⑩話 伊達小次郎政道の野望
【原作書籍3巻付近】
◇◆◇◆
《伊達小次郎政道》
「いいか、この近江大津城内、いや黒坂家に仕えるにあたって守ってもらわなければならないことがある。もしそれを破ったとき、伊達家はないものと思え。これは殿、黒坂常陸守様の命にあらず。織田信長公、上様の命ぞ」
私は黒坂家お預けとなり早々に黒坂家家老筆頭の森力丸と柳生宗矩に呼び出され脅された。
脅されただけならまだ良い。
黒坂常陸様の事を探っていた黒脛巾組が一名死んだ。
刀傷どころか縄などの締めあとさえない死亡原因不明の遺体が琵琶湖に浮いた。
黒脛巾組をまとめる者が怯えるほどの手口。
「小次郎様、米沢の殿より黒坂家を探れとと命じられておりますがいかが致しましょう?」
聞いてきたので、米沢から連れて来た家臣を集め、
「兄上様の命は今を持って破棄とする。父上様が底知れぬ力に惚れ込み私をお預けとされた黒坂家は私にとっては唯一無二の主家である。兄上様は伊達家より主家を大事にせよと命じられた。だったら黒坂家のことを伊達家に影で知らせ事はならん。これに不服なら遠慮はいらぬ。すぐに米沢に帰れ」
家臣達は顔を見合わせたが返事は、
「「「小次郎様に従いまする」」」
だった。
しかし、私の命に背き勝手に黒坂常陸様を探り伊達家に情報を流そうとした者が裏柳生の手により捕まえられた。
柳生宗矩殿の気配りで会わせてもらえた。
「御大将にはまだ申し上げてはおりません。申したはず。黒坂家では御大将の事を探るのは禁物だと。いかが処分いたされますか?」
淡々と聞いてくる柳生宗矩。
「斬首といたしてください。私は家臣にこの様な事を禁止いたしたのにも関わらず行ったこと。黒坂家裏法度に従い申します」
黒坂常陸の素性を探ろうとする者、斬首。
黒坂家の法度だ。
「殿、どうかお助けを」
家臣はそう吠えたが私はその白州から離れた。
伊達家のため、そして黒坂家の為にはなにも知らない方が良いのだ。
私は淡々と言われたことを遂行していけば良いのだ・・・・・・。
黒坂家で私はしばらく監視される立場が続いた。
そんな事を気にしていない殿、黒坂常陸様を心から『御大将』と呼ぶ日まで日数を必要としなかった。
天正13年11月29日
後の世に『天正の大地震』と呼ばれる地震による大災害に黒坂常陸様、いや御大将は民の命最優先で動かれた。
自ら陣頭指揮に立ち命を削るまで働かれた。
その姿、領地を預かる身分の手本のような姿。
民をなにより一番にすべきこと。
私は感銘を受けた。
この日より私は家臣に御大将の事をなにか知ったとしても勝手に伊達本家に知らせる事を禁じた。
私は黒坂常陸守真琴に一生を捧げると決めた出来事となった。
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