第997話 織田吉信
吉信は朝から鍛錬場で、俺の直属の部隊『紅常陸隊』と共に武術の稽古に励んでいた。
それを眺めていると、後ろから、
「マコ~何見てるの?もしかして、あの輪に入って若い子達の匂い嗅ぎたい?」
「真琴様、紅常陸隊の若い子達の目が吉信に向いているのが羨ましいなぁ~などと思っていませんか?」
「うわっ、後ろから気配消して両耳で二人は何言ってくるんだよ」
お初とお江に両耳で突然ささやかれてビックリする。
この二人、武術の達人だが、俺に対して殺気が一切ないから察知出来ないんだよな。
「いや、真面目に吉信の腕を見ていたんだよ。もし、これから戦になれば戦いの武器は大砲であり鉄砲だけど、やはり武士として剣術はおろそかにして欲しくないし、その文化は続いて欲しいから」
「そうですわね、真琴様の変なご趣味も続きそうですけど、剣術などの武術も続いてほしいものです」
「吉信の腕なら大丈夫じゃないかな?」
「お江のお墨付きなら大丈夫かな」
吉信は輪になってしまった紅常陸隊を厳しく声をかけ、鍛錬再開を命じていた。
すると俺たちの視線に気がつき、歩み寄ってきた。
「おはようございます。御祖父様、みな女子だと言うのに素晴らしき腕前にございます」
「学校から試験で入れた上で毎日鍛錬を命じているから」
紅常陸隊は学校生徒の中から希望者が試験によっさてふるい落とされ、入隊出来ても先の隊員やお初達の厳しい指導がある。
その為、そんじょそこらの男では歯が立たない強さ。
「安土でも同じようなことはしていますが、ここまで女子達が強いとは」
様々な戦いに参加してきた先輩や、柳生宗矩が太鼓判を押し今まで様々な戦いに参加してきた、お初とお江がいればこそ。
「試しに、お初、相手してやったらどうだ?」
「え?私?」
「え?御祖母様が?」
「ねぇねぇ、私やろうか?」
お初が渋るとお江がやる気を見せた。
「お江だと相手が悪いだろ?お江のすぐ勝ちになるし」
「この吉信、試合となれば手を抜かぬ所存」
吉信もやる気満々を見せるが、
「吉信殿、お江は暗殺の達人、黒坂家の忍びを束ねる一人、相手には悪すぎますよ。お初もまた真琴様を長く守ってきた剣の達人、一本で終わりとなれば、面目は潰れますよ、おやめなさい」
茶々が止めに入る。
お初、お江、試合手加減なしだからな・・・・・・特にお江は静かに後ろを取ってしまう。
お初ならまだ真っ正面からの打ち合いにはなるけど。
「吉信、見立てでは剣の腕は良い。お役目がお若い頃が終わった後は鹿島の道場に寄ると良いだろう。あそこはさらに剣術に力を入れた道場を柳生と真壁の者に任せてあるからな」
現在、鹿島城の道場は柳生宗矩の息子が師範を務め、真壁氏幹の子が師範代を務めて、黒坂家の本隊の兵士を鍛えている。
「御祖父様のように鹿島の太刀を会得出来るようにとは思っているので是非とも」
そう言って、太い木刀をビュンビュンと音を立てて素振りをして汗を流していた。
若いって良いな・・・・・・俺なんか、最近、腰が痛いよ・・・・・・。
社殿で座りすぎかな。
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