第913話 真琴の隠居

「黒坂家家督を信琴、お前に譲る」


息子の信琴を茶室に呼び出し、俺はそう告げた。


「父上様、唐突にいかがいたしました?」


「いや、国に王は二人はいらぬ。わかるな?」


「・・・・・・はい、今では父上様のほうが全てにおいて上とみられています。それは事実」


「今は良い。信長様も信忠様も健在のうちはそれで良いと思ってくれているのだろうが、秀信殿やその次の世代まであとを引いたらどうなる?」


「また、国内の戦乱の火種になりかねなく・・・・・・」


「で、ある。よって俺が任されてきた役職の一部を分散させ、また、もう名前だけのものは返上する」


「・・・・・・で、私が黒坂家の当主?」


「そうだ、しっかり兄弟をまとめよ。そして、大日本合藩帝国を繁栄と平和を構築するのだ」


「・・・・・・父上様、もしや次の旅は大変危険なのでは?でしたら、その事をお引き受けするわけにはいきません。父上様に死なれたら」


「はははははっ、馬鹿を言うな。まだまだ生きるつもりだ。次の旅は確かに危険が多いがその為に仕度はしっかりとしている。それとこれとは話は別だ。良いな。それと、常陸守だけは絶対に死ぬ間際まで絶対に譲らぬからな、はははははっ」


と、懐に用意しておいた紙を広げた。


黒坂宗家・安土幕府副将軍・黒坂龍之介信琴


豪州統制大将軍・黒坂北斗七星桃信


欧州統制大将軍・黒坂猿田之介琴彦


造幣方奉行兼安土暦奉行・幕府へ返上


南蛮交易総取締役奉行・伊達藤次郎政宗後任に推薦


総理大臣・インカ帝国執政・スロバキア執政・常陸守はそのまま俺が引き続き行う。


黒坂家は宗家・樺太家・下総家・近江大津家・オーストラリア家・ヨーロッパ家の六家と定める。


「では、これを秀信様に提出して、五大老・五奉行会議で承認していただきます」


形だけの会議になるのはわかっているが、信琴は正式な手続きを行い、承認された。


「真琴様、一つ肩の荷が下りましたね」


と、茶々は大阪港に向かう道中どこかいたわるように優しい目で言っていた。

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