㉗話 1586年9月3日 関東の殲滅戦・前編

「殿、敵がこちらに向けて久慈川を渡ろうと動き始めました」


「よし、すぐに上様に指示を仰いでくれ。伝令、藤五郎成実隊には動くなと指示を」


「はっ」


1586年9月3日早朝、蜩が最期の力を振り絞り鳴いている中、久慈川を挟んだ南側の敵が動き出した。

総勢約100000。


こちらはの陣は少し離れた所に陣を敷いている相馬義胤軍・9000を合わせても35000圧倒的不利。

しかし少し陣を北に戻せば街道は狭くなり大軍勢は一直線となり地の利で戦える。

だが、織田信長公は各隊に動くなと伝令を走らせた。


「小十郎、今までの戦いからさらに変わるのだな」


「はっ、火縄銃を大量投入したことで武田を倒した織田家は大砲で日本国を統一いたすのかと」


「兎に角、藤五郎成実隊が心配だ」


久慈川河口北側で守りを固めている伊達家先陣の藤五郎成実隊。

目をこらしてみると、黒坂家の旗を持つ者と一緒に兵を動かし敵から距離を取っていた。


「織田信長公から指示が行ったか・・・・・・」


太平洋から太陽が顔を出し、空が赤く染まり出したとき、織田軍から狼煙が上がり法螺貝がけたたましくなる。


すると、黒坂軍前田慶次隊の陣でも狼煙が上がる。


すこし後方の同じく黒坂軍真田隊では噂として聞いたことがある『諏訪太鼓』と思われる力強い太鼓がなっり同じく狼煙が上がった。


すると、海から雷鳴が・・・・・・と、大甕の陣からも突如爆発音が。


織田軍の大砲が一斉に敵軍めがけて放たれると、敵軍隊で土埃を次々に上げる。

さらに敵の頭上でも大砲の弾が爆発する。

敵に何かが降り注ぐ。

地面で小さな爆発が次々に起こった。


「なにが起きているんだ小十郎」


「弾が爆発しているみたいですね、見たこともありません・・・・・・これで小田原の城が燃えたのかと」


次々に続く砲撃は夏の一日の終わりのような夕立のごとく雷鳴に似た音を立てて降り注いだ。


じっとひたすら見ていると、織田信長公が我らの陣の前に騎乗して現われた。


唖然として見ている我に説明する森蘭丸。


「炸裂弾と常陸様は呼んでいる新式の弾。一つの大きな弾に鉛や鉄の弾を小さな火薬とともに仕込む。大きな弾が爆発したあとその小さな弾が散ってさらに爆発する。鉛や鉄の弾は火縄銃の弾のように人を傷付ける。そして散った火の粉で建物に火を付ける。小田原の城を灰燼にしたのはこの弾によるものです。伊達様、織田軍はしばらく大砲を撃ち続けます。伊達の兵は合図があるまで進めないで下さい。進めばあの弾の嵐に飲み込まれるでしょう」


織田信長公はしばらくして自らが率いてきた新式鉄砲隊2000を久慈川北側の河川敷に進ませた。

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