⑲話 伊達政宗と織田信長と黒坂真琴
【原作書籍3巻付近】
「殿、大変な事になりました。すぐに身なりを整えお出迎えの仕度を」
ずんだ餅作りを終えくつろいでいる所に家臣が慌ててきた。
「なにがあったのだ?」
「勿来に接岸した船から下りてきたのは上様と噂の黒坂常陸様にございます」
「なに!織田信長公自らおでましか!」
「はっ、片倉小十郎様がこちらにご案内いたしてます。間もなく到着するかと」
「わかった。 甲冑」
脱いでいた甲冑を急ぎ着て身なりを整える。
兵士達も整列させた。
「殿、相手は少人数、ここで討てば殿が天下人」
浅はかな事を言う屋代影頼を張り倒す。
「馬鹿物、小田原の城を灰燼にした船が目の前いつ大砲がこちらに向けて放たれるかわからないのだぞ。それを見極めるために影武者だったらどうする?」
「・・・・・・しかし絶好の機会、船も奪えば」
「奪った船は誰が扱うのだ!伊達家には船を扱える者はおらぬ」
「屋代、貴様はこの陣に置いておけん。南に向かっている藤五郎成実隊の援軍に行くよう申し渡す」
「申し訳ありませんでした。すぐに出陣いたします」
「藤五郎成実に申しつけよ。織田方の者が海から来ておる。無礼はこの政宗が緩さぬとな」
「はっ」
何カ所かにわけて上陸した織田水軍から戦場を見聞に出向く者がいるだろうと申しつけた。
流石に斬りかかる阿呆ほ藤五郎成実はしないだろうが・・・・・・。
浅はかな考えで動かれたら大事になるため、屋代影頼は国境を越え常陸国を進んでいる藤五郎成実隊に向かわせた。
陣に残る家臣達にも軽はずみな行動をしないように厳しく申しつけた。
山の上から下の街道を見ていると、片倉小十郎が黒光りする南蛮甲冑を身に着けた者の前を進んでいる。
その男はチラリとこちらを見たような気がした。
まだ顔の輪郭が定かではないのに威圧感が半端ない。
全身の毛がざわざわとした。
この我が恐れるだと?
あれが『第六天魔王』を名乗る織田信長か・・・・・・。
「殿、陣所の前でお出迎えの仕度を」
「ん、そうであるな」
陣幕が張られた場所の前に移動する。
しばらくして片倉小十郎の家臣が、
「上様の御到着であらせられる。失礼なきよう」
皆に知らせながら走ってきた。
本物の到着か・・・・・・。
片倉小十郎の姿が見えると、そのすぐ後ろには南蛮甲冑の父上様と同じ年代であろう眼光鋭い男、その男の周囲には我が知っている火縄銃とは違う形の銃を持つ護衛10人。
「殿、上様御到着であらせられます」
片倉小十郎が馬を降りて言ったと思ったら、我とさほど変わらぬ年代であろう南蛮甲冑を着た若者が走り寄ってきた。
その男の隣には我の弟、小次郎政道が慌てて付いてくる。
「ん?」
「うわ~伊達政宗きたーーーーーーーーーーーーーーーーーーー」
突然我を呼び捨てにしながらジロジロと全身を見てくる奇妙な動きをする。
「御大将、兄、伊達藤次郎政宗にございます。兄上様、こちらは私が仕えている黒坂常陸様にございます」
この奇妙な男が噂の男?
織田信長公を本能寺の窮地から救った鹿島神道流一之太刀を使う凄腕で、陰陽道も習得しており鉄砲や船の事にも精通している男なのか?
「蘭丸、常陸を止めよ」
キョロキョロと我を見るのに動き回っている黒坂常陸を蘭丸と呼ばれた若武者と小次郎が両腕を掴み後ろに下がらせた。
なんなんだ?この茶番は・・・・・・。
兎に角挨拶をせねば。
「奥州探題を継がせていただきました伊達家当主、藤次郎政宗と申します」
「で、あるか。信長である」
引き離されて落ち着かされた黒坂常陸が続けて、
「近江大津城城主、中納言黒坂常陸守真琴です。くぁ~伊達政宗!会いたかった会いたかった会いたかった!」
なんなんだこいつは?
道化なのか?
黒坂常陸に会った時の初めての印象だった。
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