外伝・伊達政宗の野望

①話 1583年1月末・奥州伊達家評定

【原作書籍1巻付近】


「父上様、なぜ今御上洛をなされるのですか?」


1583年1月末


突如伊達家家臣一同を集めた大評定が行われ、我が父が上洛し織田信長公に臣下の礼をとると皆に告げた。

あまりにも急な事だったので家臣一同がざわつく。

我は家臣に代わり父上様に言上しようとすると、


「皆の者静まれ、大殿様が説明なされる」

 

叔父の留守政景が皆を鎮めると父上様は、


「織田信長は天に導かれておる。 重臣明智光秀の謀反、兵は15000を越えていた謀反であったと聞く。織田信長の兵はわずか数百。それでも明智光秀を討ち取り逃げ延びた。織田家は混乱するかと思っていたが今年の正月、京の都で馬揃えを行い織田家の力を見せつけた。朝廷はこれを重く受け止め正二位左大臣、そして右近衛大将に任じられる運びとなった。 これは武家の棟梁となったと言って過言ではない。 聞けば敵対する毛利を朝敵とする詔も出たとか、私はかねがね織田家に鷹や馬を贈りよしみを結んで来た」


「だったら先ずは同盟で良いではないですか?なぜにまだ遠い織田の家臣に?関東には北条、佐竹などまだまだいるではありませんか?」


「藤次郎、天に導かれし麒麟は織田信長と儂は見た。麒麟に北条や佐竹などはすぐに討ち滅ぼされるであろう。それからでは遅い。よって、儂は自ら上洛して織田家の臣下となる。儂の目を疑うか?」


「父上様、でしたら私も一緒に京の都へ」


そう言うと家臣一同の騒ぎがより大きくなったが、


「皆の者静まれ。藤次郎は連れてはいかん。我が上洛は戦である。街道には敵は多い。もしもの時は藤次郎が伊達家を継ぐのだ」


「えっ!それって」


「皆の者、小次郎を推している者も多いのはわかっている。だが、儂の目は藤次郎こそ伊達家を継ぐ竜と見た。我が跡目は藤治郎政宗ぞ」


我は唐突な事にこのあとの評定の話は耳を通り抜けた。


様々な意見が言上されたが父上様は全ての言葉を払いのけ、織田家の家臣になるべく春を待たずに上洛した。


「小十郎、黒脛巾組を父上様の護衛には付けているであろうな?」


「はっ、勿論の事」


片倉小十郎景綱に父上様の護衛を頼むと、


「そして、隙あらば織田信長を討てと密命を」


「流石、小十郎よな、我が心、よくわかっておる」


織田信長の首さえ取れば父上様も考えを改めるであろうと思っていたがその考えは甘かった。

しばらくして片倉小十郎景綱が珍しく慌てて知らせに来た。


「殿、近江に先回りした忍び全て始末されたようで」


「は?それなりの人数を出したのであろう?」


「はっ、その中の手練れ50を先回りさせたのですが・・・・・・」


「織田は忍び嫌いだったはず、それが手練れの忍びを討てるのか?」


「それが、織田信長を本能寺から救い出したと噂される黒坂なにがしと申す者が、柳生、戸隠、伊賀の忍びを多く召し抱えているとか、その者達によって・・・・・・」


「忍びをまとめている家臣?何者だ?」


「それが出身もいつから織田信長のそばに居たかもわからぬ人物と言う噂だけは、これ以上忍びを動かしても犠牲が出るだけと思われます」


「そうか小十郎がそう申すなら下手に動くのはやめておこう」


「はっ」


「しかし、黒坂なる者は気になる。 噂話で良い。情報は逐一報告せよ」


黒坂真琴・・・・・・いったい何者?

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