第998話  食事

 相変わらず食事は桜子三姉妹が監修、そして、食事と合わせて滋養強壮薬などを煎じる小糸と小滝。




小糸と小滝は佳代ちゃんからの未来の医療知識と、漢方薬の知識を使って俺や信長様だけでなく、城のみんなの健康に注意を払ってくれていた。




御成御殿で暮らす織田信長の食事も、桜子達が交代で作っている。




「御主人様、上様のお食事が・・・・・・細くなって来ておりまして」




心配と相談を桜子が代表して俺に伝えてきた。




「もう、99歳だしね。仕方ないと思わないとならないけどね・・・・・・」




1633年の夏の暑さをなんとか乗り越えたが、流石に老体には堪えたらしく一気に老け、毎日の散策も距離が短くなった織田信長。


運動量が減ると一緒に食事量も減っていた。




「細かく切って食べやすくするとかくらいかな・・・・・・」




「カレーは依然と同じく喜んではいるのですが」




「へぇ~昔っから変わらないなぁ~カレーかぁ・・・・・・カレーの工夫なら脂身の少ない良く煮込んだ肉を入れたり、具は全部ざるで裏ごししてしまうとか、液状にしてしまうのも良いかも」




「なるほど、のどごしを良くにございますね?」




「あと信長様の好みに合わせて赤味噌を隠し味に使うとかね」




「尾張から味噌を取り寄せるよう命じてみます。やはり郷土の味は何歳になっても食べたきもの、流石、御主人様」




俺は山の中とは言え常陸国、鮟鱇が食べたいときは、伊達政道に命じれば五浦城から届く。


冬場ならいつでも食べられる。




「ちなみに、桜子はなにが食べたいの?郷土料理」




そう聞くと少し遠慮がちに、




「鮒寿司です」




「・・・・・・うん、揚げ物にはしないでね、食べたいなら近江から取り寄せると良いよ」




「ありがとうございます」




桜子達は相変わらず遠慮がち、その変わらぬ奥ゆかしさが良いのだが流石に鮒寿司くらい食べたいなら取り寄せたら良いのにっと思う。




・・・・・・うん、鮒寿司のフライ懐かしいな・・・・・・。




あれはやめて欲しい。




不意打ちだったから余計にトラウマとして残っているのかも。




鮒寿司かぁ~、今食べたら美味しいと感じるのかな?お酒のお供に。


昔はまだ子供舌だったからなぁ。




遠い過去を思い出していた。




信長様の運命の日はもう近い。




最後の日まで食を楽しめると良いのだけど。

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