第956話 変?
宮殿に入ると、先ずは風呂に案内される。
大きな石風呂でテルマエ化している風呂。
この辺りは、伊達政宗がヨーロッパから取り入れた文化なのだろう。
「常陸様、本日は特別に温泉を運ばせましタ」
ファナは気を遣って温泉を取り寄せてくれたそうだ。
先に織田信長に入って貰い、俺は茶々達と入った。
「あれ?お江は?」
いの一番に一緒に入りそうな、お江がおらず代わりにヘーブンが後ろからまとわりつき、耳をペロペロしてきた。
「真琴様、いくら皇帝が側室で須佐殿が御子でも油断しすぎですよ」
「ん?茶々?」
「今の状態なにかと似ていると思いませんか?皇帝と跡取り、そして真琴様がここにいる」
「ん?言っている事がいまいちわからないのだけど」
「本能寺です」
「あっ!」
本能寺の変の成功した原因は、織田信長とその子である織田信忠が同じ『京』にいたからだ。
今、クスコにインカ帝国最高権力者の親子が揃ってしまっている状況はそれに似ている。
「え?でも、謀反起こしそうな噂でも入ったの?」
「念には念を。お江に忍びを使わせ護衛に集中して貰っていますから」
「まぁ、茶々がそう言うなら任せるけど」
「ひたち様 もしものときハ 私モ 戦えマス」
そう言ってヘーブンは桶に獣の骨から作られた鋭い白いナイフを隠し持っていた。
風呂の外も一応、家臣はいるのだし大丈夫だろう・・・・・・。
「大殿様、お江の方様からの言伝です。不穏な気配あり。気を付けてと。外は我らくノ一がお守りしておりますが、十分お気を付けて下さい」
そう言って、くノ一の家臣が湯気に消えていった。
「せっかくの湯なのにゆっくり浸かれないのは残念だが出よう」
風呂を出てすぐに着替える。
「父上様、いかがいたしました?ごゆっくり湯を楽しんでいただきたかったのですが、お気に召しませんでした?」
「須佐、湯は良かったが、ちょっとな」
「ん?なんにございましょう」
「謀反の動きがあると耳にしたぞ、心当たりはあるのか?」
「え?そのような話、初耳にございます」
「まぁ良い。兎に角、信長様の護衛は須佐が信用できる者でそれとなく固めてくれ」
「はっ、父上様」
ファナと須佐が俺たちを殺すメリットは全くないため、違うだろうと推測する。
自分の家族を信用しないでどうする?
信用したい。
「常陸、どうした?物々しい警護になったが?」
「信長様、うちの忍びが、怪しき動きありと申してきたので」
「ん?儂の命を取っても何の意味もないであろう?狙われているのは常陸、お主自身だな?」
「はい、謀反を企てている者がいるとするなら須佐共々、私を消したいはずですから。ですが、そのとばっちりを信長様が受けるかもしれません。明日になればアセナがヘリコプターで来るはずなので、それで艦に戻っていただきたく」
「うむ、空中都市も見たいのに残念だな」
「今日はもう日も落ちてしまったので、逃げることはかなり厳しいので、宮中で休みます。くれぐれもご注意してください」
ファナは歓迎の宴を催すと言うが、旅の疲れで今日は早く休みたいと断って、用意された寝所に入った。
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