第955話 インカ帝国・首都クスコ

 ナスカの地上絵を堪能したあと、艦隊を率いるお初に、クスコに向けてヘリコプターをアセナに出させてくれと電令を走らせ、俺たちはインカ帝国首都クスコに向かった。


インカ道は石畳で整備され、ナスカからは馬車で進む。


長い山道だったが、苦労なく二日で到着する。


以前よりさらに城塞都市化は進んでおり、最早、進撃してくる巨人と戦うのではないか?と言う、城壁になっている。


門は、すでに開かれており、門前には整列した兵士、城壁の上では太鼓が叩かれ、花びらが上から撒かれる。

以前と同じように完全な歓迎ムードで出迎えられた。


門の中央で、護衛の兵をつきしたがえながら立つ、金色の王冠を被り、首には重たそうな装飾を身につけている女性がいた。


「信長様、あれ、インカ帝国皇帝ファナ・ピルコワコです」


「うむ、そうか」


「綺麗なお方ですね」


初めて会う茶々はじっくりと見ていた。


城門近くで馬車は横付けにされ、降り立つ。


「ファナ、久しぶりだね。元気そうでなにより。今日お連れしたのは太上皇・織田信長様と正室の茶々」


ギュッ


織田信長と茶々を紹介しようとすると、ファナはその言葉を遮るかのようにギュッと抱きしめて、


「会いたかったでス」


そう言うと、しばらくずっと抱きしめられた。


「感動の再会は夜にでも味わえば良かろう」


「ファナ、みんなの前だからね、ほら」


「失礼いたしマシタ」


胸元で流した涙を拭き取って、


「インカ帝国の皇帝ファナ・ピルコワコとモウシマス。大日本合藩帝国太上皇様、歓迎イタシマス」


「ふっ、儂より常陸を歓迎しているのであろう」


「信長様、そう言うことは言わないで」


と言うと、周りに居た者はみな笑っていた。


城塞都市の中に入ると、やはり和式愛闇幡型甲冑の銅像が今でも飾られていた。


「あ~撤去しなかったのね」


「なんだこれは?常陸か?」


「はい、信長様、俺、あと少しで神格化されるとこだったんですよ。なんとか止めましたけどね。その前に作られてしまった銅像でして、ファナ、撤去してくれなかったの?」


「そんな、これを撤去なんて国民がみんな反対しましたカラ」


「父上様に見習って、私もこの甲冑を作ったのですよ。あとで見て下さい」


須佐も自慢げに言う。


その像を見ていると小さい和式愛闇幡型甲冑を来た子供が二人とことこと目の前に現れる。


「これ、お出迎えは宮殿でと申したではありませんか」


そう言いながら、日本の着物に身を包んだ女性が、そのミニ和式愛闇幡型甲冑を追いかけてきた。


「父上様、我妻、伊達政宗の娘の五郎八

いろは

と我が息子の茨

いば

と良城

らき

にございます。ほら、面を取って御祖父様にご挨拶を」


そう言うと、二人は恥ずかしがって五郎八

いろは

の後ろに隠れてしまった。


「申し訳ございません。義父様」


「父上様、まずは宮殿にて旅の汚れを落としていただければと」


宮殿に向かった。

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