第994話 常琴と琴時
「常琴つねこと、琴時こととき、2人に命じる」
陰陽師の道を進もうとしている2人を密かに茶室に呼び出す。
茶々が、黙って話を聞きながら茶を点てた。
「父上様、改まってなんの御用で」
「常琴、東回りで常陸国千日回峰行を命じる。琴時は西回りで常陸国千日回峰行を命じる」
2人に陰陽師として、しっかりと力を付けて貰いたく命じると、
「父上様の側で呪法を学ぶのかと思っていたのですが・・・・・・」
「常琴、琴時、残念ながら基礎的な気を使う力がまだまだ足りぬ。それを千日の修行で高めて欲しいのだ。神域で身も心も一体となれるように常陸国にある寺社を黙々と回り続けよ」
俺は千日連続した回峰行ではなかったが、学生時代、夏休みや冬休みを利用して茨城県内の寺社巡りをした。
普段は鹿島神宮の静かな森の中や、筑波山の頂上の岩に登り瞑想して、神を感じてそこからお祖父様から技を教わった。
「それで父上様が目指して来た平和な国を守るために、お役に立てるなら」
常琴が言うと、琴時もまた、
「今後も出てくるであろう人の憎悪の念で、妖魔などが生まれなきよう、また、生まれても退治出来るように、習得しとうございます」
話が一段落すると、茶々は2人にお茶を出し
「2人には真琴様の魂の封印という大きな役目があります。良いですか、失敗は許されぬ大切なお役目、肝に銘じて修行に励みなさい」
「「え?父上様の魂?」」
そう、俺の魂を封印して貰うための大役はこの2人に頼もうと考えた。
俺も、信長様とともに・・・・・・。
「俺の魂の封印までは時間はあると思うから、今は自分たちの力を高めることだけに集中して」
「はっ、父上様」
「絶対に父上様を超える力を会得いたします」
2人は茶をゴクリと飲み干すと、すぐに旅したくを始めた。
茶々と二人っきりの茶室、
「真琴様は義父様とともに、どこまでも行くのですね?」
「まぁ~俺の場合、この時間線の未来を見て見たいってどうしても思うよね。俺が知る時間線を大きく変えたのだから」
「・・・・・・私はどうすれば・・・・・・真琴様といつまでも一緒にはいたいのですが、恐いと感じてしまいます」
茶々はしんみりと言う。
「一応、側室のみんなにも事の次第は説明するけど、みんな個人個人が選ぶのが良いと思うよ。人として『死』を選ぶか、その理ことわりを無視するかは、自分次第」
「間違いなく、お江はすぐに答えを出すでしょうけどね、面白そうだから付いて行くと。私も面白いとは思うのですが・・・・・・」
「まぁ、仕方ないって。それに上手くいくかも不明だし、何年後に復活するかもわからないし、肉体だって未来の子孫任せ、今のような肉体だと保証出来ないからね。ただ、信長様と共に地球の外に行ったとき、信長様がどんな表情を見せるか見て見たいんだよね」
「私はきっと夢が壊れる落胆の顔をするのでしょうけど」
「ははははっ、もし未来が俺の知る技術を遙かに超えていたら、生命のいる、いや、それこそ兎の楽園の星を見つけていて、行くことが出来るようになっているかも」
月に兎や、かぐや様を夢見る茶々に言うと、
「あれだけの数え切れない星があればあるのかもしれませんが、月にいなければ意味がないのですよ」
そう苦笑いを見せた。
「いや、月だって、何らかの科学技術が進んで生命が生きられるように改造されたら、兎飛び回っているかもよ」
「月に兎・・・・・・あってほしいですわね・・・・・・そんな未来」
曜変天目茶碗に点てたお茶と白い丸々とした大福を出してくれた茶々、満天の星空と満月を表していようだった。
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