第937話 冒険とは?

「なんだ、せっかく来たなら乗せていけば良いものを」


と、飛行機を眺めながら織田信長が言うが、


「信長様、それでは『人類初』と言う偉業が軽くなってしまうんですよ」


「ん?マコ~どういうこと?」


と、お江が不思議がっていた。


「南極点到達と言う人類初の偉業の帰り道、それをエンジンが付いた絡繰り物を使ったらどうなると思う?」


と、言うと考え込むお江。


「わかんない、だって南極点には到達出来たんだもん」


と、言うが織田信長は気がついたようだった。


「山だな。山として考えれば、頂上まで登ったのに帰りは飛行機かヘリコプターを使えば下山と言うあるべきはずの当然の行為がなくなる。となれば、ちょんぼしたのと変わらん」


「そう言うことです。例えば今、俺たちが飛行機で帰ったとすると、次に南極点を目指した者がそのような駆動を使った物を使わないで行き帰りを制覇したとすると、その者は偉業として称えられます。ですが、最初に到達した俺たちがそれをもしてしまえば、偉業と称えられる者はいない。人類初にして唯一無二の偉業者となるのです」


「ん~マコの言っていることがよくわかんないよ。だって、人類初の到達という偉業は達成しているんだもん」


「男と女の違いかの~」


と、織田信長も俺の言っていることを理解してくれていた。


「まぁ、食糧も暖を取るための燃料もまだあるし、ゆっくり着実に帰れば良いんだって。多分、毎日のように偵察機出ると思うよ。危ないときには狼煙だか地上絵で知らせればヘリコプター出すはずだし」


「佳代ちゃんは理解しているの?」


「多分ね」


俺のいた平成時代度々、有名タレントがヒマラヤに登頂したり、南極点や北極点に行く番組があったが、そのほとんどはヘリコプターなどを使っていた。


ただ行っただけのことで、観光と何ら変わりがない。


俺は、それを不満げに言う事が度々あった。


佳代ちゃんなら、それを覚えているだろう。


俺が今、偉業を達成しようとしている冒険者であることを理解しているはずだからこそ、降りて来なかったはずだ。


「次の中継キャンプ地に行けば電信出来るはずだから、その時に指示をだすよ」


と、言うと、


「うむ、それで良い。儂は歴史に名を残したいのだからな」


と、織田信長も同じ思いとなっていた。

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