の若造」


「若造若造って馬鹿にしているのか!」


前田慶次に詰め寄ると、十文字の槍を俺に向ける真田幸村。


「それ以上は見過ごせませんよ、伊達藤五郎成実様。あなたの大将が動いていない、それが答えのはず」


織田信長公と共にしているうちの本隊は大甕の陣からまったく動いていない。

それに村松虚空尊堂に陣を構える相馬義胤軍・9000も。


「戦況が見えていないのは伊達の若造、貴様だけよ」


「もう、慶次様、そうやって煽るのやめてくださいよ。あとで御大将に報告しますよ」


「うっ、それは困る・・・・・・。兎に角、昼間で待て、そしたら動くから、わかったな伊達藤五郎成実」


「もし昼過ぎまで動かなかったら我らだけで敵本陣に突撃致しますからな」


黒坂軍の陣から自分の陣に戻る。


太陽が一番高くなるまで大砲の弾は続いた。

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