第968話 ククルカンのピラミッド
1629年春分の日
「常陸、このピラミッドでなにが起きると言うのだ?」
俺たちはメキシコ南部のユカタン半島にあるマヤ文明の遺跡、チチェン・イッツアのククルカン神殿近くでその時を待っていた。
蓙を広げ弁当を持ち、茶々が野点をしてくれている。
「信長様、ここの記実は読んでおりませんか?」
「ん?あの便利な辞書が壊れてから何年も経つからの」
「この神殿はこの全てが暦なのです」
「ん?」
「見て下さい、大きな段層は9段ありますけど、その中央の階段が見えますよね?4面に各91段の急な階段が配されていて、最上段に真四角な神殿。ピラミッドの階段と4面の91段を合計すると364段で、最上段の神殿の1段を足すと、ちょうど365段あるんですよ」
「・・・・・・常陸が採用した太陽暦と一緒だな。マヤの人々は太古から太陽の暦を使っていたのか?」
「そうなんですよ、あがめている神も太陽神だったはず。むしろなんで日本が太陽暦じゃないほうが疑問なんですけどね。最高神を天照大御神として奉っているのに」
「その様な事はどうでも良い。今は何を待っているのだ?」
「大蛇を待っているのですよ」
「え!大蛇?」
悲鳴に近い声で茶々が言うと、お初も、『うわっ』とした顔を見せ、桜子も青ざめて、ラララはナイフを抜く準備をし、
「大蛇ですか?滋養強壮の薬になりそう」
と小滝は薬に出来ないか考えていた。
「マコ~食べられるの?」
「との様 おおきな蛇なら 腹に子が いそう」
お江とヘーブンは食べる事を考えているようだった。
「うん、食べられないから、兎に角日暮れを待って」
東の大地に日が沈みだした頃、その大蛇は姿を現した。
「なんと、影が本当に大蛇のようだ」
織田信長が驚いていた。
「この北面の階段の最下段にククルカンの頭部の彫刻があり、春分の日・秋分の日に太陽が沈む時、ピラミッドは真西から照らされると階段の西側にククルカンの胴体、大蛇が現れるんですよ。ククルカンの降臨と呼ばれています」
「なん~んだ、食べられないのか~でも凄いよマコ~」
「真琴様、これはこのように計算されて造られているのですか?」
「凄いでしょ、太陽が真西に沈む、春分、秋分の日にだけ見られるんだよ。あ~やっと見られた。これ見たかったんだよ」
俺は感動のあまり涙を流すと、
「うむ、面白きかな面白きかな」
と、織田信長も感動していた。
「萌だけじゃなくてこう言う造形物も造って欲しいわね」
「お初、無理言うなって、これ天体観測していろいろ計らないとならないんだから」
「あら、真琴君、そんな物造りたいなら私が計算すぐに出来るけど」
「え?そうなの佳代ちゃん」
「そのくらい簡単よ」
マッドサイエンティストオソロシア。
「ん~美少女の像の開いた足下に太陽が沈んでいくとか?逆に太平洋から浮かぶ真東の日の出の時、美少女像のくりぬいた目に太陽がピッタリ重なるとか?」
「勿論出来るわよ」
「はぁ~、また萌像か、そこは武甕槌大神とかにして欲しいわね。大洗の磯に造ったら良いのに」
お初は大きなため息をしながら言う。
「確かに武甕槌大神の石像建立は良いかも。ん~それは考えようかな」
「やっとまともな石像も考えるのですね」
「茶々も酷いなぁ~」
と、みんなで笑いながらククルカンの降臨を堪能した。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます