福島県・復興応援特別SS・福島県・会津若松
いつも政務を任せている茶々に休んで貰いたく、お初と桜子達に仕事を変わってもらい、伊達領巡察名目で5月の猪苗代湖に来た。
遅い春の息吹が大地から芽吹き、残された雪と薄い緑色、ふきのとうの花や、山桜とでスカッとする景色だ。
「真琴様は、本当に湖が好きですね。大きな湖、山々に囲まれた湖、良いですわ。 それに北を見ればそびえ立つ磐梯山、素晴らしい景色です」
「良いでしょ~ここ好きなんだよ。 成人したらドライブ・・・・・遠乗りで来たかったんだよ」
「ぐははははは、気に入ってくれたかった若僧、おっとこれは失礼した大納言様」
胸を張り豪快に笑うのは伊達政宗から黒川城を任されている鬼庭左月斎、磐城で世話になった鬼庭綱元の父親、・・・・・・いかりや長介に似ている。
「近くに温泉もあるぞ!入れ!あっどうも駄目だな。すまん。丁寧に話せん!駄目だこりゃー」
「はははははっ、構いませんわよ。 我々の祖父みたいな年頃の方に遜られてもかえってこちらが恐縮しますわよ」
茶々は俺の思想をよく理解している。
さほど身分差を気にしない。
「すまんな、・・・・・・申し訳ない。 いや~しかしながら、若殿に大納言様が贈れなさった地図、間違いが」
「あ~地形、五色沼だか桧原湖でしょ? あっちは、ん~あまり深堀しないでいただければ、いろいろ訳ありで。ただ、あの付近は集落を作らない政策をしてくれると・・・・・・」
「だっはははははははっ、わかりもうした!噂の陰陽道ですな!わかりもうした。多くは聞かぬです。 それより大の温泉好きと聞いていますぞ! 東山温泉に案内させていただきたい」
「お~東山温泉!行きたかったんだよ」
「真琴様、本当は私に休ませたいなんて嘘ですね?出しに使いましたね?」
「さぁ~何のことやら」
「まぁ~良いです。 それが真琴様ですから」
東山温泉でのんびり3泊させて貰った。
「ぐっははははは、美味いか? 美味いか? こづゆって言うんだ!です。 若殿のずんだとどっちが美味いか?」
ちなみに、鬼庭左月斎が言う『若殿』は、伊達政宗のこと、先代・伊達輝宗が鬼庭左月斎にとって『殿』だ。
こづゆ、小さなサイコロ状に様々な根菜類と豆を一緒に煮た汁は野菜の出汁が染み出ていて美味しい。
「ん~俺の好みはこっちかな?」
「私は甲乙付けがたく、美味しいとぞんじましてよ」
茶々はあっさり系の食べ物ならなんでも好きだ。
お江とは違い、こってり系は少し苦手。
「しかし、大納言様の地図には黒川城は会津若松って書いてあるがなぜだ?」
「ん~なぜだったかな? 忘れた」
「ぐっははははは、良かっぺ良かっぺ!ここは蘆名から伊達領に変わった地、丁度名前を変えるつもりだったんだ・・・・・・です。 黒川城は会津若松城と改名する」
「はははははっ、豪快な人だな~。 そうだせっかくだから改築案を」
会津若松城の縄張りを書いて渡すと、
「こんな堅牢な城、幕府方が薦めて良いのか?」
「ん~、うちなら火力で一週間で攻め落とせるかな、だから堅牢とは。 だけど火力を持たない北からの侵略を目論む者からの守りなら堅牢、籠城して二週間持ちこたえてくれるなら俺が必ず駆けつけるから」
うちは織田信長の命により、大砲も多く持っているが、他の外様大名は許されていない。
港を守るため少数貸し与えられている。
「儂は嬉しいございますぞ、うちの若殿を北の守りとして御信頼してくれて」
鬼庭左月斎は俺の手をしっかりと握りしめた。
「必ずやこの会津若松を大納言様の縄張り通りにして見せますぞ!」
数年後、再び訪れた時には赤瓦が特徴的な、史実の江戸幕末期の天守と縄張りを持つ城に生まれ変わっていた。
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