第912話 ウォンバットと織田信長
「上様、あまり撫でられると禿げてしまいます」
「うむ、そうだな・・・・・・しかし、このモコモコの尻は良いさわり心地よの~」
「はははははっ、父上が常陸国に初めてこのウォンバットを連れてきたときには、我が兄弟は皆して尻を追いかけたものです」
「その気持ち、わかるの~。しかし、8月に雪が降るのか?」
「はい、この大陸は日本とは季節が真逆なので」
「またそれも不思議よの~」
と、ウォンバットの代わりに人懐っこく飼育されていたコアラを撫でながら桃信と話していると、徳川家康と羽柴秀吉の死去の知らせが届いた。
「ふっ、軟弱者め、儂より先に逝きおって・・・・・・桃信、イタリアにいる信忠に電信だ。徳川家、羽柴家、双方嫡男に領地相続を許すようにとな」
「はっ、すぐに」
・・・・・・そうか、先に逝くか・・・・・・。
儂はまだ逝かぬぞ。
世界の全てをこの目で見てから逝くのだ。
その時まで、待っておれ、秀吉、家康。
いや、儂が行くのは地獄であろう。
もう会うこともあるまい。
さらば、秀吉、家康。よう仕えてくれた礼を言うぞ。
それぞれの地の方角を見て誰にも見られぬようにしながら手を合わせた。
極楽に旅立ってくれよ・・・・・・。
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