第916話 久々のオーストラリア
島々で補給をしながら南下すること1ヶ月。
オーストラリア大陸ケアンズ城近くの港に接岸した。
「父上様、お待ちしておりました」
と、なんだか疲れ顔の桃信が出迎えた。
「なんだ?体調悪いのか?」
「いえ、そうではありません。ただ疲れています。上様って本当にもう90の歳なのですか?」
「あぁ、そうだが、なぜだ?」
「元気すぎますって。護衛に付いていましたけど、行動的すぎます。昨日まで、アボリジニが聖地を見せてくれるというので大きな岩に遠乗りでした。疲れました」
「え?エアーズロック見てきたの?良いなぁ~」
「茶色い岩でしたよ・・・・・・父上様、少し休ませて下さい」
と、桃信は部屋に戻っていった。
織田信長を探すと、新築された御成御殿の庭でカンガルーと相撲を取っていた。
「はっ!何しているんですか?信長様」
「おぉ、来たか、暇なのでこのカンガルーと相撲を楽しんでいた。母親を亡くして人の手で育てられたそうでな。こやつは儂に懐いてきおったのだ。可愛いだろう」
と、カンガルーを紹介してくれるが、筋肉隆々で可愛いのか?と、疑問符が出てしまう。
「まぁ、なにをしようと良いのですがケガだけはしないでくださいよ」
「常陸も儂を年寄り扱いするのか?」
と、ご立腹の顔を見せる。
「いえ、そうではないですけど、骨折れると流石に治りづらいですからね」
と、言うと、
「儂の骨が折れると言うのか?」
と、着物をバサッと上半身を出し筋肉を見せつけていた。
マッチョマン織田信長・・・・・・うん、まだ元気だ。
「家康の弔いご苦労だったな」
と、茶室に場を移すと織田信長は言った。
「私が聞いた家康殿の最期の言葉は「もう一度、お会いしたいですのぉ~」でした。また茶を飲みたかったそうです」
「うむ、そうか、人はいずれ死ぬ。例外はない。いつ最期の別れになるかはわからぬ。儂は異国へ出たときにそれを覚悟しているがの」
「みんな信長様みたいに常に前だけを見ているわけではないですから。過去を懐かしむ者もいましょう」
「だな」
と、日本のほうに向け誰もいない座に織田信長は一杯の茶を置いていた。
そして、スロバキア王国の方角にも一杯の茶を。
徳川家康と羽柴秀吉への弔いの茶なのだろう。
しかし、しんみりしている信長ではなかった。
「準備は整ったのか?」
と、目を輝かせている。
「はい、仕度は十分。港には力丸も来ていますよ」
「ほう、そうか力丸が来たか。道連れができたわい」
「変な言い方しないで下さいよ。っとに」
と、言うと、
「ぬははははははははははははっ」
と、笑っていた。
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