⑭話 関東の乱前夜
【原作書籍3巻付近】
「父上様、この書状を読んでどう思います?」
家臣のように扱えという父上様の言いつけ通り米沢の城に呼んで徳川家康からの書状を読んでいただいた。
読み終えた父上様は、書状を手焙りに入れ燃やしてしまった。
「父上様?」
「藤治郎、この様な怪しき誘いに惑わされてはならん」
「ですがこれは好機では?」
「隠居の身だが言わせて貰う。織田信長公そして常陸様この二人と藤次郎、お主の器違いすぎる」
「だから指を咥えて見ておれと?このまま奥州で指を咥えていたら伊達家の天下は望めません」
「ほらそこでもう器の違いが出ているのよ。織田信長公そして常陸様は海の外に目を向けている。噂では南蛮に負けない船すら造っていると聞いているぞ。その様な先を見る方々と藤次郎、その方は戦えるのか?」
「会津、常陸をこの手に出来れば戦えましょうぞ」
父上様との議論が熱くなってしまうが父上様は鼻で笑った。
「日の本を天下などと言っている藤次郎、お主では到底叶わん。良いか、海の外へと目を向ける時節になっているのだ。日の本の国を天下などと言っているそれが井の中の蛙というもの。もうその様なちっぽけな事を言うのはやめよ。どうせなら世界に『伊達』」の名を轟かせる野望を持て」
「だったら尚のこと天下を」
「馬鹿物、常陸様を敵にして海の外に出られようか?あの方がいてこそ望める夢」
「だったら父上様はどうしろと?」
「織田信長公の命に従い蘆名、佐竹を討伐せよ。さすれば常陸様とお近づきになるであろう。これは噂でしかないが、織田信長公は常陸様に城をお与えになるとき家臣にしたき好きな武将はおらぬか?と聞いたそうな。そのとき筆頭になぜかなんの名もあげていないそち、つまり伊達藤次郎政宗を家臣にしたいと名を出したそうな」
「なぜでございます?」
「わからぬ。だが、陰陽道に精通しているとのこと。藤次郎そちになにか見えているのかもしれぬぞ」
黒坂常陸の謎が深まる一方。
「藤次郎、留守は儂が預かる。織田方として出陣し関東の騒乱見事沈めてみせよ。これは儂からの頼みだ」
父上様に頭を下げられると嫌とは返事は出来なかった。
数日後、正式に関東管領を命じられていた織田信長重臣滝川一益を通して蘆名、佐竹の討伐の命が奥州に届いた。
「小十郎、戦の成り行き次第で」
「みなまで申されますなわかっております」
「では、出陣のふれを」
「はっ」
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