⑧話 織田信長公征夷大将軍宣下と我の企て

【原作書籍2巻付近】


1585年1月10日


この日、織田信長公は朝廷より征夷大将軍宣下が行われ、正式に武士の頂点となった。


それを京の都からの早馬で米沢の城で知った。


我があと20年・・・・・・いや10年早く生まれていたら・・・・・・。


そんなもしもは起こらないな。


そんな事より気になる事が。


中国で強大な力を持っていたはずの毛利家を本能寺の乱から3年とかけずに滅ぼした織田軍。

その快進撃には黒坂常陸が開発した新式銃の存在が書かれている。


飛距離、命中率、弾の装填、どの点においても今までとかけ離れた威力を持っているという。

南蛮人宣教師すらも驚く威力だと。

父上様の直筆の手紙なので嘘はないのだろう。


「小十郎、黒坂常陸様とは忍びの棟梁ではなかったのか?」


「雑賀衆の可能性が・・・・・・」


「常陸の国の出で鹿島の秘剣の我とさほど変わらぬ年の者だと聞いていたが?」


「そうでございましたな。鹿島の秘剣一之太刀を会得するのに諸国修行中に得た知識で鉄砲を改良した・・・・・・それでは南蛮宣教師は驚かないはず・・・・・・辻褄が合いませぬな」


近江、京に忍びを送り情報を集めているはずの片倉小十郎景綱ですら言葉に詰まる。


「父上様が小次郎を黒坂家に預けなさるはずなので小次郎からの文を期待するか、小次郎付きの家来には当然黒脛巾組も入れているのであろうな?」


「それは無論のこと。小次郎様の御身を守る為、そして黒坂常陸様、織田家を探るために」


「うむ、それは上々」


「兎に角織田信長公が征夷大将軍宣下を受けられた以上、そして毛利家を滅亡まで追いやった鉄砲の真相を知るまでは殿、御自重下さい」


「自重もなにも攻められる国はないではないか、南も北も織田家に服従してしまったのだから」


「兎に角、先ずは大殿様のお帰りを大人しく待ちましょう」


片倉小十郎景綱は隣地で一揆を起こしその討伐名目で兵を動かそうと企てていた事を一旦止めた。

一揆を起こさせ隣国に攻め入り領地を増やす、限られた家臣にしか知らせていなかった企て。


片倉小十郎景綱・・・・・・伊達藤五郎成実・・・・・・鬼庭左衛門綱元・・・・・・。


兵をいつでも動かせるように仕度をしていた藤五郎成実は翌日、


「殿はいつから弱虫となったか!」


と、激怒して登城してきたのを小十郎と左衛門が必死に止めていた。


「仕方がないであろう。今までと明らかに違うのだ。藤五郎、今は動けん。父上様の帰り、そして小次郎に付けた密偵からの知らせを待つのだ」


「しばし待つだけですからな殿、儂は殿に天下人になってもらう為に戦をしたいのです」


藤五郎成実の気持ちは大変嬉しいことだが、あまりにも計算できない黒坂常陸の動きのせいで我の野望は抑えるしかなかった。

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