コミックス重版出来・御礼&《メロンの日》特別SS
「おっ、瓜、どしたの?」
屋敷に遊びに来る茶々達が珍しくお土産持参だった。
大きな瓜をいっぱい背負い籠で護衛が運んできた。
黄色く熟した良い瓜なのは俺の目でも一目瞭然。
「伯父上様からの賜り物です。 真琴様にと。 桜子、井戸で冷やして来なさい」
「ひゃっっはい、はいすぐに」
「もう、桜子ちゃんまだ姉上様が恐いみたいだね」
「私、なにもしていませんよ?」
「まぁまぁ、織田信長の姪ってのが恐いみたいだから気にしないで。 それより瓜かぁ~」
「え?お嫌いでした?」
「いや、そこまでではないけど食べ慣れてないんだよ。瓜」
「真琴様のお国では食べないのですか?」
茶々は俺が未来人であるのを知っているが、周りに悟られないよう上手く隠して『お国』と言った。
「うちの地域はね『メロン』が盛んだったんだよ。 同じ瓜科だけど格段に甘くてね、身は柔らかくてジューシー、口の中が甘い果汁で溢れるくらいみずみずしくて夏になるとよく食べてたなぁ」
茨城県は意外かも知れないがメロン収穫量ダントツで日本一。
なのになんでメロンと言えば、北海道のイメージが強いのだろう?
夕張メロンのせいなのかな?
俺が住んでいた鹿嶋市はメロン生産地に近く、近くの道の駅など買いに行ったりしていた。
暑中見舞い代わりにメロンが届いたりもした。
瓜はほとんど食べた記憶がない。
優しいほんのりした甘さだったはず。
「マコ~食べたい、それ食べたい」
未来の話だと知らないお江はおねだりをしてくる。
困り顔を見せると、茶々が、
「無理を言ってはなりませんよ。 真琴様はお国を出られた身なのですから」
「う、うん・・・・・・ごめんね」
「良いって、メロン・・・・・・今井宗久に種取り寄せて貰えるよう頼んでみようかなぁ」
「やった~メロン食べられる」
「気が早いって、何年先になるかわからないからな」
「うん、ずっと楽しみにしているから絶対食べさせてよね」
お江は目を輝かせて言っていた。
50年後、世界を渡り歩いてようやくその約束が達成されることをこの時は思ってもいなかった。
「マコ~、歯が弱くなっても食べられるメロン美味しいね」
そうお江が満面の笑みで喜ぶとは。
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