⑱話 伊達政宗と南蛮式軍船とずんだ餅

【原作書籍3巻付近】


「あの黒い物は船なのか? こちらに向かっているような」


「あれが織田水軍かと・・・・・・」


我は驚愕してしまう。


青い海に浮かぶ黒い点が真夏の太陽の光で照らされる。

それが段々と近づいてきて黒い点が明らかに船とわかる。

米沢の山育ち。

海の大きさに驚いたばかりなのに、その海を進む船。

今まで見たこともない大きな船、絵で見たことがある安宅船と明らかに違う造りの船。


「あれは南蛮の船か?」


「黒坂常陸様が造らせた南蛮船に似せた船かと」


段々と近づく黒光りしている船の船体、目をこらして見ると明らかに木造船とは違う。


船の脇には多くの大砲らしき物も見えるまで近づく。


異質過ぎる船を磐城勿来と常陸平潟の間の岬から見る。


見える船団はおよそ30隻、それが近くの港にばらけて向かった。


この辺りに詳しい者が乗っているのか?


ここには北から九面、平潟、大津と三つの港がある。


そこに向かい港を抑えるのか?


様子を窺っていると、こちらに向かってくる船団は織田木瓜の旗がはためいているのがわかめまで近づいた。


「小十郎、あれが小田原を一日にして灰にした船か?」


「おそらく。 殿いかが致します?」


「港で船を出迎えるのが良いのだろうが・・・・・・だが船見たさの田舎者と嘲りを受けたくはない」


「では、勿来の関跡の陣で迎えられては?ここは戦場、失礼にはあたらぬかと」


「そうであるな。流石に織田信長公自らのお出ましはないであろう。小十郎、九面の港で出迎えをいたせ。そうそう、丁度枝豆が旬、あれで餅を振る舞おう。織田家の家老あたりが下船するであろう」


「はっ、では小姓にその様に用意させます」


「うむ。枝豆は我がすり潰す。手料理をもって我の歓迎と致す」


「はっ」


我が考案した『ずんだ餅』織田家の誰が来ようと喜ぶはず。


我は陣に戻り出迎えの準備をした。


戦場で料理をする大将、余裕を見せねば。


ずんだ餅は採り立て茹でたての枝豆、粒をほどほどに残すように潰すのがみそ。


我が出来る最大限のもてなしで織田の家臣の心を掴んでくれよう・・・・・・。


えっ!まさか・・・・・・。

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