第967話 お市様と黒坂信海
「半蔵、これがヌルハチか?」
私は、服部半蔵が持ち帰ったヌルハチの遺体を目にしていた。
ずいぶんと切り刻んだものよ。
「拙者は詳しくはわからぬでござるが、どうやら妖が取り憑いていた様子で」
「妖魔か?私も詳しくはないからの~・・・・・・ただ、これは地獄の業火の塔にくべよう」
父上様に見習い街の中心に永遠燃え続ける炎の塔を造った。
そこに高野山から種火を別けて貰い、閻魔大王の彫刻を施した。
父上様が大変嫌う罪を犯した者、強姦、強奪、殺人を犯した者達をその燃えたぎる炎に入れた。
処刑台。
清帝国皇帝ヌルハチの最後を見ようと虐げられ、一時期屈辱的支配下になった者達が大勢集まり、つなぎ合わせた遺体を見せ、炎に入れると、歓声が沸き上がっていた。
清帝国が本当に滅んだ日となった。
「さて、半蔵、私は安土に報告も兼ねて一時、近江大津城に戻るが、任せて大丈夫か?」
「はっ、国作りはわからぬでござるが、治安を守る事ならお任せ下さい」
「うむ、香港は大陸への玄関として支配しているだけ、町作りはここの者達に任せて良い」
「はっ、ならば問題なきかと」
そう言うので、服部半蔵に任せて近江に戻った。
「御祖母様、お久しぶりにございます」
「おお、信海殿、息災でなによりじゃ」
「御祖母様こそ変わらぬ若々しさで」
「雄琴温泉の湯が合っているからの~温泉場に長政様の菩提を弔う寺を造ってくれた、常陸様のおかげじゃ」
「はははっ、父上様はことのほか温泉を愛されていますからな。なんでも、常陸藩の袋田温泉あたりで隠居をするとか聞きましたが」
「今、その城を造っている最中だと聞きますよ。なんでも世界からその職人が集まっているとか、そのついでに安土の町も再整備しておりますわよ」
「ほほうも安土もですか?」
「まぁ、信琴が常陸藩ばかりに絢爛豪華な街を造ってしまってはどちらが上だかわからぬと、言って手が空いている者は安土で町作りをしておる。こちらにも回ってきての、雄琴温泉の風呂の湯口が美少女の石像に変わってしまったのじゃ。まことに面白きかな」
「あははははっ、父上様の御趣味ですね」
「昔っから突飛な物を作られておられたが、それが当たり前になってしまい面白き物がみれる、長生きしている価値があるというもの」
「御祖母様も太上皇様に付いて行かれたら?さらに面白き物が見れるかと」
「はははっ、それは御免こうむります。好奇心の塊だからこそ兄上様は体を鍛え長旅にも耐えうるのです。私など異国への長旅をしようものなら船の上で死んでしまいます」
「父上様が乗る船は少々変わっていて揺れもほとんどありませんよ。水の中を進みますから」
うちにも2機配属されている砲撃型潜水艦、波風の影響が少なく意外に快適だ。
「私は良いのです。それより袋田に出来る城の完成が楽しみです」
「しかし、袋田は冬は寒いというのに父上様はその様なところに城を望まれたのですか?」
「側室達と袋田の滝を見に行ったときに、隠居はここでしたいと言ったそうですよ」
「確かにあの滝は見ていて飽きませんが、父上様なら冬は温暖な五浦城近くの磯原と言う地、二ツ島と呼ぶ風光明媚な所あたりを望まれそうですが」
「そこは景色が良いのですか?」
「はい、砂浜近くに二つの大きな岩の島がありまして、松が生え、そこに鵜などが止まっているのです。見ていて飽きませんよ」
「そうですか、その様なところが、今度足を運んで見ましょう。前田の松もこちらに帰ってきたのでお誘いして」
「あっ、前田の松様ですか?」
「利家殿の御遺体を加賀に埋葬して、菩提を弔っております。時たま雄琴の湯に入りに来るのですよ」
「そうでしたか、松様は父上様が造る物を愛する一人ですからね」
「御子息達もその影響を大変受けてしまいましたがね」
「加賀友禅も萌柄、蒔絵も萌柄は大陸でも大変人気で高額で売り買いされていますよ」
「そうですか、それはまた面白きことです」
御祖母様が点てたお茶の茶碗も萌美少女が描かれた九谷焼だった。
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