㉑話 黒坂真琴は奇才?

【原作書籍3巻付近】


黒坂常陸はずんだ餅を食べ終えると出された熱々の茶を啜る。


戦場なのにこれほど気が緩んでいて良いのか?


それとも余裕?


色々と気になる中、織田信長公側近森蘭丸が今後の進軍の説明をする。


今までに戦術に本当に出来るのか?となってしまう。


その戦術は海から織田信長公の艦隊が砲撃、敵を散らした沿岸街道を進軍して常陸国に攻め込むというものだった。


「この様な戦術聞いたことがございません。上様がお考えで?」


聞くと、織田信長公は鉄扇を黒坂常陸に向けた。


「この食いしん坊馬鹿が考えたのよ。小田原の城を一日にして灰にしたのもこの馬鹿がいたからこそ」


「信長様、そんなに怒らないでくださいよ。別にずんだ餅喜んだって良いじゃないですか」


「馬鹿がっとに才能と行動が全く合っていないから政宗も変な目でそちを見ているのを気が付かんのか馬鹿者め」


織田信長公が言うと、森蘭丸兄弟や我の弟小次郎政道もうんうんと頷いた。

どうやらこの戦術、そして小田原の城を落とした事は彼らの頷きで黒坂常陸の案だと理解した。


「噂では聞き及んでいましたがまさに奇才の持ち主なのですね・・・・・・奇才の黄門と囁かれておりますが本当だったとは」


「兄上様、御大将を敵としたら伊達家は一ヶ月も持ちますまい。どうか心に留め置いて下さい」


小次郎政道が真剣に言う。

あまりに心のこもった忠告だったのでゴクリと唾を飲み込んでしまった。


「伊達家先陣を務めます伊達藤五郎成実隊と同じく大北川付近に陣を張っている相馬殿の軍に伝令を走らせてこの戦術を知らせます」


片倉小十郎景綱が言うと、黒坂常陸は、


「あ~俺もうちの兵率いて行きますよ。ここら辺詳しいから道案内出来ますし」


「ならん、常陸は儂と船だ。我が客が戦場の先陣に出るなど許さん」


織田信長公の言葉に疑問が、


「客?」


「あぁ~兄上様は御存じありませんでしたか。御大将は織田家の家臣にあらず。上様の客分にして義理の息子でございます」


「城を貰い官位も命じられているのに家臣ではない?」


「ふっ、そうだ。同じ目標を進む協力者といったところだな。まぁ~その様な話は良い。常陸は船だ」


「はいはい、だったらうちの新式火縄銃を扱う隊を先陣に行かせてこちらの有利を確固たるものにしたいので前田慶次と真田幸村を行かせるお許しを」


「ん、それなら構わん。好きにせい」


織田信長公は立ち上がるとそれに続けて黒坂常陸も勿来の陣を下り船に戻っていった。

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